第50話 方針決定

「うーん、次はどうしようか?」


 ベッドの上であぐらをかきながら俺はアゴに手を当てて考える。


 毎度行っている『ステータス操作』は俺が冒険者を続けて行き成り上がるためには欠かせない能力だからだ。


 ステータスの振り方1つ、取得すべきスキルの選択1つ次第で未来が大きく変わってしまうので、落ち着いた場所で熟考するのが最近のパターンになっていた。


「『コンセントレーション』は優秀なスキルだよな?』


 使用することで 『筋力』『敏捷度』『体力』を同時に上昇させることができるのだ。

 四層までの狩りで使っている前衛を何人か見た覚えがある。問題は……。


「持続時間が短いこと。本人にしかかけられないことか?」


 『コンセントレーションの持続時間の短さについてはサロメさんに調べてもらったスキルの資料にも書かれている。


 スキルレベルにもよるが、最大で2分が良いところらしく、前衛が使う場合はその時間で倒しきる確信を得たら使うのが良いとされている。


「『スピードアップ』『スタミナアップ』『指定スキル効果倍』と組み合わせるのもありっちゃありなんだが……」


 わざわざ効果倍枠をとってまでやるのなら、汎用性が高い『バースト』を選択するべきだろう。


「今の俺の戦士レベルが30……つまり『コンセントレーションレベル7』まで上げることができるが、使用するスキルポイントは41。中々ばかにならないぞ……」


 しかもやるからにはこの先を考えて10まで上げることになる。すると最大必要スキルポイントは237になる。


 これは『コンセントレーション』だけでなく、職業レベル25で入手した戦闘系スキルの大半に当てはまる消費スキルポイント数だ。


「この先もソロでやっていくなら相手に突っ込んでいく立ち回りをメインにすべきではないだろう」


 例に挙げたのは『コンセントレーション』だがこれが『バックスタブ』であろうと同じこと。


 俺に必要なのはあらゆる状況に対応可能な汎用性の高いスキルだ。

 魔法なら遠距離攻撃による数減らしや、僧侶の支援魔法で底上げすることで一時的に前衛に通用する力を得ることもできる。


「そう考えると、既にレベル8まで上げてしまった『バースト』スキルレベル10が上限で支援効果も高い『スピードアップ』『スタミナアップ』あたりを先に抑えておくべきだな?」


 こちらの支援魔法は仲間にも掛けることができるので、いざという時に周りを支援してやることもできるだろう。


 もっとも、あの時の宣言以来俺は距離を置かれているようなので関係ない考えかもしれないが……。


「あとはステータス振り分けだな……」


 現在残っているステータスポイントは183だ。『指定スキル効果倍』のお蔭でレベルが1上がるごとに15増えるので助かっている。だが、レベルの上昇自体も今倒しているモンスターでは上げずらいのできつくなってきている。さらに……。


「すべてのステータスが300オーバーしていて、辛うじて400に近いのは『体力』だけ……」


 『商人』を選択してレベルが上がっていたので、上昇してしまっただけだ。


「ここまでは100上げるごとに必要になるステータスポイントが多くなるから満遍なく振ってきたけど、そろそろそのやり方をやめるべきじゃないだろうか?」


 あの時は低レベルということもあってか、スキルポイントもステータスポイントもガンガン増えたので安易に振っていたが、現時点で取得したいスキルをすべて取ることもできず選択肢を狭めなければならないことを検討している。


「そうすると……後衛系にしておくか」


 現状はどっちつかずの中衛として行動しているが、もっと魔法の威力が高ければ敵が近寄る前に片付けることだってできたはず……。


 現在の魔力は「336」になっており、ほんの少しだが前衛寄りになっている。ここから『魔力』『精神力』『器用さ』へと振っていくのだが……。


「よし、決めた。『遊び人』を23まで上げてから『魔道士』を40にして出現するスキルを取得。その後はレベル『戦士』『斥候』『遊び人』の順番にレベルを40まで上げて入手したステータスポイントはこの3つへと振り分ける。斥候で上がってしまう『器用さ』から先に上げておけば400を超えたときの消費ポイントを少しは抑えられるだろう」


 遊び人に関しては戦闘力減少の不安があるので狩場を四層に戻すつもりだが、運500を維持するためにはこればかりは仕方ない。


 このやり方だとレベルアップ時の職業補正分しか成長できず、しばらくの間は停滞に耐えなければならない。

 だが、どのみち五層を突破できる予定もない。レベル40までならそれぞれの職業で二週間あれば到達可能だ。


 先が見えずに不安だった商人をやり遂げた俺だ。きっとなんとかなるはず……。


 名 前:ティム

 年 齢:16

 職 業:遊び人レベル21

 筋 力:347

 敏捷度:311

 体 力:380

 魔 力:336

 精神力:300

 器用さ:352

 運  :480+105

 ステータスポイント:3

 スキルポイント:187

 取得ユニークスキル:『ステータス操作』


 指定スキル効果倍:『取得スキルポイント増加レベル5』『取得ステータスポイント増加レベル5』『取得経験値増加レベル5』『アイテムドロップ率増加レベル5』『バーストレベル8』


 取得スキル:『剣術レベル7』『バッシュレベル6』『ヒーリングレベル6』『ライト』『罠感知レベル5』『罠解除レベル5』『後方回避レベル5』『アイテム鑑定レベル6』『短剣術レベル5』『ファイアアローレベル6』『アイスアローレベル6』『ウインドアローレベル6』『ロックシュートレベル6』『瞑想レベル6』『ウォールレベル6』『魔力集中レベル6』『祝福レベル6』『キュアレベル6』『ハイヒーリングレベル6』『セイフティーウォールレベル6』『スピードアップレベル6』『スタミナアップレベル6』『アイテムボックスレベル4』『指定スキル効果倍レベル5』『スキル鑑定』



「……これでいいはずなんだ」


 残っていたステータスを『器用さ』に振った俺は、ステータス画面を食い入るように見つめ続けるのだった。

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