第6話
「シェリー、何処へ行っていたんだ? まさか、国境の町に行っていたんじゃあるまいな?」
カルロスは不機嫌な様子で外出から戻ったシェリーに尋ねた。
「お父様……。そうですわ、国境の町に行ってきました。特に変わったことはありませんでした」
カルロスは、ため息を着いた。
「シェリーは自立しているのは良いが、活動的すぎる。敵がいたらどうするんだ?」
「そのときは逃げますわ」
シェリーは飄々とした表情で言った。
「後は、お仕事中のはずのアルバート様とすれ違いました。」
「なんだって? ……何か言われたか?」
「女性を連れて視察旅行だと浮かれていらっしゃいました。婚約破棄のことは秘密にしてくれともおっしゃってましたわ」
カルロスは怒りを通り越して、あきれ顔で言った。
「なんと面の皮の厚い奴だ……。シェリーを嫁がせなくて良かった」
「他に、何か連絡はあるか?」
シェリーは少し考えた後、付け足すように言った。
「あの、お金を持っていなかったので、トラモンタ国の錬金術師のジルという方に食事代をお借りしました」
「なんだって!?」
カルロスの動揺する様を見て、シェリーは慌てた。
「あの、何か問題がありまして?」
「ジルはトラモンタ国の王宮錬金術師だぞ? 変わり者で有名だが」
「まあ、そうでしたの」
シェリーはジルの姿を思い出した。そういえば、身なりも振る舞いも洗練されていた。
「少額かもしれんが、トラモンタ国に借りを作るわけには行かない。すぐに使いの者をやり、ジルに感謝と返金をしに行こう」
カルロスの言葉にシェリーは焦った。ジルと会ったのは飲み屋だったからだ。
「一人でいけますわ、お父様」
「それはいけない。国の問題になるかも知れないのだぞ? シェリー」
こうしてシェリーは、父親と一緒に日を改めてトラモンタ国を訪問することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます