第4話 戦慄の勇気
「お、お前!何でこんなことをするんだ!」
僕は口を震わせながら言うと、男はこう言う。
「この世界にも悪が必要だ」
男がこっちへ近づいて来たが、持っているナイフは大きくて避けたり奪い取ったり出来そうにもなく、ただただ構えるだけしか出来なかった。
すると、後ろで柚美の叫び声が聞こえてくる。
「逃げて勇磨ーーー!!」
その声はさっきからずっと聞こえてた気がしたが、頭が真っ白になっていたせいか無視していた。
でもその声は今脳裏によぎり、僕に力を与える。
”逃げて”その言葉で僕は逃げるという選択を捨てることができた。
別に反抗期というわけではないが、大事な人がいることに気づかせてくれて、今逃げれば後悔するとそう教えてくれているように感じた。
僕はナイフの平らな方を蹴ってその後奪い取ろうと意気込む。
男は4mほど離れた場所で立ち止まり、ナイフを振り下ろす。
当たるはずもないのに僕は本能的に後ろへジャンプした。
だがお腹の表面を切られた感覚があり、痛みがはしる。
「ほー、よく避けたね」
僕がお腹を抱えると、男は笑みを浮かべながら1歩前へ踏み込みむ。
ナイフを振りかざそうとしたそのとき、柚美が後ろから走ってきて僕の前に立った。
「もうやめて!」
柚美がそう言った時には、既に男がナイフを振り下ろしていた。
そして柚美は前へ倒れ込んだ。
柚美が倒れ込む姿と再びナイフを振りかざそうとする男の姿が目に映ると、目の前が黒く光った。
目を開けると、僕は室内に居て目の前には若い女性が立っている。
つづく
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