第12話 「妖精メパーはオトメリッサどもの戦いを傍観している」


 そんなこんなで、まさかの三話連続でボク視点の話になったわけだメが……。

 無謀にもいきなり敵の本拠地に乗り込んだオトメリッサたちは、ここに来てようやく変身シーンに漕ぎつけたメ。

 で、変身した面々はと言えば――、

「チクショウ、やっぱこの姿はなんか違和感しかないぜ」

「そうか? 俺は軽くて動きやすくていいと思うが」

「僕は、その、何か胸が……」

「それよりも、俺たちは全員まだ二回目の変身なんだぞ。この姿に慣れない以上、まずはしっかりと策を練ってだな……」

 ――何をごちゃごちゃ言っているメ。

「みんな、話は後だよ!」

 翼が叫んで喝を入れてくれたメ。なんだかコイツが一番頼もしいメ……。

「いくよ!」

「おう!」


「漢気解放ッ!」


 全員が叫ぶと、手に光の粒が集結し、各々の武器を手にしたメ。

「シャドロウ……」

 ドロオトメたちと睨み合い、武器を握る力が強くなって……、

「シャアアアアアアアアッ!」

 一斉に襲い掛かってきたメ!

「たあッ!」

「やあッ!」

 目の前のドロオトメたちを武器で薙ぎ払うオトメリッサたち。あっという間に数十体あったドロオトメたちは粉々に砕けてただの泥へと還元されていったメ。

「やッ!」

「ふッ!」

 次から次へ、襲い掛かるドロオトメを倒していくメ。

 ただ……。

「えいっ! あ、肘当たっちゃった」

 背後にいたドロオトメに翼の肘が当たったメ。そして、そのドロオトメもまた、ただの泥になってしまったメ……。

 そう――。

 このドロオトメ、メッチャ弱いんだメ……。

「……数は多いけど」

「なんだか楽勝だね」

 と、会話している間にドロオトメたちは全滅したメ。

「これ、漢気解放する必要あったか?」

「ないな」

 うん、盛り上がったところ申し訳ないけど、その通りなんだメ……。

 闇乙女族ももう少し骨のある戦闘員を用意しろよ、と言ってやりたいメ。まぁ泥人形だから骨しかなんだけどメ。

「よし、奥に進むか」

 と、余裕ぶっこいている間もなく、

「シャドロウ……」

 またドロオトメが復活していったメ。

「まだいるのかよ……」

 一体復活したかと思えばどんどん増えていき、あっという間に十体以上になってしまったメ。再生力だけは無駄にあるんだメ……。

「だったら僕に任せて!」

 翼は弓を構えて、しっかり手に力を込めた。すると弓に番えられていた矢が十本ほどに一気に増えていったメ。

 これは……。

「オトメリッサ・乱れアロー!」

 なんかやたら雑な技名を叫ぶと同時に、弓から矢が数本一気に放たれたメ。

 勢いよく広範囲に放たれた矢は、ドロオトメたちを一斉に直撃し、

「シャアッ!」

「シャアッ!」

「シャアッ!」

 で、結局あっという間に復活したドロオトメたちはただの泥へと還元されていったメ。

 ボクや他のオトメリッサたちは何もすることはなく、ポカーンと見つめるだけだったメ。

「もう全部アイツ一人でいいんじゃないかな」

 メ――。

 さっきの崖を登った時の規格外な運動神経といい、本当にコイツは何者なんだメ……。

「それじゃあ、気を取り直して……」

「なによぉ、さっきから騒がしいわねぇ」

 ――あ、この声は。

 砂埃が舞う向こう側から声が聞こえたかと思うと、誰かが現れたメ。

「まさか……」

「メ……」

 赤いネグリジェにカーラーを巻いた頭、そして……、顔には抹茶色のパックを塗りたくっている女が現れたメ。一瞬誰だか分からなかったけど、これは間違いなく――、

「る、ルビラ?」

「……オトメリッサ?」

 あ、うん……。なんかすみませんメ。

 いつになく気の抜けた声で現れて、いかにも日常風景と言わんばかりの姿を見てボクらは呆気に取られたメ。

 しばらくお互いに見つめ合って沈黙が続いたメ。この空気、本当にどうしてくれるんだメ……。

「ちょっと待っててね」

 そう言ってルビラは奥へと引っ込んで行ったメ。

 それから数分間、ボクらが待っていると――、

「ふふふふ、まさかこんなに早く来るなんてねぇ。飛んで火にいる夏の虫という奴かしら?」

 いつものドレスに身を纏い、髪もメイクもしっかり施してきたルビラが悪辣な台詞と共に現れたメ。無理矢理の軌道修正、流石プロの悪の組織だメ。

 ていうか、今回ばかりは本当にすみませんメ。

「ふっ、俺たちはいちいち待っていられるほど気が長くねぇんだよ!」

「ここで会ったがなんとやら、だ! 岡田を解放しろ!」

 お前らはちったぁ反省しろメ!

 ルビラは困惑する気配も見せず、こちらを睨みつけて不敵な笑みをこぼしているメ。

「ここに侵入したということは、あのドロオトメたちを倒したということかしら?」

「え、あれゴミじゃなかったの?」

 ――翼ぇ。

 淡々と容赦ない台詞を吐く奴メ。

「ま、まぁあれぐらいは突破出来て当然よね。ところで、あのバリアはどうやって突破したのかしら?」

「いや、上の入り口から入ったんだが」

「あ、換気の為に開けておいたあそこのことね……。不覚だったわ」

 前言撤回。

 ルビラ……、もう少しやるもんだと思ったけど、なんか詰めの甘さがどんどん露呈していくメ。

「そういうわけだ。年貢の納め時だぜ、覚悟しろ!」

「なるほど、大した奴らだわ。でもね……」

 そう言ってルビラが指をパチン、と鳴らすと、背後から誰かまたやってきたメ。

 二人? いや、一人はドロオトメだけど、そいつに引っ張られるように連れて来られたのは……、

「は、放せッ!」

 両腕を縄のようなもので縛られ、苦い顔をしながら歩かされてきたのは、あの攫われた生徒――岡田だったメ。

「お、岡田!」

「ふふふふふ、予定とは違った形になってしまったけどね」

 そう言って、ルビラは岡田にそっと近付いていったメ。

「な、何をするつもりだ!」

「本当は明日、あなたたちの前で絶望を味わわせてあげようと思ったのだけどね……」

「や、やめろ……」

 引きつった顔と共に、岡田は首をのけ反らせるメ。

 だけどルビラはそんなのを気にする様子もなく、彼の首筋に指を当て、何やらくすぐったメ。間もなく、その箇所に黒い印のようなものが浮かび上がってきたメ。

 これは、まさか……。

「ぐ、あああああああああッ!」

 岡田が苦悶の表情で顔を硬直させていくと、その首の印から何やら黒いもやのようなものが湧き出てきたメ。

「おかだああああああああああッ!」

「おい、一体何をした!?」

「今に分かるわよ、ふふふふふ……」

 ルビラの高笑いが段々激しくなっていくメ。

 黒い靄は段々岡田の身体全体に広がっていくメ。あれやこれやという間にその靄は彼の全身を包み込み、まるで影人間のように変貌させていったメ。

「ああああああああああッ!」

 岡田の苦悶の声は段々強くなっていくメ。それと同時に、どこか甲高くなっていく……。

 靄の形が段々変わっていくメ。先ほどまで岡田と同じ形だったのが、丸く柔らかな、そう、女性のようなシルエットに……。

「まさか、てめぇ!」

 そして、その靄が一瞬にして晴れたかと思うと――、

「……う、うぅぅぅぅ」

 岡田の姿は影も形も無くなっていったメ。

 その代わりに、そこにいたのは女性……、だけど、手には黒い羽が生え、服はこれまた白と黒のハイレグ状のものになっており、そして白い髪と鋭い目つきという、普通の人間とは違った形になってしまったメ。

 これは、そう。まるで闇乙女みたいに……。

「さぁ、新たな闇乙女族の誕生を祝いましょう。ねぇ、“ホークアクジョ”!」

 ルビラが高らかにその名を言うと、


 バサッ!


 勢い良く羽を広げた岡田……、いや、“ホークアクジョ”が、こちらを睨みつけてきたメ。


「はい、ルビラ様……」

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