(二)-15

「例の補助金の件でいらっしゃった益田さんです」

 大塚が言い終わらないうちに、高齢の男性は益田の手を取ってきた。

 それなので、益田は立ち上がった。

 すると男性は満面の笑顔で力強く益田の手を握ってきた。そして大きく上下に手を振った。

「民自党の東です、どうぞよろしく!」

 突然のことに驚いて、益田は「よろしく」としか返事ができなかった。

「さぁさぁ、かけてかけて」

 益田に座るように促されて腰をかけた。

 東も益田の反対側のソファに腰掛けた。

 座った東の背後から大塚がその耳元に何かを伝えた。今の話の流れを伝えたのかもしれない。そうなると、もう交渉はなくなってしまうかもしれない。益田は少し緊張した。何とか助成金を受けられる方向に話を持っていかなくては。


(続く)

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