第29話 司令塔の勇者
ミナは目をつぶりながら自分を中心に水のドームを広げる。
ジガン先輩の勢いは水のドームに入ると治まり、ミナの前で足と槍をついて止まった。
そして下から上に向かって火の風が吹き、周りの水を飛ばす。
風に触れてミナは尻をつき、水魔法も止まった。
「そこをどいて
その魔物を守る理由がどこにある」
「猫は敵じゃない
こんなにもかわいくてフサフサで、攻撃だってして来ないんですよ!」
「そんなの信じられん」
僕もミナの横に立って猫を庇う。
「見てください
この猫は敵対心を抱いてないですよ」
「ユーマまで...
確かに敵意は感じないしなぜかそいつを殺んのに抵抗があるが、魔物に変わりねぇだろ」
「猫を普通の魔物と同じにしないで!
猫は宝箱から出てきたんだから!」
「宝箱だと?
お前ら伝説の武器が手に入る宝箱を見つけたのか
それでその魔物が伝説の武器だってのか?
「伝説の武器...?」
「そうです!
だから猫は私たちの役に立ちます!」
「ふーん
もし怪しい動きをしたらそのときは殺るからな」
ジガン先輩は落ち着いたようで背中を向ける。
ミナは立ち上がって猫は体を振って水を飛ばしている。
「俺が殺さなくてもその魔物を村に入れさせてはくれないと思うよ」
「それは...たしかに...」
「それでどうする?
今日はこの辺にして帰るか?」
「まだやらなきゃいけないことがあるんです」
「僕もミナさんを手伝うので」
「いいじゃん
まだ殺り足りねぇよな
で、やらなきゃいけないことって?」
「お姉ちゃん
メアラを助けてあげるんです」
「元勇者のメアラさん!?
表舞台に顔を出さない司令塔の勇者の」
勇者...!
ミナの言うお姉ちゃんってそんな強かったのか。
「やっぱり知ってるんですね
どこで行方不明になったか知ってますか?」
「行方不明だと!?
最近本当に姿を見せなくなったと思ってたけどまさか...
そんな話聞いてないぞ」
「ジガンさんはずっと討伐隊に参加してるんですよね?
それならお姉ちゃんが来たときのこと何か覚えてないですか?」
「いやメアラさんが討伐隊に参加したことなんて一度もない
なぜなら彼女は魔力量が大きいけど適性は全て1しかないんだから...」
あれ、この話どこかで聞いたような。
「え...でも討伐隊で行方不明になったって聞いてますし
忘れてるんじゃないんですか?
思い出してください2ヶ月前ですよ!」
「ありえない
もし来ていたら忘れるはずがない
メアラさんは俺の命の恩人なんだぞ」
「本当は討伐隊に参加していないということ?」
僕はそう言った後過去を思い出した。
命の恩人か。
僕にとっては柚美だったかな。
幼いときにヤクザに絡まれてる柚美を見かけて、助けようと勇気を振り絞って立ち向かったけども返り討ちにあって、そのときに柚美に逆に助けてもらったんだったな。
でも柚美はどうやってヤクザたちから守ってくれたんだっけ。
あと一昨日はリーラに助けられたんだった。
それがあって今ここにいるんだもんな。
「冒険者じゃない人は村の外に出ることは基本的にできない
でも勇者が同行する場合は別だ」
「じゃあ勇者のあの人たちはお姉ちゃんの行方のこと知ってたのか!」
「あとリーラさんにも特別に許可が出てる」
「へー、えっとリーラさんって何者なんですか?」
ここでリーラの名前が出るとは思っていなかったけど、リーラについて気になってたので質問した。
「リーラさんは商人だよ
しかし普通の商人じゃない
勇者をも恐れさせる底知れぬ旅商人だよ」
つづく
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