第165話 やっぱり魔力だろうか

 ログハウスに戻って、早速焼き物作り。まずは土作りから。配分を間違えずに計り、スキルで混ぜていく。固形のまま混ぜても綺麗になるから不思議。


 スキルを使うと色々な工程をすっ飛ばせるのも、助かる。混ぜた土はそのままろくろの上へ。


 ちなみに、ろくろは木工で作っておいた。ちゃんとあったよ、レシピ。


 まず作るのは皿。これは手で形を作っていく。次は、型に流し込んで大量生産するのもいいな。


 最初なので、スキルを使っても不格好な感じ。これもまた、手作りの味だ。どうせログハウスで自分が使うだけなのだから。


 何とか皿の形になる。これ、熟練度が上がれば、もっと綺麗な形に整えられるのだろうか。


 まず一皿。これをろくろから切り取り、乾燥へ。スキルを使ってとっとと乾燥させる。


 自然乾燥でもいいのだけれど、今回は最初のお試しだから。早く出来上がりが見たい。


 乾燥の次は素焼き。ここで焼いた状態でも皿として使えるけれど、やはり釉薬を使って綺麗に仕上げたい。


 ちなみに、今回の釉薬は畑部屋で手に入る薬草類の灰を使う。これも、スキルでレシピがわかるから楽だ。


 本当は窯できちんと焼くんだけれど、皿一枚の為に窯に火を入れるのはもったいない。


 なので、スキルで全てやってしまう。スキル万歳。


 乾燥、素焼きが終わった皿に、釉薬をかける。というか、釉薬の中に沈める。


 それから焼く。本当なら高温で丸一日以上焼く必要があるんだけど、一枚だけだから全てスキルでやった。


 それでも、数時間スキルを使いっぱなしだったけれど。昼食の後、おやつの時間もすっ飛ばして焼いてた。


 終わったのは、夜の九時。さすがにお腹が空いた。それでも、スキルだからここまで時短出来たのであって、窯で焼いたらもっと手間暇が掛かったはず。


 そう考えると、やっぱりスキルって素晴らしい。かなりズルしてる気がするけれどな。




 出来上がった皿は、使えない事はないという出来。それでも、素人が一から作ったにしてはそこそこといったものだ。


 今度は石膏で型を作り、そこに土を流し込んでカップや皿、花瓶を作るのだ。そのやり方も、スキルが教えてくれる。


 とはいえ、その為には石膏の型を先に造る必要があるのだが。それも、スキルで作れるので、熟練度アップの足しになるだろう。


 うまく出来るようになったら、食堂で使っている木製の食器を全て磁器に切り替えたい。


 二階で提供する場合は銀器を使っている。そちらは毒への備えの意味があるので、入れ替えは難しいかも。カトラリーだけ、銀器を残せばいいんじゃないかと思うんだけどな。


 食堂で使っている銀器、仕入れ先は伯爵夫人だ。別に夫人が売っている訳ではなくて、伯爵家が一括で仕入れたものを、利益なしで私に売ってくれたもの。こういうのも、後見の役目だと言われたら断れない。実際助かったし。


 さすがに二階で出す料理に使うのが、木製の皿や器に木製のカトラリーとかないよな。


 それも、リレアさんと通して伯爵夫人に言われなければ気付かなかった辺り、抜けているとしか言いようがない。


 でも、仕方ないじゃないか。前世の私の生活の中に、貴族なんていなかったし、食堂経営なんてした事もなかったし。


 身分が高い人向けの食器やカトラリーなんて、普段の生活ではお目に掛かる事なんてなかったのだから。




 季節はそろそろ暑くなる頃。暑い季節といえば、冷たい麺が美味しくなる。


 そして冷たい麺と言えば、ガラスの器。そうめんもざるそばもガラスの器で食べたい。


 後アイス。陶器でもいいけれど、やはりここはガラスだろう。ガラス製の大きなグラスも欲しいところ。


 という訳で、焼き物は少しお休みして、またガラス製作に入る。単純な形なら、皿でも器でもグラスでも、何とか作れそうだ。材料もまだある。


 気合い入れて作ったら、色々出来た。ただ、やっぱり見た目がシンプル。今の熟練度だと、こんなものだ。


 もっと綺麗なもの、出来のいいものを作ろうと思ったら、ひたすら熟練度を上げていくしかない。


 ……何度かやってみて、飽きたらそこまでだな。


 今回作ったのは、大きめのタンブラーとガラスのボウル、蕎麦猪口、ガラスの皿。


 タンブラーは、冷たいものを飲むとき用に。大きなタンブラーにたっぷり入れて飲むのが好きだから。


 ガラスのボウル、皿、蕎麦猪口は、食事用に。そうめんとか蕎麦とかザルうどんとか。いや、ザルじゃないけれど。


 敷地は基本、丁度いい温度になっているけれど、季節によって少しは温度変化があるらしい。


 あまりにも敷地の外との温度差があると、体調崩しやすそうだから、いいんじゃないかと思う。


 さて、器が出来たのだから、敷地最初の蕎麦でも食べようかな。お買い物アプリには、食品も数多く売っているので、こういう時に助かる。




 うちの人形達は凄い。色々スキルや魔法を持っているからというのもあるけれど、とにかく凄い。


 特に料理に関しては、既に私の遙か上を行っている。


「どうかしましたか? マスター」


 本日の朝食をテーブルに用意しながら、セレーナが聞いてくる。本日の留守番組は、彼女だ。


 昨日の留守番はルチアで、当然私の食事も彼女が用意した。そのルチアは、私がお買い物アプリで天ぷらを買おうとしていたのを止め、自分で揚げて出してくれたのだ。


 天ぷらは、あくまでサイドでメインではない。だからお惣菜でいいやと思ったのだが。


 揚げたて天ぷらといただくお蕎麦、美味しゅうございました。


 ちなみに、今朝の朝食は和風な感じ。粥と味噌汁、野菜の炊き合わせ、ダンジョン産の焼き魚。


 夕べが天ぷらでちょっと重かったから、今朝は軽くしてくれたらしい。こんなところも、優秀だ。


「いっそ皆に焼き物とガラス製作を頼めたらなあ」


 つい呟いたら、テーブルの上のスマホがピロリン。少女女神からじゃないのか。


 画面を見ると、お買い物アプリからのお報せだ。


『まいどー。カスタマーレベルが上がったよー。ついでに、神様ズから人形用の拡張アプリが入ったって報せろってさー。色々ヨロシクー』


 今回のはまた雑だなおい。でも、カスタマーレベルが上がったのか。少女女神もそんな事、言ってたな。


 そして、このタイミングで人形用アプリの入荷。多分、さっきの呟きが原因だろう。


 もしかしなくても、また人形を大量生産する必要、あるのか?




 朝食の後、お買い物アプリを見てみる。やっぱりあったよ、ガラス製作と焼き物製作。


 人形用の拡張アプリは魔法もスキルも一緒の扱いだ。ともかく、この辺りは全て買っておこう。


 チャージ残高に関しては、アガタ達のおかげで潤沢だ。後で何かで労わなくては。やっぱり魔力だろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る