第117話 ドラゴンウォーリア
「『オーラブレード』」
ガーネットの剣が輝き、モンスターを一刀両断する。
現在、俺たちがいるのは竜種系ダンジョンで、戦っているのはレッサードラゴン。
以前、俺がウォルターたちと討伐依頼を受けた際に倒したモンスターだ。
「はあっ! やぁっ!」
ガーネットはレッサードラゴンが現れるなり剣を振り、その硬い鱗をものともせずにダメージを与え続けていく。
「まさか、ここまで強くなるとはな……」
俺自身が操作しているユニークスキル『ステータス操作』のお蔭もあるのだろうが、ゴブリン一匹に組み敷かれ、泣きながら助けを求めていた彼女がここまで強くなるなんて、誰が想像できただろうか?
「あっ、やった! ドロップアイテムがでました!」
それどころか、今の彼女はモンスターと戦うときにも気後れしておらず、俺が指示を出す前に考え、率先して飛び出していた。
「ティムさん、ドラゴンウォーリアです! 支援お願いします」
「わかった!」
俺は『パワーアップ』『スタミナアップ』『スピードアップ』を彼女へと掛ける。
ドラゴンウォーリアは二足歩行するドラゴンの一種で、鱗の硬さは健在、二本の足で立っているのでその分、剣と盾を持っている。
剣は大型のサーベルで、盾は表面に自分たちからはがれた鱗を貼っているので、防御力が高く、今のガーネットでも簡単には攻撃を通すことができない。
「えへへへへ、ティム先輩の支援魔法さえあれば余裕ですっ!」
ガーネットはそう言うと、おそろしくも速い動きでドラゴンウォーリアへと接近する。
自身の『オーラ』に加えて俺からの支援魔法を受けている。
普通の人間であれば、この急激な身体能力アップに、思考がついていかないはずなのだが、彼女は剣聖というユニークジョブに恵まれているだけではなく、天性の感覚を持っているらしく、即座に順応して見せることができた。
「流石にっ! 硬いっ! ですけどっ! ティムさんとっ! 私のコンビネーションの前にはっ! 敵じゃっ! ないっ! ですっ!」
しゃべりながらも、高速で動き回り、ドラゴンウォーリアに攻撃を加えている。
本来ならCランククラスの強さを誇るドラゴンウォーリアも、この速さについて行くことはできない。
「これでっ! おしまいっ! ですっ!」
徐々に動きが鈍くなり、だんだんと追い詰められたドラゴンウォーリアは、ガーネットの一閃を食らうと、
「グワアアアアアアアアッ!」
断末魔を上げ、地に倒れ伏した。
「やりましたっ!」
敵を倒すなり、ガーネットは振り返ると嬉しそうに笑う。
今の彼女は明らかにウォルターを超えている。やつらがパーティー単位で一年でBランクまで上がったのだが、もしかするとガーネットなら一年でAランクも夢ではないのではないか?
「よくやった。怪我は? 疲れてないか?」
「平気です、ティムさんのサポートのお蔭で凄く調子が良いので」
常に俺のことを立ててくれるのは嬉しいが、自分より小さな少女に護られているのはやや複雑な気分だ。
明日からは俺も前衛側のステータスを伸ばそうかなどと考える。
「あっ、ティムさん。ドラゴンウォーリアがドロップしましたよ」
ガーネットはそう言うと、ドロップアイテムを回収してきた。
「これって……」
「このタイミングでこれは、もうお願いするしかないんじゃないでしょうかね?」
「そうだな……。今日のところはここまでにしておくか」
俺もガーネットも目の前に出現したドロップ品に目が釘付けになる。
「今日は引っ越し祝いも兼ねて、御馳走になりそうですね」
俺たちはドロップした『ドラゴン肉』を見ると、これをフローネに、どう調理してもらうか考えるのだった。
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