第2話 「黄金井爪はマジでワケが分からない」
ちきしょう、ワケが分かんねぇ――。
マジで今日はなんて日だ。
最近この辺のシマを荒らしてる汁なんちゃらって連中をシメようとしたら、いきなりピンクの髪のクソガキが見学とか抜かしてやってきやがった。それだけならまぁいい。そこからサツが来て、変な赤いドレスの女が来て、オマケにシメにはトラと人がごっちゃになったような怪人まで出てきやがる――。次から次へ、変な奴らのオンパレードというわけだ。
そして、そのドレスの女とトラの怪人女は、汁なんちゃらの半数(とサツの片割れ)をあっという間に女に変えてしまった。
――で、だ。
このままじゃ埒が明かないと思って、この女どもをシメるしかない、と思って俺は戦うことに決めた。
そうしたら、このピンクの髪のガキが「僕も戦うッ!」とか抜かして前に出てきた。
そして、またもや誰かが出てきた。良く見えなかったがソイツは「それを着けて『オトメリッサチャージ、レディーゴーッ!』と叫んで!」と俺らにブレスレットみたいなものを投げて渡してきた。
そんで、もうどうにでもなれ、という気持ちで言うとおりにしたら――、
「未来への翼、オトメリッサ・ウィング!」
「悪を切り裂く爪、オトメリッサ・クロー!」
変な光に包まれて、気が付いたら何か叫んでいた。
てか、身体の感触がなんか、変な気が……。
「な、なんだあああぁぁぁぁぁぁぁッ⁉」
「なんか身体柔らかくなってる? 髪も伸びてるみたい?」
俺ははっとなってピンクの髪のガキのほうを見た……、が、何か様子がおかしい。
アイツはさっきまで男だった……よな? 隣にいたガキは髪が腰のあたりまで伸びていて、学ランもセーラー服みたいなワンピースにヒラヒラしたフリルが着いているようなものに変わっていた。顔はアイツの面影を残してはいるが、なんていうか、可愛い――。
ていうか、そういう俺も――。
下を見たが、胸、でかくなってね? ていうか、なんか黄色い短い服に……ヘソまで出てるし。で、更に下は……スカートに、スパッツ?
「変身完了だメ!」
なんだなんだ――。
なんか上空から白いふわふわした塊が降りた来た。
クリクリした黒い目と、白い翼、そして小さな手みたいなものも着いている。その手には掌大のコンパクトを抱え込んでいる。
そのコンパクトを広げて、俺たちに姿を見せてきた――。
「は?」
俺は声を失った。セパレート状に分かれた黄色い服からは腹、いやヘソが出ている。そして見た通り、これまた黄色と橙色のスカートからスパッツがはみ出ている。そして、妙に髪の毛がゴワゴワするかと思ったら、自慢の短い金髪が伸びている上に二つに結ばれている。これはどこからどう見ても……
「俺も、女に、なってやがる……」
あはは、と俺はもう笑うしかなかった。
「すっごいな、なんか変身してる!」
コイツはコイツで、能天気すぎて腹が立つ。この現状を「変身」の二文字で済ませられる精神はどうなっていやがんだ。
――で、ついでに。
「お前、何?」
この何の脈略もなく出てきて、平然とふわふわ浮いている生き物(?)は何なんだ?
「ボクはメパーだメ! 君たちのサポートをするためにやってきたメ!」
正直気持ち悪い。語尾が地味に腹立つ。
――が、その怒りはコイツにぶつけるべきじゃないな。
「ナンダ……お前……」
「ふんッ! 女には用はないわよッ! やっておしまい、タイガーアクジョ!」
やべ、アイツら俺らの姿を見て目の色変えてきやがった!
