第171話 買わない道理はない

 人形作り以外やる事ないなと思っていたけれど、意外とあれこれやっている毎日。


 朝のルーティン、神像部屋でのお祈り……といっても、手を合わせて「本日も一日よろしくお願いします」と唱えるだけなんだけど。


 今日に限って、祈ったら少女女神の像がピカーっと光った。


『あー、聞こえておるかの?』

「感度良好でーす」

『うむ。ペヴィチュダ達がやっておった事が、やっと終わっての。新たな商品をあぷりに入れておいたぞよ』

「おお!」

『それを使い、これからも色々と励むがよい』

「へへー」


 お買い物アプリに新しい魔法かスキルが入ったらしい。ペヴィチュダ様達がやっていたものっていうから、やっと人形の起動に関する何かが完成したんだな。




 神像部屋から出て、私室へ行く。まずはお買い物アプリをじっくり確認しておこうと思う。


 スマホでアプリを開くと、確かに魔法とスキルの項目にNEWマークが。


「お、これかな?」


 そこには、人形操作と熟練度連携というスキルが。


 説明文を見ると、人形操作の方は一度に扱える人形の数を増やすというもので、熟練度連携は読んだまま。


 他者との熟練度のやり取りが出来るというもの。色々細かい条件があるようだけれど、これ、人形だけでなく人間ともやり取りが出来るらしい。


 熟練度連携での熟練度のやり取りは、デフォルトだと半々、そこから割合を一単位で変更出来るらしい。


 ただし、熟練度を渡す方をゼロには出来ない。最低でも一にはしないと駄目だって事か。


 とりあえず、どちらも必要だから購入してこう。どっちも百円で負担にならないし。




 人形操作も熟練度連携も、人形にもインストールが必要なスキルだ。


 特に人形操作は、インストールに時間が掛かるらしい。まずはルチアとセレーナに。


 彼女達二人へのインストールは、一人五時間を要した。どうやら、インストールというよりは、根幹部分の大幅書き換えのようだ。


 二人は五時間で済んだけれど、ネーラ以降の子達は一人十時間は掛かった……らしい。


 いや、寝る前にインストールを開始して、起きてもまだ続いてたから、正確な時間は計ってなかった。


 さすがに一度に何人も人形を休ませる訳にはいかないので、交替で一日一人ずつ行う事にした。


 問題は、ゼプタクスに行かせている二人と、ダデシデインの谷に送った四人。


 何とか時間をやりくりして、こちらに一泊する時間を作り、そこでインストールを終了させた。


 おかげで、私の負担が大分減っている。なるほど、魔力負担が大分軽い。こんな形で実感出来るとは。


 人形操作と一緒に、熟練度連携もインストールしておく。……だからあんなに時間が掛かったのか?


 ともあれ、本日無事に全てのインストールが完了。これ以降作る子に関しては、最初からインストールするので問題なし。


「皆にも負担、掛けちゃったね」

「いいえ、マスター」

「私達も、以前より何だか各所が軽く感じられるんです」


 ルチア、セレーナの言葉に、ネーラ達他の人形も全員頷く。彼女達にとってもいい事なら、よかった。




 熟練度は、ステータス項目で見られる。……今まで、こんなのあったっけ?


 首を傾げていたら、スマホがピロリン。


『毎度ご利用ありがとうございます本日はお報せがございますお客様がご購入なさったスキルがバージョンアップしました』


 句読点一切なし。文章はまともそうなのに、何か怖い。


 てか、バージョンアップは自動か。


『それではこれからもお買い物アプリをご贔屓に』


 自動バージョンアップに関しては、何も言わないんだ。やっぱり、中の人って変人揃いなんだな。


 ともかく、熟練度をみられるのはありがたい。ちなみに、当然だけど人形と熟練度を連携出来るのは、お互いに同じ熟練度を持っている場合のみ。


 また、熟練度には上限がなく、レベル……と言っていいのか? には上限がある。どういう事か。


 熟練度の上限は九百九十九なんだけど、そこに至ってもスキルを使うと熟練度の経験値的なものは入り続けるそうだ。レベルに反映されないだけで。


 そうなると、その経験値は無駄になってしまう。そこで連携である。


 本来なら無駄になる熟練度を、他の同じスキルを持っている者達に入るよう設定出来るのだ。


 今は半々のデフォルト設定にしている。これが人形達のスキルレベルが上限に達したら、他の子達に経験値を分け与えてもらおう。


 その熟練度、早速調理のレベルが上がった。食堂組の子達だな。次に上がったのは、薬師スキル。


 残念ながら魔法には熟練度設定がなく、レベルの概念もない。その代わり、お金さえ出せば最初から強い魔法を使えるのだ。


 使用魔力量はそれなりに掛かるけれど。そういえば、魔法は火、水、土、風の四種類で、三までしかないけれど。


 これ、他の魔法はないんだろうか。


 おっと、今度はスマホが震えたぞ。


「は――」

『光と闇の神が目覚めたのじゃー!!』

「あ、オメデトウゴザイマス」


 何回もこの手の通話を受けていれば、少しは慣れるというもの。それにしても、光と闇の神って、そんな方までいるんだ。


『光と闇は双子での。わらわと同じくらい古い神なのじゃ!』

「ほほう」


 双子。しかも少女女神と同じくらい古いとなると、相当な力の神様達なのでは?


『う……い、今は復活したばかり故、そこまでではない……じゃが! 力を取り戻せば、必ずや邪神を倒す心強き仲間になるはずなのじゃ!』


 何だろうな、この微妙な感じ。ゲームで、導入時にはスローライフ系をやっていたはずなのに、気付けばRPGに変わっていたくらいの。


 いや、少女女神の力を回復させて、最終的には邪神を倒さないとこの世界そのものが存続出来ないってのは、最初から聞いてる。


 多分、自分の受け取り方次第なんだろう。


『光と闇が目覚めた故、魔法の種類が増えるぞえ』

「本当に!? ありがとうございます!!」


 やった。これで新しい魔法を覚えられる。




 お買い物アプリを見ると、確かに魔法の種類が増えている。単純に光魔法と闇魔法。


 闇魔法って、何だか敵側が使いそうな魔法だな。


 しかも、魔法の階位……というか、レベル? が増えている! 以前は土水火風が三までだったのに、今は五まであるぞ。


 もちろん、光魔法と闇魔法は最初から五まである。


 火魔法四が六億、五が十二億。水、土、風も同様。違うのは光と闇だ。


 光魔法は一が六億、二が十二億、三が十八億で四が二十四億、五が三十億。ちなみに、闇も同じ。


 普通なら、高くて買えないと嘆くところだ。実際、私も少し前まではそう言っていた。


 だが、今の私には稼ぎがある。このくらい、簡単に買えるから怖い。


 もっとも、今の稼ぎの半分以上は、ルチア達の狩りのおかげだが。


 いや、魔法の鞄で稼いでもいるし。家具で……は、あまり稼いでいなかったか。


 ともかく。買えるチャージがあるのだから、買わない道理はない。

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