第5話 光り始めたんだけど!?

 このホーイン密林、ちょっと敷地の周囲を回っただけで、いいお値段のアイテムを採取出来る。さすが超危険なダンジョンだ。


 毎日一回外で採取するだけで、百三十五万よ? 日給百万以上とか、どんなボロ儲けだよ。


 ただ問題もあって、敷地の周囲を半周もすると、魔力枯渇を起こして大変な目に遭うんだよね……


 昨日の体調不良、ステータスによればあれが魔力枯渇なんだそうな。魔力は枯渇すると意識を失う事になるらしい。


 一番の回復方法は寝る事。昨日のベッドに即ダイブは正しい対処だったんだ……


 魔法と違って、スキルは常時発動していても魔力を使わない。という訳で、ただいま私はステータス表示を出しっぱなしにしていた。


 今の私のステータスはというと……



 生命力 三十四

 魔力 五十八


 体力 十

 敏捷 二

 器用 一

 知力 三十七

 精神 五

 魔法力 二

 運 十



 ちなみに、普通の人の数値は大体七から十二の間だってさ。それを考えると、知力の三十七はダントツ感があるね。


 他はまあ、クソ雑魚ステータスでございます。体力と運は人並み? あとは それ以下か。


 で、ステータス表示の説明によれば、体力、敏捷、器用が生命力に繋がり、知力、精神、魔法力が魔力に繋がるんだって。


 繋がっているステータスを上げると、生命力や魔力が上がるという訳だ。運は全てのステータスに繋がっていて、ここが上がると他のステータスも上がりやすくなる……らしい。


 って事は、アイテムでドーピングするのは運が一番最初かな? いや、でも魔力を上げておかないと、ちょっと外に出ただけで魔力切れを起こすのは困る。稼げないじゃない。


 かといって、バリアなし、浮遊なしで外に出られるとも思わない。何せクソ雑魚ステータスだから。


 いいんだよ、別にモンスターと戦う訳じゃないんだし。幼女女神だって、私に戦えとは言わなかった。


 彼女が言ったのは「稼げ」。その一言のみ。いや、それもどうなんだって思うんだけどね。


 ともかく、敷地の周囲でちまちま採取して、何とか魔力アップのアイテムだけでも買わないと、詰むわ。


「では、今日も元気に採取に出ますか」


 柵の周辺だけだけれどね。




 採取生活を続けて多分十日ほど。一日平均二百万を稼ぐようになり、現在のチャージ金額はやっと二千万。


 あともうちょっとで、魔力五十アップのアイテムが買えるー!


 本当は魔力に関わるステータスである知力や精神、魔法力を上げた方がいいらしいんだけど、そっち上げるアイテム、生命力関連のものより高いんだよ……


 なので、とりあえず魔力を五十ほど底上げして、それから採取の範囲を広げて稼ごうかと。


 今日の採取で目標金額を達成するはず! 頑張れ私!




 ステータス画面を見ながら魔法を使っていると、バリアと浮遊でガンガン魔力が目減りしていくのがわかる。


 そりゃ魔力枯渇にもなるわ。


「よし! これで目標額達成!」


 貯金代わりのチャージに本日分の稼ぎを加えて、無事に魔力五十アップのアイテムを買える金額になりましたー。


 早速試したいので、ログハウスに戻る。こういうのは、腰据えて試したいからね。


 まずはお買い物アプリを開く。


「よしよし、ちゃんと二千四百万チャージされている」


 品物の項目に、アップ系アイテムとある。タップしてアイテムの一覧を表示。魔力アップは十から五十まで。


 その五十をタップ。カートに入れて精算まで流れるような操作を。


「あ、これはアイテムだから品物なんだ」


 これまでダウンロード販売のものを立て続けに買ってたから、何か変な感じ。


 配送先を寝室にして、二階に上がる。ベッドの脇の床上に、木箱。蓋を開けると、入っていたのは……


「瓶入り飲料?」


 サイズ的に、栄養ドリンクっぽい。ラベルには「魔力アップ(五十)」って入ってる。


 いや、かえって胡散臭いんだけど。でも、これを飲まないと魔力が増えない! しかも二千四百万もしたんだよ? 今飲まないでいつ飲む!?


「ええい、女は度胸!」


 栄養ドリンクっぽい蓋を開けて、ぐいっと一気に呷る。ん? 味はマスカット風味でちょっとおいしい。


 飲んだ後、特に体調に変化はなかった。ステータスをいじるアイテムなんだから、目眩とか意識を失うとかあるかと心配してたけど、大丈夫みたい。


 念の為、ステータスを表示させたら、確かに魔力がアップしてた。九十ですってよ。


 これで、敷地の周囲を一周しても、魔力枯渇にはならずに済みそう。採取も捗るだろうから、ガンガン稼いで他のステータスもアップするのだ!