「チッ、やるっきゃねぇか!」
「でも……、どうやって?」
……そりゃそうなるよな。俺ら、今女だし。変な恰好しているし。
少しまごついていると、メパーとかいう変な生き物が、
「漢気を解放するメ!」
また訳の分からないことをほざいてきやがった。さっきから漢気って言葉を何度聞いたことか。
と、また俺が戸惑っていると、
「漢気解放ッ!」
ピンク髪のガキが叫んだ。いや、叫んだところでどうなるんだよ。
……と、思ったのも束の間、奴の右手のあたりが光りだした。何かが集中するかのようにそこに光が形作っていく。と思った矢先、その光は消えた。
そこにあったのは、弓のようなもの。いや、弓だ。黄土色の小型の弓が奴の右手に出来上がってくる。
「これは……」
「それは君の漢気“
「うん、分かった!」
いや、何が分かっただよ。ただ叫んだだけじゃねぇか!
奴は左手に弓を構える。矢はどうした、と言いたいところだったが、奴が弦を引くと羽根のような形の矢が桃色の光を放ちながらそこに現れた。
「いけえッ!」
奴が矢を放つと、直線状に軌道を描いて相手のところに撃たれる。物凄い音と共に当たった箇所が土煙を挙げ、衝撃波が俺たちのほうにまで飛んでくる。
「や、やったか……」
「ぐ、マダマダッ!」
衝撃をもろともせず、上空へとトラ女は舞い上がり、鋭い爪を俺らの方へと振りかざしてきた。
「あぁッ! しゃーねぇなッ! 漢気解放ッ!」
俺も同じように叫んでみた。
すると、俺の両手も同じように光を放ち始めた。その光は粒となり、何か形作っていく。しばらくするとそれは王家の貴族が使いそうな剣が二本、俺の両手に握られていた。
「へっ、女々しいものがくるかと思ったら、得物はなかなかかっけぇじゃねぇかッ!」
俄然面白くなってきた。俺はニヤリと笑みを浮かべる。
――来る!
トラの怪人は俺に覆いかぶさるように右手の爪を大きく振りかざしてきた。が、俺はそれを左の剣で遮る。なかなか力は強い。が、俺も負けじと剣でそれを弾き返した。
今度は左の爪で凪払ってきた。今度は背後に避けて、そのまま脚で地面を蹴って奴の方に再度近付いた。
「ぐっ!」
右の剣で奴の腕を斬りつけるが、堅い爪で弾き返された。
――なんだこれ、すげぇ。
喧嘩は強いほうだと自負していたが、その身体の軽さは今までの自分とはわけが違う。ジェットコースターでも味わったことのない全身で空気を割くような感触に、俺はどこか心躍った。
「凄い、僕も負けてられないッ!」
そう言ってピンクの髪のガキはふっとほくそ笑んだ。なんだ、女々しそうな顔していた癖に、コイツはどこか俺らと同じくらい……、いや、俺以上にこの戦いを楽しんでいないか?
「余所見スルナッ!」
トラ女がまたもや素早い動きで爪で斬りつけてきた。俺はそれを両手の剣で何度も弾き返していく。
畜生、これじゃあ埒があかねぇ。なんとか隙を作って攻撃しないと……。
――しゃーねぇな。
「オイ、背中だッ‼ 背中を狙えッ‼」
俺はピンクの髪のガキに大声で命令した。
癪に障るが、コイツに任せるしかない――。
「うん、分かった」
「それなら漢気を更に解放するメ!」
メバーとかいう生き物がそう叫ぶと、
「オッケーッ! 漢気、大解放ッ!」
――なんだ?
ピンクの髪のガキが叫んだ瞬間、コイツの背中から何か生えてきた。
これは……、羽根?
