第9話 男にいいヤツと言われてモテる男はいない
生徒会室に混乱しているルイスを一人残して、四人は外へ出た。
カチリとドアが閉まり、ルイスに声が聞こえないところまでくると、モニカ嬢とナタリー嬢は笑い出した。
「ふふふふ、あの顔見た?」
「見ましたとも。面白かったわ」
アンドルーとアランが口を挟んだ。友の惨状を見ていられなかったのである。
「頼むよ、ルイスは俺たちの友人なんだ。友達思いで、悪いやつじゃないんだ」
「あら。じゃあ、ジョナスは友達ではないとおっしゃるの?」
「ええと……」
二人の男は、急に歯切れが悪くなった。
「ルイスは、気が利かないわ」
「そうよ。男友達には、あれこれ気がついて世話をしたり、気を使ったりするけど、婚約者や女性にはまるで気が回らないタイプなのね」
「女性にはしてもらって当たり前みたいな態度が染み付いている男っているわよね」
「そんな男と結婚なんて不幸でしかないわ」
「ルイスはそんなやつじゃない。これまで忙しかっただけだ」
「趣味で忙しかったのですよね。正式の婚約者に対して、最低限の礼儀も気遣いもなしですわね」
意地悪そうにナタリーが答えた。
男二人は目と目を見交わした。
友情は大事かもしれないが、これは友情でどうにかできる問題ではない。
「ルイス様がメリンダを好きかどうかの問題ですわ。失礼だったという点は置いといたとしても」
「別に気にされているわけでもないんでしょう?」
「そうですわね。冬祭りもダンスパーティのエスコートもお断りになっていらっしゃる」
「ジョナス様はメリンダのこと、気に入っているのよね?」
「なら、それでいいんじゃない? メリンダがルイスを好きになる理由なんてあまりなさそうだもの」
「あの、気になってたんだけど、国王陛下がルイスを特命の護衛騎士に当てるって噂は?」
二人の娘はプッと笑った。
「私たち、そんなこと何も知らないわ」
「じゃあ、あれは嘘なの?」
「私たちがついた嘘じゃないわ。誰かがついた嘘よ。でも、よくできているわね」
「あの妻が人質だって話は?」
「あれは私が思いついただけよ。でも、黙っておいて。不敬罪になっちゃうかも。推測ですからね、全部」
「ルイスは悩んでいたぞ?」
「喜んでいるんじゃない? 大好きなロザモンド嬢のところへ行けて」
「俺は時々思うんだけどな、アンドルー」
手に負いかねると言った顔つきで、アランはアンドルーに向かって言った。
「男がやりたいことを始めると、どうして女は止めたがるんだろうか」
キッとなったナタリーが言った。
「何言っているのよ。私たちは、ルイスがやりたがっていることを勧めにきたのよ。ロザモンド殿下についていくって道を。ただ、メリンダを巻き添えにしないでねって」
おっとりとモニカ嬢も(おっとりしているのは口調だけ)言った。
「そうよ。私だって、あなたが狩猟に狂って、森番小屋に住み着くって言い出したら、お好きにどうぞって申しますわ。でも、一緒に住むのは遠慮させていただきますわ」
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