第20話 少女の理想
『この世界にも悪が必要だ』
『この世のおにぎりを全部悪魔のおにぎりにしようとするなー!!』
「ぁー!!」
あ、あれ、夢か。
リビングに行くと、リーラがチャーハンを用意していた。
「おはよ
朝ごはん作ったから一緒に食べよう」
「いただきます」
口に入れてすぐに味に物足りなさを感じた。
食感はチャーハンなのに、旨味が損なわれていて素朴な味がする。
「おいしいです!」
「そ、そう?
私は慣れたけど、おいしいとは思えないかな
魔法で再現するにも味を完全に真似することはできなくてね」
ということは今魔法を食べてることになるのか...。
どうして自分でもおいしくないと思うものを食べさせてきているのか分からないが、贅沢はできないと思いながら完食した。
「ごちそうさまでした!」
まだ約束の時間まであるし、本の続きを読むことにする。
"魔法が使えない少女の悲しき理想
彼女の適性数値はどれも1、魔法を使うことができない体に生まれてしまった。
かなりの魔力や知恵を兼ね備えていたが、適性がなければそれも無駄だ。
幸いにも、知恵を使って魔物から村を護る作戦を考える役割として抜擢されていた。
しかし、やがて魔物は村を襲うことがなくなり、人間から仕掛けに行くようになった。
そして戦えない者の知恵など必要ではなくなった。
力のない者は建築やアクセサリー作りなど村と村人の装飾を作ったりする。
彼女もアイデアをたくさん出し、村に貢献していった。
でも彼女は村を護るために役立ちたいという強い理念を持っており、その理念から外れている今にうんざりしていた。
『こんな私でも村を護れるなら、この命が滅びようとも構わないというのに』
その言葉を最後に彼女を見かけることはなくなった。"
この物語はフィクションなのか?
それとも実際に起こったことなのか?
理念に耐えきれなくなった少女は魔法なしで魔物に挑む自殺行為をしたということか...。
めちゃくちゃ悲しい物語じゃん!
リーラはこの本に書かれていることに嘘偽りはないと言っていたし、たしかゴブリンキングも命令で村を襲ってたけど人間がそれを真似したって言ってたような。
ならこれは実際に起こったということなのか...。
物語についていろいろ考えていたら、約束の時間間近になっていた。
リビングの机におにぎりが2つ置いてあったので、遠慮なくいただいてから冒険者教会に向かった。
「お、ユーマ来たか
許可証は先に貰っといたぞ」
「お待たせしました
では、行きましょうか」
つづく
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