第27話 眠りし秘密の宝

 いきなりミナが起き上がった。


「うわっ!ミナさん!」


「今うわって言った!?

 ねえちょっとユーマくん酷いよ!」


「そういう意味で言ったわけじゃなくって

 本当に治ってよかった...!」


「あ、あれ、私何してたんだっけ

 たしか階段を見つけてー...あっ!階段から落ちたんだった

 ありがとう2回も助けてくれて」


「いやミナさんはキメラにやられて...」


 ミナは記憶が少し飛んでいるようだった。


「キメラ?

 あれ、ここにジガンさんはいなかったみたい?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「炎よ立ちのぼれ

 この業火に焼き尽くされて死ね

 炎昇流エンショウリュウ!!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ミナのことが心配だが宝ってのも気になる。

 どこにあるんだろうか。


「ユーマくん奥に何かあるよ」


「え...ん!?」


 目をすぼめると奥に何か小さいものがあるのが微かに見えた。

 近くに寄っていくと、それは小さな宝箱だった。


「あれが宝!?ちっちゃ」


「た、宝!?」


 手と同じくらいの大きさの宝箱をゆっくりと開ける。


「こんな小さい宝箱だしミミックとかないよな」


「これが宝箱、初めて見たなー

 何が入ってた?」


 中には黒い何かが入っていて、それがピクっと動いた。


「やっぱりミミックじゃねえか!」


 宝箱から小さくて丸っこいやつが飛び出してきた。


「なになに魔物!?」


 そいつはみるみる大きくなっていき、バランスボールほどの大きな猫へと姿を変える。


「猫やんけ!」


「ねこ...?

 魔物じゃないの?」


 その猫は輝く瞳でこちらをじっと見つめている。


 やばい、猫を見るともふもふしたい衝動が...抑えきれない...!!


「よ、よぉーしよしよし、いいこいいこー」


 あー!もふもふしてしまったーー!

 本当に猫として扱っていいんだよな?

 襲われたりとか...しないよね!?


「私もなんか無性に触りたくなってきたんだけど!

 そーっとー、なでなで~」


 2人で猫を触ってると、次第に幸せで考えることを忘れてしまうような感覚になっていった。


「あ、ジガン先輩のこと忘れてた」


「幸せ~ってそうだった!

 ジガンさんのこと忘れるなんてやっぱりユーマくん酷ーい」


「ええ、ミナさんだって忘れてたでしょ」


 ミナは笑ってから僕の方に体を向けた。

 そのとき大きな音と揺れがする。


「わ!何!?」


「次は何だ!?

 もしかして崩れて...はこないか

 でももう上に戻りましょう」


 何が起こったのかも分からないままだが、何でも起き得るこの世界だからと深く考えるのは辞めて安全な行動を取ろうと思った。


「うん、戻ろっか

 はー、ユーマくんといると楽しいな

 ねえユーマくんはどうして冒険者になったの?」


 その質問にドキッとした。

 正直に答えてもいいことなのか躊躇ためらった。


「それはー、強くならなきゃいけない理由があって」


「理由?」


「守らなきゃいけない人たちがいるから」


「そっかー

 私も似てるかも

 私にも助けたい人がいるの」


「そうだったんだ」


 僕は相槌を打ちながらミナの話に耳を傾けた。


「いつも優しくしてくれたお姉ちゃん

 私元々アクセサリーショップで働いてたの!

 それでよくデザインのアイデアを持ってきてくれるお姉ちゃんがいてね

 すぐに仲良くなったよ

 分からないことは教えてくれるし話し相手にもなってくれて、でも急に来なくなっちゃって

 いろんな人から話を聞いて知ったの

 お姉ちゃんは冒険者になって討伐隊に参加し、行方不明になったって」



 つづく

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