背中から白鳥か何かを思い出させるような大きな翼を生やしてきた。
「すっごーいッ! これなら……」
と言って、コイツは上空へと飛び立った。ふさ、ふさ、とこそばゆい羽音を立てながら、自由自在に空中を旋回していく。
「コシャクナ……」
「なるほどな……。だったら俺も、漢気、大解放ッ!」
と、俺も叫んでみる。
……。
特に変化した様子はない。
「だあああぁぁぁぁぁぁッ! 俺はなんもないのかよおおおおおおおッ!」
期待外れだった。何か凄い特殊能力でも身に着くのかと思ったが、何かが変わった気はしない。
「ハハハハ、お前の力はソノテイドカ⁉」
と、トラ女は更に素早い動きで切り裂いていく。
――が。
なんだ……。さっきより相手は本気を出したにも関わらず、動きが見切れる。いや、ゆっくり動いているように見える。
右、左、右、左……交互に切り裂く相手の爪が、まるでスローモーションになったかのように剣が動きに着いていける。いや、そうじゃない。俺の動きが、さっきより素早くなっている。そして、動体視力も上がっている。
そして――、
「見えたッ!」
相手が左手の爪を振りかざした瞬間、右の脇が一瞬だけガラ空きになる瞬間があった。
「オトメリッサ・ビーストスラッシュッ!」
俺はそこに思いっきり剣を振るった。
「グッ!」
脇腹を剣で斬りつけられ、トラ女は怯む。何度も素早く動かしていた爪もようやく止まった。
「今だッ!」
俺が叫ぶと、ピンクの髪のガキは上空から弓を構えた。
そして、矢を番え――、
「オトメリッサ・ウィングアローッ!」
大きく放った――。
「ぐ、ぐああぁあぁぁぁぁぁぁぁッ!」
トラ女のけたたましい叫びが河原中に響き渡る。矢から放たれた光と共にトラ女の身体が包まれ、そのまま静かに光の粒へと散華していった。
……やったか?
「くっ、ここは引くとするか。オトメリッサ……アンタたちの顔はしっかり覚えておくよ」
そう言ってドレスの女は空中へと飛び立ち、瞬時に消えていった。
「やったメ!
メパーが喜ぶと同時に、俺たちは力を抜いた。
それと同時に、瞬時に身体が変化した。柔らかかった身体と長い髪は慣れ親しんだ筋肉と短髪に戻り、服も元の学ランになっていた。ピンクの髪のガキも同じように元に戻っていた。
「やれやれ……、なんだったんだ」
と、ふと遠くにいた他の面々が気になって俺は視線をそちらに移した。
「あ、兄貴……。俺は戻りましたけど、兄貴は……」
「ううん、いいのよ。アナタが無事なら……」
「兄貴……、いや、姉御ッ! 俺、なんか姉御のことが……」
あれ? 女になったうちの半分くらいは戻ったみたいだが、何人かは女になったままみたいだ。
「漢気を完全に奪われた場合、例え相手を倒しても元には戻れないんだメ」
「……マジか」
ということは、あの汁なんちゃらのリーダーは完全に漢気が無くなって女になってしまったのか。これから喧嘩しようとしていた相手がこうなってしまっては、なんかやる気を無くすな。
そういえば、あの警官は――?
「……せ、先輩。男に戻れないんですか?」
「構わないわ。私はこれから女性警官として頑張っていくつもりよ」
「先輩……、あれ、おかしいな? 俺、先輩を見ているとドキドキしてしまいそうで――」
あっちも元に戻れなかったみたいだが……まぁ、いっか。
なんだかあちらはあちらで良い方向に行っているみたいだし、放っておこう。
「よくやったわ、あなたたち」
そうしていると、土手の上から誰かが呼びかけてきた。そういやこのブレスレットを渡した奴がいたっけな。すっかり忘れてた。
「誰だよ、アンタ」
俺は土手の上にいる人物を見上げた。
女性のようだが、かなりやせ細っている。黒くて長い髪に片目に眼帯をしていて、こんな街中で白衣という謎のファッションをしている。
「詳しいことはここで話すわ。メパー、例のものを渡して」
「メッ!」
そういってメパーは何かを俺らに渡してきた。これは、名刺、か?
