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あー……あれかぁ。

あれは、水鉄砲とか運動会で使うやつとかそんな感じのものなんじゃないかなぁ。だって、ここ日本だし銃刀法違反とかになるじゃん。そんな日本で銃を持ってる人なんて普通に生活してたらいない。仮に、私がこの会社でこき使われてる間にこの日本が銃社会になってたとして、だ。会社に住んでんのかってくらい残業しまくってて世間の情勢に疎くなってても流石に気づかないわけないだろう。


なんて、全然回らない頭で考えて、私は黒髪の男に向かってにっこりと笑いながら言った。



「それ、水鉄砲ですよね」


「は?」



私の言葉に黒髪の男は何言ってんだコイツと言った表情を浮かべる。そんな男を無視して、眠気で鈍くなっている頭の私は先ほど考えたことをつらつらと口にする。



「だって、今の日本じゃ銃の所持は禁止されていますし、私がほとんど会社に住んでんじゃないかってくらい残業しまくってて世間の情勢に疎いからって流石に銃社会になってたら気づくだろうし、だから水鉄砲かなって……あ、それか運動会とかで使う」



やつ、と続くはずだった私の声は、突如響いたパンッという乾いた音にかき消された。


音の出どころへと視線を向けると銀髪の男が握っているいる銃から硝煙が上がり、男の足元には上司がこちらに顔を背ける形で倒れていた。



「え?は?」



水鉄砲じゃない?本物?待って、上司撃たれた?


目の前の光景に先ほどまでの眠気は一気に吹き飛ぶが、状況上手く処理できない。バクバクと心臓が飛び出るんじゃないかってほど音を立てている。手はほのかに震え冷たくなる。



「ッにやってんだよ!そいつにはまだ聞きてぇことがあんだよ!」



私の状態には目もくれず、黒髪の男は出会ってから初めて聞く怖い声で銀髪の男に怒鳴り散らしている。そんな男にうるせぇなと言いながら銀髪の男はコツンと上司の顔を蹴ってこちらへと向ける。こちらをみた上司の頬には一筋の赤い線が入っており、その口からは白い泡が出ている。



「んなとこで殺すわけねぇだろ」



めんどくせぇと言った銀髪の男に、そんじゃこんなとこで撃つんじゃねぇよと黒髪の男は睨みながら言う。


生きてた……?

いつの間にか息を止めていたらしい私は、上司が生きているということに安心してハッと思い出したかのように息を吸った。

脳に酸素がまわって動き出した頭で考える。


なんとなく、そうなんとなくわかっていたことだけど、この人たち普通の人じゃない。この会社の親会社的なことを言っていたけどそれも怪しい。普通に会社で働いている人間が銃なんて持ってるわけないし躊躇いなく人に向けて撃てるわけない。

私、大丈夫?ちゃんと生きて家に帰れる?


まだ震える両手を握りしめ、どうやってこの人たちから無事に逃げれるかを考える。

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