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「で、メールは?」


「メールはスマホのほうにあります」



スマホをカバンから取り出し適当に作ったメールアドレスの受信フォルダをタップして直近のメールを開き、画面を黒髪の男へと見せる。

メールには書類作成の指示と一緒に作成に必要な資料なども添付されている。そして、上司から来たものだとわかるアドレスもしっかり表示されている。



「なるほどな……他のも見ても?」



なるほどと画面に表示されている内容を確認して他のメールも見たいと言われたので、どうぞとそのままスマホを手渡そうとすると、ガシャンと大きな音がオフィス内に響いた。

驚いて音がした方へ視線を向けると、いつの間にか私のそばから離れていた銀髪の男の前に顔を真っ青にした上司が震えながら座り込んでいた。その横には音の元凶であろうデスクチェが転がっていた。



「テメェ逃げんなや」



そう低く恐ろしい声音で言うと銀髪の男は逃げないように上司の横のデスクを蹴りあげて前方を塞いぎ、上司の頭には銃が突きつけられている。

どうも目を離した隙に、この2人に裏切りの証拠が渡ってしまうことを恐れた上司が逃げ出そうとしていたらしい。

ガタガタと震える上司を人睨みした銀髪の男は、それで?と眉間に皺を寄せ銃は城址へと向けたまま黒髪の男へと視線を向けた。



「全部は確認してねぇけど証拠はバッチリ」


「そうか」



黒髪の男ははぁとため息をつきながら少し疲れた顔で手に持っていた私のスマホをかかげて答えた。それに何の感情も読み取れない表情で頷いた銀髪の男は、ポケットから男のスマホを取り出し上司に銃を向けたままどこかへ電話をかけ始めた。



「このメアドのアカウント、もらってもいい?」


「どうぞ。上司達からのメールを転送するためだけに作ったアカウントなんで」



私にスマホを手渡しながら聞いてきた男にスマホを受け取りながら了承の言葉を返すとサンキュと疲れの見える笑顔を返された。

こんなにクマを作っているのに渡した資料もメールもざっと目を通しただけだろうからきっとこれから内容の確認とかをするんだろう。私がしたことではないがうちの上司達が面倒なことをしてごめんなさいと思い曖昧な笑顔で頷き返し、デスクに置いてあるメモ用紙にアカウントのIDとパスワードを書いて手渡した。


黒髪の男は男のスマホを取り出すと、手渡したメモを見ながら何かをスマホに打ち込んでいる。きっとアカウントにでもログインしているのだろう。



さて、証拠のデータは全て男達に渡したし私はもう帰っていいだろうか。正直ってもうめっちゃ眠い。早く帰って今あったことは全て忘れてふかふかのベッドに横になって寝たい。



「あのー…、持っていたものはそれで全部なんでもおう帰っていいですか?明日も仕事なんで」



私が渡したアカウントを確認しているであろう黒髪の男に声をかけると、男は見ていたスマホの画面から視線を上げるとにっこりと微笑んだ。

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