第49話 「妖精メパーはオトメリッサどもを信じているメ③」
「決着って、そんな……」
「メ! 翼が何かしたのかメ!」
「あんッ!? そんなもん決まってんだろッ! てめぇのその、ヘラヘラとした態度とか、正義面とか、その他諸々気に入らねぇんだよッ!」
――メ。
これは本心なのかメ。なんだか言葉に詰まっているようにも感じるメが、今の爪とまともに話し合うのは難しそうだメ。
「……そっか。それで、僕と戦ってどうするつもり?」
「俺が勝ったらオトメリッサを脱退させてもらう!」
メ、メエエエエエエエッ!
「そんなの困るメ! 爪がいないと、誰が翼にツッコミを入れられるんだメ! ボク一人じゃ手に負えない……」
「知るかンなモン! てめぇらとこれ以上関わりたかねぇんだよッ!」
「……分かった」
――メ。
翼が唾を呑み込んで反応したメ。
「いやいやいや、そんなのアリかメ……」
「それで、僕が勝ったら……、うーん……、どうしようかな……」
翼は思案しているメ。無理もないメ。
「ならこうしようか。お前が勝ったら教えてやるよ」
「教えるって、何を?」
「下駄箱に入れたあのクソマズパイの、旨い食べ方をな!」
「……何それ、すっごく知りたい!」
「だったら俺と戦え!」
「うん、じゃあ戦う!」
――いや、ふざけんなメ!
割に合わないにも程があるメ! そんなしょーもない条件を呑むなメ! っていうか、知ったところでどうするつもりだメ!
なんてツッコミ切れないツッコミを入れる前に……、
「オトメリッサチャージ・レディーゴーッ!」
翼はブレスレットを掲げて変身し始めたメ。
ブレスレットからはピンクの淡い光が翼の身体を包み込み、やがてピンクの光が消えると、白とピンクのセーラー服状の衣装を着たロングヘアの少女に変身していったメ。
「未来への翼、オトメリッサ・ウィング!」
ポーズを決め込んだ後、オトメリッサ・ウィングは再びブレスレットに力を込めたメ。
「漢気、解放!」
同時に、クローもまた、
「漢気、解放!」
ブレスレットに力を込めて、淡い光を集めながら右手にそれぞれの武器を形成したメ。
――本気だ、メ。
お互い武器を構えながら、睨み合っているメ。
「いくよ……」
「あぁ……」
二人の軽い深呼吸が、ボクの耳に届いてくるメ。互いに見合って、じっくりと様子を窺って、次第に二人とも手の武器への力が強くなっていき――、
「はぁッ!」
先制したのはウィングの方だったメ。弓から放たれた矢が、クローのほうへと一発、弧を描くように迫っていったメ。
「当たるかよッ!」クローは素早い動きで右へ躱し、剣を構えて一気にウィングとの距離を詰めていったメ。「漢気、大解放ッ!」
更に素早い動きで、剣を振りかぶってウィング目掛けて斬りかかっていったメ。正直、ボクの目でようやく捉えられる程の素早さだから、ウィングが見えるはずが……、
「漢気、大解放ッ!」
ウィングの背中に羽が生えて、一気に上空へと飛び上がっていったメ。流石、あの動きもしっかり予測できたのは素直に凄いと思うメ。
ウィングは上空から弓を構えようとしたメ。が、
「クロー・ルージュ! 漢気奮発ッ!
クローは懐から取り出したルージュを塗りたくったメ。そこから今度はGODMSの粒がクローの足元に集中しはじめていったメ。
このルージュは初めて見るメ。これって、ラビットアクジョの……。
「はぁッ!」
と考えている間もなく、クローは思いっきり脚に力を込めて飛び上がっていったメ。
「なッ!」
思いっきり剣を上段に振りかざし、そのまま一気にウィング目掛けて振り下ろしていったメ。ウィングはすんでのところで躱そうとするけど、肩のところに当たって、
「うわああああああああああああああああああああああああッ!」
そのまま地面に叩き落されていったメ。
「安心しろ、峰打ちだ」
地面に降りていったクローは、降りていったウィングを見下ろしながら冷たく言い放ったメ。
クロー……。
「うっ……、痛い……」
「当然だろ」
よろめきながら立ち上がるウィングを見据えて、クローは再び剣を構えていったメ。
「どうやら、本気みたい、だね……」
痛そうに右肩を抑えながら、ウィングが睨みつけているメ。そして、クローも負けじと強く睨み返していったメ。
「本気? 本気だったら今頃てめぇは剣で真っ二つだったぜ」
「そっか。そうだよね。それでこそ、爪くんだよ……」
――メ。
「だ、大丈夫かメ?」
「うん、大丈夫。もう痛みも治まってきた」
口ではそう言うウィングだけど、案の定苦痛に悶えているような険しい表情になっているメ。
「どうした? 降参するなら今のうちだぜ」
「まさか。降参なんてすると思う?」
ふっ、と一気に不敵な笑みを浮かべるウィング。
懐をガサゴソと漁って何やら取り出しているメ。これは、もしかして……、
「ウィング・ルージュ! 漢気奮発ッ!
ウィングはルージュを自分の唇に塗りたくったメ。これも初めて見るメが、確か元になった闇乙女族の能力って……。
と、考え込んでいると、
ポン!
ポン!
ポン! ポン! ポン! ポン!
と、GODMSの粒が卵の形に集まっていき、次から次へと大きな卵を周囲に生み出していったメ。
「なんだこれ……」
クローが呆気に取られていると、卵たちはぼよん、とドリブルでもするかのように弾けていったメ。ひとつ、またひとつと弾けていったかと思うと、あっという間にクローの周りを卵たちが取り囲んでいき、またもやぼよんぼよんと卵がバウンドする異様な空間へと早変わりしていったメ。
「チッ、こんなもん!」
クローが剣を構えて卵を斬り落とそうとした、その瞬間、
バアアアアアアアアアアアンッ!
と、ひとつの卵が爆発していったメ。
「ぐっ……」
持ち前の素早い動きで、クローは爆発を上手いこと背後へと躱していったメ。
「どう?」
「どう、じゃねぇよッ! 危ねぇだろッ!」
「そっか、じゃあもう一発」
バアアアアアアアアアアアアアンッ!
別の卵が爆発したメ。
「まさか、お前この卵を全部爆発させるつもりじゃねぇ、よな?」
「何言っているの? そのつもりに決まっているじゃん」
バアアアアアアアアアアアアンッ!
バアアアアアアアアアアアアアアアンッ!
一発、また一発と卵が爆発していくメ。その度にクローは何度も動いて爆発を躱していくメ。
だけど、卵の数は一向に減る気配もなく、クローは次第に肩で息をしていくメ。
「はぁ、はぁ……。てめぇ、こんなことしてタダで済むと……」
「先に喧嘩売ってきたのはそっちじゃない。それに、僕だって、絶対負けられない理由があるんだから」
――ウィング。
「メ……。そんなにオトメリッサのことを……」
「あのパイを美味しく食べられる方法があるなら是非とも知りたい! あんなマズいお菓子、今まで一度も食べたことがないもん! そんな天才的な方法を発見したなら、ノーベル賞ものだと言っても過言じゃないよ!」
――前言撤回。
完全にただの興味本位だメ。っていうか、優先順位そっちのほうかメ! オトメリッサ脱退のこと、もっと真剣に考えろメ!
「だからって、こんな手……」
「ボーッとしている場合じゃないよ。まだ卵は一杯あるんだから、早くしないと……」
バアアアアアアアアアアアンッ!
またもや卵が爆発したメ。クローはまたもや後ろのほうに逃げているが、残った卵たちが次から次へとバウンドしながらクローのほうに近付いていっているメ。
――なんてタチの悪い力なんだメ。
「ち、ちくしょオオオオオオオオオオオオオオッ!」
最早クローと卵の追いかけっこと化していったメ。クローが逃げる度に卵たちがクローを追いかけて行って、一番近くにいる卵が爆発して、そしてクローがまた逃げて――。
繰り返される鬼ごっこを、ボクたちは黙って見守っていたメ。
「なんかウィングが優勢っぽい感じだメ」
最早クローは意気消沈していたメ。走り回っても、キリがない状態だメ。変身しているとはいえ、川岸を何周もしたらそりゃキツいだろうメ。
「どう? そろそろ降参する?」
「ふ、ふざけんな……、こんな、はぁ、はぁ……、こんな、手で、負けて……、たまる……、か……」
クローの動きがとぼとぼと鈍くなっていき、やがて膝を着いて倒れ込んでしまったメ。
――あぁ。
「どうやら僕の勝ち……」
「おおっと! なんか面白そうなことしてんじゃねぇか!」
どこからともなく、野太い男性の声が聞こえてきたメ。
っていうか、この声は――、
「え? なんで?」
「て、てめぇ……」
土手の上から、ボクたちを見下ろすように、黒塚兜が不敵な笑みを浮かべて仁王立ちしていたメ。
「はっはっは! なんだ、殴り合いか?」
「黒塚……、何しにきた?」
「何って、生徒たちが喧嘩をしていたら止めに入るのも教師の役目だろう。勿論、拳で語り合うのも青春の一ページだと思ってはいるがな」
――メ。
久しぶりに兜の教師ムーヴを聞いた気がするメ。
「全く……、こんな雨の中で、何をしているかと思ったら……」
またもや土手の上から、別の声が聞こえてきたメ。
見上げると、兜がいるところから少し離れたところに、今度は海の姿が見えたメ。
「お前もかよ……。邪魔すんじゃねぇッ!」
「ふっ、断る。貴様らのくだらない喧嘩に挟まる趣味はないが、一応仲間だからな」
「はっはっは! そういうわけだ! 俺たちも混ぜろッ!」
――えっ?
混ぜろって、まさか?
「オトメリッサチャージ!」
「オトメリッサチャージ!」
二人はそれぞれブレスレットを掲げて、
「レディーゴーッ!」
「レディーゴーッ!」
変身、したメ……。
「って、なんでそういう展開になるんだメエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!」
ちょっとでもまともに止めてくれる二人に期待した自分が、馬鹿みたいだメ。
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