そこには「灰神ラボ所長代理
「一週間後、そこに書かれている場所に来なさい。詳しいことはそこで話すわ」
「お、おいッ!」
「行くわよ、メパー」
「メ! それじゃあ、またメ!」
俺が呼び止める間もなく、女はどこかへ去っていってしまった。
……どうしたもんか。
とにかく、こんなことがあった以上、詳しい説明をしてもらう必要はあるな。
俺は貰った名刺をもう一度見つめなおして舌打ちした。
「さぁて、僕はこれからどうしよっかな?」
そういえば、と俺はピンクの髪のガキのほうを見た。コイツの素性は聞いてなかったな。別に興味があるわけじゃないが。
「……おめぇ、どこ中だよ」
特に意識したわけじゃないが、なんとなく俺は聞いてみた。
「どこ中? うーんと、ねぇ……」能天気そうに考え込んだ後、「記憶喪失中、かな」
「なんだよ、それ――」
俺は思わずぷっと吹き出した。
変な奴ではあるが、記憶がないのか。まぁ、コイツの記憶のことは俺にはどうすることもできないが、同じ敵を倒した仲だ。大して悪い奴でもなさそうだし、認めてやるか――。
俺は黙って拳を突き出した。
そして、ピンクの髪のガキは、
「あ、僕の名前は桃瀬翼、ね」
「黄金井爪だ。よろしくな」
お互いに自己紹介をしながら、突き出した拳を軽くぶつけ合った――。
「――というのが、一週間前に起きた出来事ね」
薄暗い地下室。
画面いっぱいに流れた、俺と翼が初めて魔法少女に変身したときの映像。
――クッッッッッッッソ、恥ずかしい。
俺は身体を蹲まらせて耳を塞いで、とにかくこの映像を見ずに済ませていた。ちらりと翼のほうを見たが、コイツは逆に目を輝かせて誇らしげに映像を見ていた。
「ていうか、いつの間に撮影なんかしていやがったッ⁉」
「あぁ、実はボクの瞳には小型カメラが仕込んであるんだメ!」
メパーがどこからかやってきて、空中で説明した。
「そういえば説明がまだだったわね。この子はメパー。見ての通りアメーバ型のサポート妖精端末兼、マスコット型ロボよ」
なんか思った以上にややこしい代物だった。見ての通りというか、これを初見で「アメーバだ」なんて思わねぇ。
「なんでアメーバなの?」
「ほらぁ、こういうマスコットに性別の設定とかしちゃうと、五月蠅い連中が『これは男女差別だ』なんてイチャモンつけてきたりするのよね。だから、この際性別という概念のないアメーバにしたわけ。多様性社会って面倒くさいわよねぇ」
灰神影子だっけか。コイツの喋り方はイチイチ腹立つ。あと多様性社会ってのがよく分からないが、多分なんか違う気がする。
「そういうことだメッ! よろしくだメ!」
イチイチツッコミを入れるのも馬鹿らしくなってきた。
そろそろ話を進めないといけないと思い、俺は顔を挙げた。
「で、あの怪人は一体なんなわけ? 何で俺らは女子に変身して戦わなければなんないの?」
「そうね……。そこから話さなければならないわね」
影子とかいう女はソファに座り込んで、神妙な面持ちになった。
「奴らは“
「ゴド、ムス?」
そういえば、ずっとその言葉を連呼していたような気がするが、一体どういうことなのだろうか。
「あくまで私たちの隠語なんだけどね。『GODMS』っていうのは、Guy Otoko Danshi Man Shinshi の頭文字を取った言葉。要するに漢気――男性のエネルギーというか、男らしさとかそんな感じのものよ」
「男に関連する単語並べて頭文字取っただけじゃねぇか!」
適当にも程がある。隠語にする意味があったのか分からないが、あまりそれ以上ツッコむのはやめておこう。
「で、どういう原理かは知らないけど、奴らは漢気を吸い取ってはそれをエネルギーにして生きているの。奴らの所為で大昔、数多の人類の種族が子孫を残せずに滅んでいったわ」
「……気が遠くなる話だな」
俺の代わりに眼鏡の兄ちゃんがツッコミを入れた。情報量も多すぎるから適度に他の人にツッコんでもらったほうが良いかもしれない。
「でもさぁ、そんな種族がいたら、人類の歴史がもっと大変なことになっていたんじゃない?」
翼が質問した。確かにあんなのがうじゃうじゃいたら世の中が大混乱だろう。
「それなのよ。実はね、彼女らはずっと封印されていたのよ。とある男好きの女神が、このままだと自分の逆ハーレム計画がどうなるんだと思って。それで勇者を遣わせてとある地下遺跡深くに、ね」
動機が不純な気はするが、その女神には割とグッジョブと言わざるを得ない。
「で、なんでそれが復活してんの? まさかその封印が解かれた、とか?」
「……そのまさかよ。つい一か月前、ある研究チームがその遺跡に入ってね。そこに闇乙女族が封印されていた石碑があったの。その封印を解いてしまってね」
――やっぱりそうか。
そんな奴らを封印していた遺跡が日本にあったのか、とか、その研究チームはアホじゃね、とか、とにかく言いたいことはたくさんあったが、最早呆れて物も言えなかった。
「それで、影子さんは闇乙女族を倒すために研究を?」
影子とかいう女は頷いて、
「実はね、その研究チームのリーダーが、私の父だったの」
「えっ……」
皆がそろって驚いた。
「封印を解いた瞬間、闇乙女族たちが溢れだしてね。その場にいた父は……」
――まさか。
そりゃそうなるよな。父親の無念を晴らすためだもんな。流石に俺も同情気味になった。
と、その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「難しいお話中失礼するわね。お茶とお菓子持ってきたわ」
お盆にティーカップとケーキを乗せて持ってきたのは、大人の女性だった。長い髪にすらっとした体系で、美人だ。
「あ、ありがとうございます……」
あまり女に見とれてしまうことはないのだが、何故か珍しく俺は見とれてしまった。
「うふふ、ではごゆっくり」
優しそうな笑顔で彼女は部屋を出ていった。
俺は紅茶を飲みながら、一旦息を落ち着けようとした。
「今のはアンタのオカンか?」
まぁ、この根暗そうな女とは似ても似つかないが――。
「あれが私の父よ」
――ぶふぉおおおおッ!
俺は飲んだ紅茶を思わず吹き出してしまった。
「ゲホッ、ゲホッ、いや、父親って……」
――まさか。
「闇乙女族に漢気を吸い取られてしまって、あんな姿になったけど、間違いなく父よ。若く見えるけど五十歳は超えているわ」
年齢はともかく、一応生きてはいるらしい。そりゃあ、まぁ、複雑な気分になるのは理解できなくもないが……。
「お父さん、辛そうには見えないですけど……」
「結構女性としての人生楽しんでいるわ。母と女同士でお出かけしたり、最近じゃ女性専用のフィットネスジムに通い始めたりもしているし」
……同情して損したな。
重い話が来るかと思いきや、重さのかけらもなかった。正直これ以上話を聞くのもダルくなってきた。
「でもこのままだと、父みたいな被害者がもっと増える可能性があるわッ! そうなったら、ジューンニーズのライブはどうなるの⁉ 最推しの一宮くんとか、二番目の森高くんとかに魔の手が伸びたらと思うと……」
――そういう理由か。
これまで話を聞いた時間を返せ。そして、そんな下らない戦いに俺らを巻き込んだことを謝罪しやがれ。
……と、言いたいところだったが、
「大丈夫ッ! 僕たちが、絶対闇乙女族を全滅させてみせるよ!」
翼が誇らしげに返事をした。
空気読め、お前は。こんなアホみたいな戦いをまだ続けるつもりか?
「ありがとう。私もこのブレスレットの研究をした甲斐があったわ」
「いや、お前、魔法少女なら女にやらせたほうが……」
「魔法の源は漢気が最適だという研究結果が出たのよ。それを豊富に有しているのは男性、その中でも特にあなたたちだと判明したわけ。で、それを解放しちゃうと一時的に女の子になっちゃうのはまぁ仕方がないけど。そういうわけだから協力して頂戴」
特に悪びれる気配もなく言い放ちやがった。
迷惑すぎる……、が、この間のあの状況もあったし、また奴らがやってこないとは言い切れない。しゃーない、ここまできたら戦うしかないか。
俺は深いため息を吐いた後、紅茶を飲み干した。
「じゃあ次は、あなたの話にいくわね」
そういって影子は眼鏡の兄ちゃんのほうを見た。
「うっ、俺のも見るのか……」
「当然よ。そのためにここに皆を集めたんだから」
眼鏡の兄ちゃんは頭を抱えた。おおう、気持ちは痛いほど分かる――。
「さて、ではあなたの話にいくわ。オトメリッサ・マリン、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます