第7話 詰将棋の解き方
詰将棋を解いたのは俺だった。
彼女の驚きも、すでに疑いようもない実力を考えれば奢りではないだろう。
だが、今回は……。
「運がよかっただけだ」
そう端的に答えたがルナが抗議する。
「いや、詰将棋に運なんて……」
「あるんだな、それが……」
そう、電子端末の場合、詰将棋には運が生じる。ゆえに彼女が二十秒足らずで解いた問題を俺はそれ以下の時間で解くことができたのだった。
「どういうこと?」
「勘」
「え……?」
「途中まで勘で解いた、と言ったんだ」
詰みそうな、より正確に言えば詰将棋の回答としてありそうな手順を直感で選び回答用の盤面を動かし、十二手ほど進めたところで読み切ったのでそこからは簡単な七手詰めを解くだけ。
初手から十数手の時点で、それまでの思考が正しいかどうか無意識な疑念を抱きながら並列して思考を走らせるのに対して、これまでの手順に確信を持ちつつ、局面が目に見える詰将棋を解くのなら明らかに難易度は下がる。
つまり、今回は、それまでの手順があっていた幸運に助けられて、偶然早く解き終わることができた訳だ。
もっとも、例の体質を使えばもう少し早く解けたかもしれないが……できれば二度と将棋には使いたくない。
一つ間違えれば永遠に解けない思考の沼にハマる綱渡りに成功した結果であり、これこそルナを動かす最善の手段に違いなかった。
「うーん。ズルいけど……なるほどね」
ルナは俺がこの蘊蓄を述べるまでもなく理解したらしい。
まあ最盛期ならまだしも、今の俺にはこれ位のハンデをいただきたいものだ。
さて、これにて一件落着……ではなかった。
俺もルナも互いの意外な行動のせいで状況を忘れていた。いや、逃避していた、というほうが適切かもしれない。
気付けば、行く道も帰る道も法被集団によって塞がれていた。
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