第28話 崩落のその先

 ミナにもそんな理由があって冒険者をやってると知ってびっくりした。


「僕も手伝うよ

 その人は今もどこかで待ってるかもしれないですし」


 思わず"手伝う"と言ってしまった。

 生きてる保証だってないのにそう言いざるを得なかった。


「ありがとう...本当に...

 ごめんね暗い感じにしちゃって」


「いやこちらこそ話してくれてありがとう

 まずジガン先輩のとこに行きましょう」


「うん!

 話せるときが来たらユーマくんの守らなきゃいけない人について聞かせてね」


 何か察してくれたようでそう言ってミナはすぐに階段を上がっていった。

 

「え...

 どうなってるの」


 ミナが辺りを見渡しながら唖然としている。

 それを見て僕は猫を抱えて足早に階段を上がった。


「ミナさん何かありま...」


 階段を登りきると、建物が全部破壊されて視界が広がっていた。

 リザードマンの死体もそこらじゅうにあるのが見える。


「いつの間にこんな...

 ジガンさんってそんなに強かったんだ」


 さっきの大きい音と揺れはジガン先輩だったのか。

 にしてもあんな短時間でこの広い村を壊滅させられるほどとは。


『キーーーーーン!!!』

 突然村に大きな音が鳴り響く。


 僕とミナはとっさに手で耳を塞いでしゃがんだ。


「急に何!?」


 この音には聞き覚えがあるように感じる。

 おそらくさっきのケルベロスだろう。

 音は反射していろんなところから聞こえたけど、なんとなくどこにいるか分かった。


 音は少し経ったら鳴り止んだ。


「ジガン先輩が戦っているのかも」


 となるとあのケルベロスも殺られるかもしれない。


 あ、あれ?もしかして僕って弱いのでは。

 ケルベロスのあの圧は僕じゃ勝てないと感じさせた。

 実際キメラの攻撃は僕に効いたし勝てそうになかった。

 でもジガン先輩なら勝てる気がする。

 それにもっと上に勇者がいたりさっきのエルフも...。


 勇者になるなんて意気込んだけど、まず力が足りない。

 これじゃ本来の目的だって...。


「ユーマくん!

 こっちから音が聞こえるよ」


 考えるのはやめて先に走っていくミナについていく。

 その後ろから猫もついてきている。


「あれ、ここらへんから音が聞こえてたような気がするんだけどな」


 ジガン先輩を探しながら走っていると、急に前方の瓦礫から火に覆われたジガン先輩が思いっきり飛び出してきた。


「ジガン先輩!?」


「あ!お前ら!今までどこいたんだよ」


「いやー、なんか地下室を見つけて行ったら転んで意識失ってユーマくんに看病してもらってたみたいな」


 ジガン先輩の鎧は傷や汚れが目立っていた。


「そうだあの頭が3つのやつはどこ行った!?」


「僕たちが来たときにはもういませんでしたよ」


「くそっ逃げやがったな

 次会ったらぜってぇぶちのめす」


 ジガン先輩は頭を抑えて痛そうにしていた。


「頭が3つ!?なにその気持ち悪いやつ!」


「そっか覚えてないのか

 でかい獣ですごい強そうでー

 そして毛がフサフサしてそうだった」


 しかしジガン先輩でもケルベロスに勝てないとは思わなかった。

 まあケルベロスは悪いやつじゃなさそうだったし、殺されなくて良かったけど。


「毛がフサフサ!?

 それって猫よりも?」


 ミナが猫に視線を送るとジガン先輩も猫を見る。


「どういうこと?

 なんで魔物を連れてんの」

 ジガン先輩が殺気をむき出してそう言う。


 殺気!?

 やばっ早く説明しないと。


「この子は魔物じゃなくて、宝で!」


 ジガン先輩は猫を目掛けて突っ込んでくる。

 止めなきゃ。

 でもどうすれば...闇魔法で止めるしか...。


「ダメ!!

 猫は私たちの!!」


 ミナは猫を庇うようにジガン先輩の前に立ち塞がる。

 しかしジガン先輩はすぐに止まれないほどに速いスピードで近づいていた。



 つづく

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