第5話 ふたりきりの夜
食事を済ませ、皿洗いをしていると7が近寄ってきた。
「司、そろそろ入浴のお時間なのでは?」
腕時計を見るとすでに十時を回ろうとしていた。色々あって身体も汚れてるけど……女の子より先に入るってのはちょっとなぁ。ここは男として譲っておこう。
「……俺はシャワーだけでいいから、7先に入ってこいよ」
すると、7は突然顔を赤くした。
「そ、そんな! 主である司の前に仕えている私が入るなど……!」
「いいからいいから」
無理やり背中を押して、7を風呂へ行かせた。
「まったく……妙なところで気を遣うというかなんというか……」
まだ会って数時間。なのに、なぜか何年も過ごしたような錯覚に襲われてしまう。不思議な子だ。
二十数分後、上がってきた彼女は異様に火照っている。……風呂に入ったのかな?
「んじゃ、そろそろ俺も入るかな」
ダンボ―ルから着替えを取り出して風呂へと向かう。服を脱いでいる間に、ふと、善人らしからぬ感情が胸を渦巻いた。
「あいつの下着……入ってるんだよな?」
幼気な男子高校生と同年代の女の子を同棲させるグリズランドって何考えてるんだよ………何考えてるんだよ……。
生唾を飲み込む。
「俺は悪くない! こんなところにある洗濯機がいかんのだよ!」
設置されれいる洗濯機の中を覗き込もうとした瞬間、「はっ!」と我に返った。理性はまだ残っている。
「いかんいかん。……いろんなことがあってどうかしてたな……」
見たい気持ちはあったが、良心がそれを許さなかった。こういう時、無駄な正義感が邪魔になる。ラッキーを逃してしまうというわけだ。
気を取り直して風呂へ。シャワーで体を流し、髪を洗い、洗顔、体と洗っていく。ついでに浴槽を見ても、湯は張っていなかった。
「………?」
風呂から上がり、冷蔵庫にあった水を飲む。よく冷えていてうまい。
「司、どうします。もう寝ますか?」
「うーん………そうだな」
まだ開けてないダンボールもあるが……明日にしよう。何というか、疲れた。あまり頭が動かない。
「では、布団を敷きますね」
そして敷かれた布団は、二人は入れるであろう大きめの布団。一人用が二つではなく、二人用がひとつ。
「どゆこと?」
「見ての通りです」
俺の思考は、そこで停止してしまった。すべての事がどうでも良くなってきた。とにかく寝よう。寝てから考えよう。じゃなきゃ人間やめちまいそう。
「では、私も就寝しますね」
7も布団に入ってくる。お互いに少し距離を取って目を閉じる。が、目が良く冴えてしまっている。体は疲れているのに、脳が眠ってくれない。
「……………………………………眠れん」
十分くらいだろうか、もう7は眠ってしまった。電気は切れ、すでに周囲は真っ暗。今更起き上がる気にもなれない。
「…………」
隣を見る。こちらを向いて7が年相応の顔で気持ちよさそうに寝ている。邪魔するようなことはしない。ただ、本当に綺麗な子だ。
……待てよ?
美人の女の子がすぐ傍で一緒に寝てる。………もしかしてこれ、すごくおいしいトコロじゃないのか!
「いやいやいやいやいや、ダメだから」
しかし、意識せずにはいられない。7を見ないように反対側を向いて目を閉じた。見たらだめだ、理性が崩れる。
意識するな、意識するな意識するんじゃない7かわいいな……あー駄目だ。眠れない。体が内側から熱い。こんなのあんまりだー!
そんな夜で、寝付くことなんてできず……
結局、俺が眠りに落ちたのはそれから数時間後、ほぼ朝だった。
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