第3話 恐怖のざわめき

 辺りを見渡してみると、何かから慌てて逃げる人たちでいっぱいだ。


「な、何が...起きて...」


 僕たちは戸惑いながらも、他の人たちにつられて走る。

 すると、後ろから女の人の悲鳴が聞こえた。


「え、今のって悲鳴だよね?」

 柚美は震えながらそう言うと、涼太は後ろへ走って行ってしまう。


「おい、涼太ー!」

 僕は柚美を置いて涼太を追いかけてしまった。


 涼太の脚の速さには追いつけず、見失いそうになったところで涼太が脚を止めたのが見えた。


 僕はもっと近づくと、涼太の目の前に男の人の姿が見え、その奥には女の人やたくさんの人が倒れている。


 男の人の右手にはノコギリくらい大きなナイフを持っている。


 とっさに駆けつけるが、目の前には倒れ込む涼太とナイフを振り回す男の姿が。


 このときは頭が真っ白になりその姿しか見えていなかったが、ナイフには血が付いてなく、涼太も血を流していなかった。


 僕は男の姿を見ながら心では逃げることしか考えられなかったが、後ろから柚美の声が聞こえると涼太をなくしたくない、柚美をなくしたくない。

 そう思い、持っていたかばんを投げて前へ走り出す。



 つづく

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