第3話 出会いの空気

——えぇ? また死んだ? やばすぎじゃない?……て、やっべ。SP設定してないし! スキル使ったら、そりゃ消えるわな……。

……おまけしとくか……バレなきゃセーフ……!


女神は言った。

セーフじゃないし。バレてるし。


おれ、また死んだ。

またしても、おれは空気だった。


牢屋みたいな部屋の中。

目の前には、光るウィンドウが浮かんでいた。

部屋の中には、ひとりの少女が座っていた。


^^^^^^^^^^^^^^

名前 : 未設定◁

種族 : 空気

Lv. : 2  (Exp. 35/300)

SP : 100/100

スキル : 収縮 拡散 【未選択: 1 ▼】

^^^^^^^^^^^^^^


SP……か。

想像するに、MPみたいなものかなあ。

スキル【未選択】って、なんか選ぶの?


……って。

ん? 少女?


何も無かった部屋の中心に椅子が置かれ、金髪の少女が座っていた。

背筋を伸ばし、膝の上に行儀良く手を重ねている。


リアル金髪美少女だ。

目は閉じている。

寝てるのかな。

耳が長くて尖ってる。

もしや、エル……


「——っ、くせものっ!!」


一瞬だった。

白い閃光のような軌跡。

何が起こったか分からないままに、おれの気体からだは切り裂かれた。


おれの目の前——目は無いけど——には、繊細な指に握られた美しい刀身。輝く剣を振り抜いた、少女の姿がそこにはあった。


きれい、だな……って、あっ、あっ……。


あっ……また、死んだ……?


いや……あれ? なんか。

切れて……ない!


(……そういえば、おれ、空気でした。)


「手応えが、ない……。気のせいでしょうか……?」


言いながら剣を鞘へと納める。

草葉を揺らす涼風のような声だった。


(「気のせいじゃないよ……! 俺だよ、おれおれ……。」)


近づいて呼びかけてみようと思ったけど、そういえば切られたばかりだった。


少女はふたたび椅子に座って目を閉じた。


部屋の隅。

おれは床に座ることすらできそうにない。

お尻が浮いちゃうから。

無いけど……尻……。


こうして、おれと少女の奇妙な共同生活が始まった。

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