12


「アンタ、この状況で明日も仕事ができると思う?」


「……やっぱり、無理ですよねぇ」


「無理だなぁ」



ですよね。この状況で明日も仕事ができるわけないよね。


私の答えによくできましたというように頷いた男の仕草は、小さい子にするようなそれに少しムッとする。



わかってたよ、できないであろう事はわかっていたんだよ。そもそも、社長はどこかに行っちゃったみたいだし明日も仕事ができるってなっても居ないんじゃ、商談もできるわけない。というか明日の商談、男達に渡したUSBに入ってる取引先との商談だ。つまりそう言うことだ。

ただ本当に眠い。明日仕事がないならも本当に帰ってゆっくり寝て、日曜日は久しぶりに美容院とか行きたい。



「じゃあ、もう夜も遅いんで家に帰ってもいいですか?正直すっごく眠いんで家に帰って早く寝たいです。」


「テメェ、この状況で俺達が帰すと思うか?」


「……できればそうして欲しいです」


「無理だなぁ」



私の漏らした本音に、黒髪の男ではなくいつの間にか通話を終えていた銀髪の男がこちらを睨みながら答える。


帰してくれるとは思わないけど、もしかしたらってことはあるじゃん。私ちゃんと証拠全部渡したし。お話とかなら後日でもいいんじゃないかなとか思ったりするじゃん。後日この2人に会うのは控えたいところだけど。


そんな私の願いも虚しく、いい笑顔で銀髪の男ではなく黒髪の男が答えた。


私は小さくため息をつくと近くにあったデスクチェアへと腰を下ろした。そんな私の態度に黒髪の男は何とも言えない視線をよこしてくる。



「アンタ、本当に一般人か?」


「え、一般人ですけど」


「テメェが一般人なわけねぇだろぉが!」



黒髪の男の問いに何言ってんだというような顔をして答えると、間髪入れず銀髪の男から私の応えを否定する言葉が飛んでくる。


失礼な。私は歴とした一般じだ。

平々凡々な一般家庭で育って今の今までこの会社で社会の一歯車としてこき使われてきましたが?


銀髪の男の言葉に眠気で回らない頭で文句を考えているとそれが顔に出ていたのか男に、んだよ?と睨まれる。


そんな私たちのやり取りに黒髪の男は、苦笑いを漏らしながら言う。



「普通のヤツはこんな状況で、ましてやあんなモン向けられてんな冷静じゃないんだわ」



あんなと言った男が指差したのは銀髪の男が持っている怪しく黒光りする銃だった。



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