第177話 いい……んだよ、ね?
誕生したばかりのアマゾネスには、早速建築のスキルをインストール。他にも、水、土、風の魔法をフルで。
火を入れなかったのは、木造の建物を作る際に邪魔かなあと思った結果。
彼女達は、広くなった畑部屋の一角で、木造の小屋を作っている。まずはそこから。
五人一チームで、四つのチーム。一チーム一軒の小屋を建てるのだ。木材は、畑部屋にいつの間にか出来た森から伐採。
この森、木工チームが植林して、どんどん広げていった結果だって。いつの間に。
いや、確かに苗を植えているとは聞いていたけれど、木工に必要な量だけで、広げているとまでは聞いてなかったんだが。
結果、建築チームが助かっているから、いいか。
建築のスキルを上げるのは、彼女達に任せておいて、私は私でやる事がある。
先送りにした眠り姫チームの人形作りだ。いや、布作りから裁縫までを任せるのに眠り姫はないだろうとも思うけれど、いい名前が思いつかなかったので。
彼女達は既にデザインしてあるので、後はそれに従って素材を使い作っていくだけ。
某アメリカの会社の映画や絵本などで有名な話だけれど、原作はフランスの童話作家のもの……だって。てっきりグリムかと思ったわ。
でも、グリムにしちゃあ陰惨さがないもんな。そこはさすがおフランスといったところか。
でもフランス原産……じゃなくて、フランスで作られた話なら、名前もフランス風にしようか。
その前に、本体作らないと。
眠り姫シリーズは、糸紡ぎ、機織り、裁縫と実は重労働だけど女性がやっているイメージが強い仕事をしてもらう。
なので、身長はアマゾネスのように長身ではない。かといって、ドワーフモチーフほど低くもない。
見た目は二十代前半くらい。これはアジアモチーフの子達と一緒。ただし、アジアモチーフの子達の方が、若く見えるように作ったけれど。
長い金髪は癖が入ってウェーブに。目は垂れ目気味でおっとりして見えるようにした。
彼女達も、最初から二十体いっぺんに作る。これから、この数が基本になるかもね。
骨格を作り、筋肉組織を作る。この子達は華奢に見せるように、筋肉量は少なめ。でも、重労働にも耐えられるよう、色々手を入れておく。
人形の筋肉組織って、組む際に魔力を込めると強くなる。あまり入れすぎると組織が絶えられなくて壊れてしまうけれど、限界まで入れると細いのに怪力とか作れる訳だ。
アマゾネスは筋肉組織の量自体を増やし、込める魔力も限界ギリギリまで入れた。なので、人間だと複数人で持ち上げるような重量でも、一人で軽々持ち運べたりする。
眠り姫シリーズの方は、一見細身だけれど、大柄な男性顔負けの力は持つ計算。
ただし、アマゾネスには敵わない。彼女達は筋肉組織の量が違うから。
腕力だけなら、ルチアやセレーナを越えるかも。ネーラやアガタ達、以降に作った子達では、確実に眠り姫シリーズには勝てない。
あれ? もしかして、とんでもないのを作ったか?
ともかく、眠り姫シリーズも最後の仕上げを施し、二十体全員が出来上がった。
おお、美人が揃うと迫力ある。
「えー、フランスの作家が書いた童話が基本なので、フランス風の名前を付けようと思います。右からレオニー、マルジョリー、サラ、カロリーヌ、アンナ、サビーヌ、セレスティーヌ、ヴィオレーヌ、クロエ、ヴィヴィアーヌ、ネリー、フロランス、ジャネット、モニク、ジョスリーヌ、オレリー、エミリー、ミラベル、アリエル、グレース」
以上、二十体でした。
眠り姫モチーフには、当然服作りをしてもらうのだが、それ以外にも履き物作り、彫金でアクサセリー作りもしてもう予定。
でも、最初は服からかな。糸を紡ぐ子達と、その糸から布を織る子達、出来上がった布を裁断して縫う子達。
これ、二十人で足りるのか? ……足りなかった場合は、追加で何体か作ればいい。まだ材料はあるし。
というか、ルチア達が頑張って狩ってくれている。ラケルのチームやアカネのチームも、手が空いていると付いていくらしい。
ええと、ほどほどに。
ラケル達は筋肉……はそれ以上付かないけれど、戦闘系の魔法が上達するのはいい事だ。
アカネ達は……やらせようとしている事が事だから、あまり戦闘に振らなくてもいい気がするんだけど。
本人達がストレス発散にやりたがったら、止める事はしないでおこう。
今更だけど、人形達は作った時のステータスがそのまま維持される。といっても、この世界でステータスの数値を変えられるのって、お買い物アプリで売っているステータスアップアイテムくらいしかないんだけど。
鍛えたところで、ステータスが上がる訳じゃないってのは、銀の牙を見ていてわかった事だ。
彼等は自力でホーイン密林に入り、それなりに成果を上げているパーティーだ。今敷地にいる冒険者達より、ずっと強い。
何せ今敷地にいるのって、魔物避けの香を使ってここまで来た人達ばかりだから。
外に出る時も香を使い、採取で生計を立てている。それはそれで採取物がゼプタクスの名産になるからいいらしい。
この辺りの情報は、リレアさんから。そういえば、そろそろクズ魔石が届く事だな。
さすがにクズ魔石の受け渡しでは、外に出ない訳にいかない。玄関先に置き配しておいて、とも言いづらいし。
「アカリさんの顔、久しぶりに見た気がします」
リレアさんの笑顔が怖い。
「久しぶりって、ほんの数日だと思いますけれど……」
「それで? 例の美容の件はどうなりました?」
「ええと」
圧が強い圧が。
「せ、専用の建物を建てるのに、少し時間が掛かりまして」
「あら、いつもの一瞬で建つ魔法ではないんですね」
魔法で建つのではなく、お買い物アプリで建つんだけどな。とはいえ、そんな事は口に出来ない。
一応、敷地内の建物には神様の力が働いているとは言ってあるけれど。
こっちの世界って、魔法も神様のおかげで使える、になってるから、間違ってはいないのかも。
「ログハウスの離れという形ではなく、独立した建物になりますから」
「まあ、そういうものなんですね」
嘘です。そうでなければ、銀の牙が住んでいる離れの説明がつかない。
でも、リレアさんはわかっているのかいないのか、それ以上こちらを追求してこなかった。
この人の事だから、これ以上あれこれ言って、私がへそを曲げると困ると計算していても驚かない。
心情的に、リレアさんよりリンジェイラさんの方に肩入れするな。
やはり、カモ一号は大事なのだよ。
畑部屋では、アマゾネス達が一日に一軒、小屋を建てている。建てた小屋はどうするか? 何と、お買い物アプリの委託販売で売れた。マジか。
最初の小屋は、一軒五万程度。小屋の中は設備が何もなく、ただの物置といった感じだったから、妥当な値段だったと思う。
彼女達はスキルをフルに使い、私が何も言わなくとも次から次へと新しい建物を建てていく。
そして、それは出来上がった端からアマゾネス専用の魔法の鞄に入れられ、その日の終わりに私に渡される。
魔法の鞄の中から、直接お買い物アプリの委託販売に出し、翌朝には売れているという寸法だ。
段々、売れる値段も上がってきている。というのも、最初は本当に木造のただの小屋だったんだけど、今では石材を土台や壁に使い、屋根だけ木製という「家」に変わってきている。
暖炉があり、水場は……まあ、ないんだけど。それでも、暖炉で煮炊きと暖を取れる「家」だ。
シンプルに一間だけだったのが、今では平屋の四間にまで大きくなっている。凄いな、本当。
ところで、その石材、どこで手に入れてきたの? ダンジョン? 洞窟の方の? 石材、取れるところなんてあったっけ?
アンデッド階層? ……もしかして、あの集落か!?
そういえば、集落には石造りの家、あったね。あの家、潰して石材にしているのか。
あの集落、魔物と一緒で時間が経つとリポップするらしい。宝箱扱いか。
ラケル達が土を掘りにいくのに遭わせて、一緒に行くそうだ。仲がよくていい事だ。
いい……んだよ、ね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます