第97話 『よく食べる』スキル出現
「ティムさん! 支援魔法をお願いいたしますっ!」
「『スピードアップ』『スタミナアップ』」
ガーネットの要請にこたえると、俺は彼女に支援魔法を掛けた。
「『オーラ』」
俺の胴体程の太さの、木でできた腕が伸び、半身をずらしたガーネットの横を通過する。
彼女が今戦っているのは『人面樹』という木の表面に目と口が存在するモンスターだ。
このモンスターの全長は数メートルほどで、伸縮自在な木の腕を伸ばして攻撃してくる。
見かけのわりに素早く、人体とは構造が違うため、振るわれる腕と足元から伸びてくる根などが厄介で、常に両方に気を配らなければならない。
それでもガーネットは冷静に相手の動きを見極めつつ立ち回り、伸びてくる腕を斬り付け、ダメージを与えていたのだが……。
「ガーネット、何か仕掛けてくるぞっ!」
次の瞬間、人面樹の頭部にある葉がざわざわと動きだした。
「大丈夫です!」
身体を仰け反らせて伸びてきた腕を避けたガーネットは、そのままバク転をして距離を取る。
『ポポポポーーーーーン!』
すると、人面樹は身体を回転させながら、頭部から木の実を飛ばし始めた。
「『ウインドウォール』」
俺は目の前に、下から風が吹き出す壁を設置し、攻撃から身を守る。
「はっ! はっ! やっ! やぁっ!」
ところが、彼女はその場から一歩も引くことなく飛んでくる木の実をすべて真っ二つにしてしまった。
「『オーラブレード』」
以前ニコルに攻撃を仕掛けた時のように剣がオーラを纏う。
「これで一気に倒します!」
俺の支援で敏捷度が上昇しているのに加え、彼女自身も『オーラ』で身体を強化している。
瞬きするほどの一瞬で、ガーネットは人面樹との距離を詰めると両腕を斬り落とした。
『ポポポーーーーン』
腕を失い、接近されたので木の実を飛ばす攻撃も使えない。彼女は一度地面にかがみ、足に力を入れると。
「これで、終わりです!」
数メートル飛び上がると、剣を振り下ろし人面樹を一刀両断するのだった。
「お疲れ様、至近距離からよくあの木の実を斬り落としたな」
魔法で吹き飛ばした木の実を拾い触ってみるが、かなり硬い。こんなものを良く冷静に斬り続けたものだと感心する。
「ティムさんの支援のお蔭です」
俺が声を掛けるとガーネットは微笑んだ。
これまでは「ティム先輩」と呼ばれていたのだが、正式にパーティーを申し込んで以来、呼び方が変わった。
「それにしても、今日のガーネットは凄いな」
先程の動きを振り返ってみる。
彼女は終始攻めの姿勢を崩さず、敵を俺に近付けようとしなかった。
一歩も引かない果敢な攻めに、バク転などのこれまでに見られなかった大胆な動き。
心境の変化でもあったのか、今の彼女はとても頼もしく見える。
「そ、そうでしょうか? えへっ」
口元をニマニマとさせているガーネット。
「ただちょっと、気になったのが……」
「えっ? 何か不手際がございましたか?」
俺は言うべきか悩んだのだが、彼女とはこれからもパーティーを組んでいくつもりだ。早めに指摘してやる方が良いだろう。
「攻撃回避にバク転を使われると、スカートが捲れるからさ」
俺の言葉で意識してしまったのか、彼女は顔を赤くして両手でスカートを抑えた。
「俺もなるべく見ないようにはするが、他の冒険者に見られたくないと考えちゃうんだよ」
正直、厭らしい目でガーネットを見る連中には苛立ちを覚えなくもない。
俺が自分の気持ちを正直に伝えると……。
「て、ティムさんになら見られても問題ありませんから」
益々顔を赤くしながらもそんなフォローを入れてくれる。
俺はガーネットの気遣いを嬉しく思うと、彼女の頭を撫でることで返事をするのだった。
「……っと、ガーネット。ちょっとストップ」
「はい、ティムさん」
しばらく狩りを続けていると俺のレベルが上がっていることに気付いた。
現在の俺の職業は遊び人で、ここ数日でレベル23⇒レベル25になっている。
「おめでとうございます。何か新しいスキルは出現されましたか?」
ガーネットの問い掛けに俺はステータス画面を切り替える。
「新しいスキルが増えてるな」
やはりレベル25とレベル40が節目らしく、期待していた通りスキルが出現していた。
・『よく食べる』⇒食事を大量に摂ることで一時的にステータスを増加させることができる。増加するステータスは食べた料理によって変わる。
既に取得している『食べる』が体力を回復させる効果があるのに対し、このスキルは食べることでステータスを増加させられるらしい。
「なるほど、早速取得されるのでしょうか?」
ガーネットの問いかけに俺は悩んだ。
「いや、放っておけば取得できそうなスキルだからポイントは温存したい」
『食べる』『眠る』のスキルは自然に取得していた。スキルに沿った行動をすることで熟練度が上がるという認識があるので、今後意識的に食事を多く摂ればその内取得できるのではないかと考えたのだ。
俺はレベルが上昇した分のステータスだけ精神力へと振る。今回の振り分けで精神力も367まで上がってきたので、俺のステータス全般は少しずつ後衛タイプへとシフトしつつある。
名 前:ティム
年 齢:16
職 業:遊び人レベル25
筋 力:377
敏捷度:376
体 力:430
魔 力:400
精神力:367
器用さ:396
運 :524+125
ステータスポイント:1
スキルポイント:275
取得ユニークスキル:『ステータス操作』
指定スキル効果倍:『取得スキルポイント増加レベル5』『取得ステータスポイント増加レベル5』『取得経験値増加レベル5』『アイテムドロップ率増加レベル5』『バーストレベル8』
取得スキル:『ヒーリングレベル6』『ライト』『罠感知レベル5』『罠解除レベル5』『アイテム鑑定レベル6』『短剣術レベル5』『ファイアアローレベル6』『アイスアローレベル6』『ウインドアローレベル6』『ロックシュートレベル6』『瞑想レベル6』『ウォールレベル6』『魔力集中レベル6』『祝福レベル6』『キュアレベル6』『ハイヒーリングレベル6』『セイフティーウォールレベル6』『スピードアップレベル6』『スタミナアップレベル6』『アイテムボックスレベル4』『指定スキル効果倍レベル5』『スキル鑑定』『眠る』『食べる』『ダブル』『深く眠る』『地図表示』『索敵』『インパクト』『ブースト』『剣術レベル7』『後方回避レベル5』『バッシュレベル6』
俺が自分のステータス画面を眺めていると、
「ティムさんは、このまま遊び人を続けるおつもりでしょうか?」
ガーネットが確認をしてきた。
「どうしようかな?」
彼女に前衛を任せたまま自分は遊び人。言葉だけ聞くと養ってもらっている感がぬぐえない。
実際、数日前までは三層で、今は五層にいるのでモンスターも強くなってきている。
今のところ、攻撃を受けていないが先に進むためには新しい攻撃手段を手に入れるべきではないだろうか?
だが、次に選ぶはずだった僧侶は今の時点でガーネットがレベルを上げている。
「これはご提案なのですが、ティムさんは『見習い冒険者』のレベル40を目指されてはいかがでしょうか?」
「確かに、それも手の一つだけどいいのか?」
その道を選ぶと俺のステータス上昇はステータスポイントの振り分けのみとなるのだ。
「私は、ティムさんが辿った道筋をなぞっておりますので、効率よい成長をさせていただいておりますから。おそらく『見習い冒険者』はレベルを上げにくく、ステータスも上げつらい代わりに優秀なスキルが眠っているのではないかと考えております」
それは俺も感じていることだった。彼女に甘えてしまい提案を受け入れるか考えていると、そっと手が握られる。
「ティムさんの『ステータス操作』はいまだ謎に包まれているスキルです。私もお手伝いいたしますので、どうぞお好きなように」
その一言で決断した。
「そうだな、ガーネットが僧侶を上げ、俺が見習い冒険者の上を確認する。お互いをさらに強化するならこれが最良だ」
俺は見習い冒険者を上げることにした。
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