第25話 暴災のキメラ

 急に風が吹き荒れ、キメラが空を飛んだ。


「ちょっ!

 う"っ!!」

 ミナが風で壁に吹き飛ばされる。


「ミナさん!」


 そういえば風が吹き荒れる音は聞こえるけど、風自体を感じない。

 これも闇の力なのか。


 キメラはドラゴンの口から炎を出す。


「あっつ...くない」


 目の前が炎で何も見えない。

 それでも痛みを感じないし、炎が燃え移ることもない。

 いや、まだリザードマンにやられた痛みが残ってるな。


 ん?体が炎に包まれてる!?

 これは、全身に纏ってる闇が燃えてるのか!?


「あ"っちーーーー!!」

 急に肌が焼け落ちるかと思うほどの熱を感じた。


 反射的にキメラがいる方に短剣を振り抜く。

 闇の波動は炎を吸い込むように前を突き進み、視界が開いた。


「見えたあ!」


 炎を掻い潜るように短剣を振り回し、キメラに近づいていく。


 なんだこの高揚感。

 ゲームのようなこの感じ。

 自分はこれを求めていたのか。

 でもこのキメラも別に悪いやつと決まったわけではないんじゃないか。

 そんなこと気にしてられない。

 命の危機だ!


「ここで飛ぶっ!あれっ!?」

 大きく前傾姿勢でジャンプしたら、そのまま前にすっ転んだ。


 風魔法が使えない...。

 闇と風を一緒に使えないのかよ...。


「イッてぇ」


 そのとき炎が止んだ。


「まだ生きてんのか

 ヒーン!」


 さすがに今のはカッコ悪すぎる。

 うわ、ミナにも今の見られちゃったのかな。

 ってミナのこと忘れてた!


「ミナさん無事で...

 体から煙が!?」


 ミナは壁にもたれかかって座っていて、朦朧とした状態だった。

 そして体から湯気が出ている。


 大丈夫まだ生きてる。


「のぼ、せたぁ...」


 ミナの体が濡れていることから水魔法で体を覆って炎を防いでいたのだろう。

 だから湯気が出てるのか。

 ゲームのように体から煙が出て消えかけてるのかと思ってしまった。


「炎が効果薄いなら雷だ

 ヒヒヒヒーン!!!」


 雷!?

 3つも属性を使ってくるのか。

 あー顔が3つあるからってことか?


 キメラの馬の頭が光り、大きな音と同時に雷がキメラの前全体に放たれた。


「イッ!」

 一瞬身体中に電気が走った感覚と痛みがして、体が痺れてあまり動けない。


 全適性持ちだし、闇のオーラが守ってくれると勝手に安心していた。


 ミナは無事だろうか。

 いや、やばいでしょ。

 僕の場合闇のオーラがほとんど防いでくれた感じがするけど、ミナはまともに食らってしまったかもしれない。

 それに水は電気を通しやすいし、あれ、純水は通しにくいんだっけ。


「なっ

 ヒンッ」


「消えろ」


 黒い衣装を身に纏った何者かがキメラを瞬殺した。

 鋭い水がキメラの腹を貫通したと思ったら燃え上がって丸焦げにになっていた。


「まったく、人間を助けるなんて私らしくないな」


 湯気が消えて姿がはっきり見える。

 このスタイルが良くて凛々しい顔つき、そしてとんがった耳。

 エルフ!?

 いや見た目的にダークエルフか!


「助けるのは1度きりだから

 あとは自分で対処するんだね」


 エルフは光を放って消えていった。



 つづく

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