 ちょっと浮かれていたら、外が何やら騒がしい。てか、人の声!?


 寝室にある窓から下を見ると、木戸のところに人がいる。数は四人。何だか、全員薄汚れているなあ。


 多分、男性二人に女性二人。男性は大柄な人と細身の人。女性はつばの大きな帽子を被った人とシスターみたいな格好の人。


 細身の男性が大柄な男性を背負っていて、シスターっぽい人が木戸を叩いている。大声を出しているようで、ここまで声が届いたんだ。


「※@*$%&!!」


 ごめん、切羽詰まってるのはわかるんだけど、何を言ってるのかわからない……


 どうしたもんかと思っていたら、いきなりステータス画面が出て来た。


「え……? 何で勝手に……あ」


 ステータスなので、持っているスキルや魔法も全部記載されている。初心者セットやステータス表記のスキルもちゃんとあるね。


 その中に「NEW」と付いているスキルがあった。自動翻訳。


 幼女女神いいいいい!! これくれるの遅いいいいいいい! でもタダでくれたから感謝しますありがとう。後でちゃんと感謝の祈りを捧げておかなきゃ。


 早速自動翻訳をオン! あ、これは脳内で唱えるんじゃなく、ステータス表記の画面をタップするのか。


「誰の家か知らないが、助けてもらえないか!? 仲間が大怪我を負っているんだ!! 一時、敷地内で休ませてほしい!」


 おお、ちゃんと翻訳されている。どうやら、怪我人がいるらしい。見た目的にも、ここのモンスターや素材を目当てにして来るという、冒険者っぽい。


 どうしよう。入れるのはいいんだけど、武器で脅したり、最悪殺されるなんて事も、あるかもしれない。


 よく知らない人は、家に入れちゃいけませんって、子供でも知ってる事だよね。


 迷っていたら、ピコンとスマホがなる。今度は何だ?


「ん? 歩き方アプリ?」


 これにも「NEW」のアイコンが。アプリをタップすると、敷地の使い方ページが開いた。


『この敷地は、持ち主の安全を守る為にありとあらゆる防犯が仕込まれています。持ち主が招き入れない限り、敷地内に入れないのも、その一つです。また、招き入れても客人が持ち主に危害を加えようとした場合、即刻敷地から排除します』


 ……って事は、彼等を入れても、私の身は安全って事でいいのかな?


 んー……よし! 階段を駆け下りて、玄関から外に出る、急いで木戸まで行って、彼等を中に招き入れた。


「ど……どうぞ」

「ありがとうございます!!」


 シスター風の人に、祈られちゃった。彼等は木戸から中に入ると、前庭部分に大柄な男性を下ろした。


 う……血だらけだよ……


「今すぐ治療をします! あの、重ね重ねのお願いで恐縮なのですが、桶に一杯水をもらえないでしょうか?」

「水? 水ね。待ってて」


 桶に一杯って、このログハウス、桶なんてあったっけ? いや、風呂場の洗面器にする? あ、バケツの方がいいか?


 こんな事なら金属製のたらい、チャージに出さずに残しておけば良かった。


 結局運びやすいという一点でバケツに並々と水道の水を入れて、外に運んだ。こぼれないようにするの、結構大変ね。つか重い。


 彼等の元に行くと、シスター風の人が大柄な男性に手をかざしている。何だあれ?


「助かったよ、ありがとう!」


 目の前に、爽やか風イケメンの笑顔。細身の男性だ。顔立ちはいいんだけど、何せ頭から血を被ったようですごい汚れている。臭いもちょっと……


 尻込みしながら、「いえ……」と言っていたら、すごいいい笑顔で言われた。


「重いだろう? 代わるよ」


 やだ、行動までイケメン。血まみれだけど。バケツいっぱいの水を汲んだので重かったのに、細身の男性は軽々と仲間のところに持っていったよ。


 多分、体力とかが段違いなんだろうなあ。


「セシ、水だ」

「ありがとうラル……これ!」


 え? 何? 何かあった? バケツの水を見た途端、シスター風の女性が凄い驚いている。


「どうかしたのか?」

「何て力に溢れた水……これなら!」


 シスターさん、そう言うといきなりバケツに両手をかざし始めた。何やってんの? と思ったら……


「ええ!?」


 バケツの中の水、光り始めたんだけど!?

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