02


そんな労働環境悪い職場なら辞めちゃえばって思うじゃん?辞めたいけどここよりお給料良くて駅からもそこそこ近いって職場、中々無いんだよね。あと一番の問題は、そもそも転職活動する時間が全くないってとこだ。

忙しすぎて、たまの休みの日は1日が睡眠と全然できてない家事で終わってしまう。


大学時代から貯めてる貯金が沢山あるから辞めてから次の仕事決めればいいかなんて思ったりもした。でもそんなことすると多分私はニートになる。一旦仕事辞めるともう働きたくなくなるに決まってる。そう考えると転職するのは難しくてずるずるとこの仕事を続けている。


これならまだ、大学時代の方が楽しくお金を稼いで好きな勉強してオールでバイトとかしてたこともあるけど、楽しかったしまだちゃんと人間らしい生活してたと思う。




そんなことを考えながらも、私の指はカタカタとキーボードの上を走る。

キーボードの横に置いていた、いつもお世話になっている翼の生える青い缶のエナジードリンクを手に取ってグビグビと喉を鳴らしながら胃に流し込む。出来上がった書類にざっと目を通し、誤字脱字がないかを確認して社長へとメールに添付して送る。

真っ白の壁にかけてある飾り気のない時計に目を向けると時刻は23:40。




よし、なんとか今日中に間に合った。そして終電にも間に合った。

今日は自分の家でふかふかのベッドで寝れる!




急いでパソコンの電源を落としてデスクの上を片付ける。オフィスの電気を消し、戸締りの確認をしてオフィスを出る。





駅までは徒歩10分弱。現在23:45。



うん、余裕で終電に間に合う。ワンチャン、一本前の電車に乗れるかもしれない。



鉛のように重い疲れた身体に鞭打って、カツカツとヒールを鳴らしながら足速に駅へと向かう。駅に近づくと、先程までその辺りの居酒屋さで飲んでいたんだろうサラリーマンや大学生の集団がいる。楽しそうにほろ酔いだったり千鳥足だったりそんな姿を見て、そういや今日華金だったわと思い出す。



何が悲しくて華の金曜日にこんな時間まで働いて——しかも他人の仕事、明日も仕事とか本当に嫌になる。



賑やかな集団の横を虚しくなりながら通り過ぎて、改札の手前で定期を入れている財布をカバンから取り出そうとしていつも入れている場所に財布がないことに気づく。

改札口から少し離れた隅の方でガバッと勢いよくカバンを開いて中を見る。



嘘でしょ……やらかした。オフィスに財布忘れた、マジ最悪。



スマホのロック画面を見ると23:53。



終電まで残り20分、めっちゃ急げばギリ間に合う時間。家に帰るにしても、ネカフェに行くにしてもオフィスへ財布を取りに戻るの確定。できることなら家で寝たい。急いで取りに行って急いで戻ってこよう。




私は、来た道を出来る限りの速さでオフィスへと引き返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る