第47話 続ダンジョン五層
「うん……ドロップボックスが落ちないな」
現在、俺は昨日に続いて五層に籠って狩りをしている。今日は午前中だけで3つのフロアに溜まったモンスターを全部で30匹ほど討伐した。
前日も合わせると40匹近く倒している。四層なら『指定スキル効果倍』がなくても2つは出ていたはずなのだが、今のところドロップボックスが落ちる気配すらない。
「やはり潜る層に応じて必要な運が決まっていると考えるべきか……」
でなければ四層でドロップボックスを落としていたはずのモンスターが落とさないわけがない。
現状で俺の運は商人の補正込みで490。四層でドロップボックスが出たときも400を超えていたことから必要な運を超えたらドロップするようになると思われる。
「遊び人に変えれば多分ドロップするようになると思うけど……」
現在の職業は商人のレベルが30だ。
支援魔法を最大まで掛けてモンスターと戦っているので、ここで運しかステータス補正がつかない遊び人を選ぶのは危険な気がする。
それというのも五層に湧くモンスターは数も多く組み合わせも様々だからだ。
午前中に対峙した時はメイジゴブリンが5匹とホブゴブリンが2匹だったので、治癒魔法を連発されてしまい倒すまでに随分と時間が掛かりその分消耗させられてしまった。
五層のフロアはときおり罠のような編成で待ち受けているらしく、こちらの対策が通用しない場合がある。
能力を落としておいて殺されたら目も当てられないので慎重に考えなければならない。
「……それに見極めたい部分もあるからな」
推測になるが、五層におけるドロップボックス解放条件は運500ではないかと考えている。
商人のレベルをあと5つあげれば済むので、今のペースなら数日で到達できる予定だ、この機会にドロップボックスを落とすラインを見極めたいと思っている。
「それが終わったら商人のレベルを40まで上げるとしよう」
サロメさんの協力で冒険者たちが覚えているスキルはそれなりに情報が集まってきている。
中には先日俺がやったレッサードラゴンを殲滅できるようなスキルもいくつか存在している。
それらがあれば手札が増えることは間違いないが、俺はそれよりも商人のスキルが気になった。
レベル40というのは冒険者基準でCランクくらいだ。戦えない商人をそこまで上げる人間はいないだろうし、もしいたとしてもアイテムボックスという激レアスキルを得るには熟練度が必要なので、それ以上育てる気すら起きないだろう。
だが、俺はスキルポイントで取得できるという優位性があるので、40まで上げた時に何が起こるか楽しみで仕方ない。
「それが終わったら……遊び人も上げるか」
レベル上げに時間が掛かる遊び人も五層を余裕でこなせるようになった後ならば転職しても良い。レベル25くらいならすぐに上がることだろう。
俺は今後のプランを考えると、休憩を終え次のフロアへと向かうのだった。
「ティムさん、こんにちわっす」
「お疲れ様です。ティムさん」
「ん、ああ。お疲れ」
ダンジョンを出て冒険者ギルドに戻ると、何人かの冒険者が挨拶をしてきた。
彼らは俺より一つ年下だ。
俺が冒険者になってそろそろ一年半。一つ下の世代もそろそろ頭角を現す奴が出てきている。
スキルなしから成り上がり、ウォルターとの対決でレッサードラゴンを殲滅した話が広まったせいか、最近では親し気に声を掛けてくるようになった。
「今度一緒に冒険して俺たちの動き見てくださいよ」
「まあ、機会があったらな……」
目を輝かせてくる後輩を適当にあしらいつつサロメさんのところへと行く。
「うん、その様子だと今日も倉庫行かなくて平気そうですね?」
「ええ、でもそのうちまた大量に持ち込むことになると思いますよ」
俺が専属サポート付きの冒険者だということも知られ、こうして話しているだけでも注目されているのがわかる。
「そうですか、本当に。期待していますね」
満面の笑顔を浮かべるサロメさん。最近では休暇日の前日に飲みに行ったりもしているので砕けた様子を見せてくれるようになった。
俺はその笑顔の奥に潜む本気を感じ取るとプレッシャーを受けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます