第26話 暴音のケルベロス

 なんだったんだ...。

 突然のことに理解が追いつかない。


 僕は体の痺れが治って動けるようになっていた。


 謎のエルフのおかげで助かった。

 でもまだケルベロスがいる。

 キメラと同じくらいの強さだと考えるとまずい。

 油断したら僕だってやられてしまうかもしれない。

 あんなやつに勝てるのか?


 ミナを治癒してあげたいがキメラがいなくなった今、いつケルベロスが襲いかかってくるかわからないから目を離せない。


「あの」

 速い。見ていたはずなのに瞬きをした瞬間、目の前にケルベロスが突っ込んできていた。


 短剣を振ろうにも絶対間に合わない。

 それでも少しでもガードできるように短剣を構えなければ。


「"待て!!"

 戦う気はないぞ」


「ひょへ!?」


 ケルベロスは僕の目の前で止まっていた。


 "待て"の言葉を発した時にケルベロスに向かった闇の波動が消し飛んだ。

 それに僕の耳がキーンとした。


「私も自由に生きたいんだよ

 こんなとこで一生を終えたくなんてない

 だからな?

 もうやめよう」


「ああ、戦わなくていいならそれは良かった」


 すっかり戦う気満々でいてしまった。


「キメラが宝を守る宿命に一生真っ当しなければいけないって言ってここから出してくれなかったけど、いなくなった今もう自由になっていいでしょ

 てことでじゃっ

 宝はどうぞ」


 ケルベロスは一瞬で階段の上へと上がっていった。


 やっぱり魔物は危険ではあるかもしれないけど敵ではないんだよな。

 でも急に目の前に来たり大声出してきたりびっくりしたー。

 って早くミナさんを助けないと。


「ミナさん起きて...」

 倒れているミナに治癒魔法の杖を向ける。


 ...何を想像すればいいんだ。

 起きて治ってと願っても何も起こらない。

 これまでは怪我が治っていく姿を想像したら治ったけど、ミナに目に見える怪我はなかった。


 元気に目を覚ますミナを想像してみることにする。

 このまま目覚めないなんてないよな...。

 まだ出会って間もないけど、元気で能天気な感じに好感が湧いてくる。

 まるで柚美のように感じてしまっていた。


「目を覚まして...!」


「目覚めの挨拶おっはよーーーん!!」



 つづく

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