勘づかれたらダメ

 依子とは別のクラスなので、途中で別れ自分の教室に入る。


「おはようさーん」

  

 クラスメイトたちに適当に挨拶を済ませ、自分の席を目指す。その途中、友達の1人に止められ、


「おう透矢おはよう! なんか今日いい事あった?」

「うぇ!? なななんで?」

 

 まさか、依子とシたことがバレ——


「いや、気まぐれ。毎日がいい事あった方がいいだろ! ナッハッハッ!!」


 呑気な友達をぶん殴りたくなったが、ホッと胸を撫で下す方が先だった。


 てか、ビビり過ぎだよな俺。シたことなんて2人以外知らないし、バレる要素もないし。


 少し軽口を叩き、席に着く。

 

 ふぅ、暑い暑い……いよいよ夏がくるかぁー。


 冷房の効いた教室。だんだんと、身体が涼しくなる。


 窓際の席なので青空を見ながらぼーと思い出す。



『ひゃん! 奥……は……』


 俺の動きに合わせて依子から可愛らしい声が漏れる。

 恥ずかしいのか、依子は自分の顔を見せないように両手で隠している。


「顔、見せてよ」

「ぅん……今は、無理……だし」


 両腕の間から赤面した肌が見える。つまり、恥ずかしいから見せられない。


 それは反則すぎだろ……。


 さきほどまで責めていた依子が、俺のモノでよがりながら真っ赤になった顔を恥ずかしそうに隠している。


 いつもの生意気な態度とのギャップが、たまらなく可愛く、愛おしく見えた。 


 こうなると、意地でも表情が見たくなる。


「なん、で……速く、すんの……」


 腰の動きを一気に速め、依子の中を思いっきり擦り上げる。


「はぅ、んん!」


 そして余裕がなくなったタイミングを見計らって、依子の顔を隠す両腕を引っぺがす。

 その下には、気持ち良さそうに、嬉しそうに、甘えるように、悶えるように、快楽を貪るメスの顔が隠されていた。


 両腕を剥がれた事に気づいた依子の顔が、一気に赤みを増す。


「い、今はダメって言ったじゃん……ばかっ……最悪っ……」


 依子は半泣きになって再び顔を隠すが、俺はますます興奮して——

 


「いてっ!」


 突如頭に激痛。その方を向くと先ほど別れたはずの依子が立っていた。


「凄いだらしない顔になってる」

「……すんません」


 そのまま教室を連れ出され、階段を降りたところで、


「勘づかれたらダメだからね」

「な、何をだ?」

「アタシたちが、シたこと」

「……そりゃもちろん」


 バレたら色々と面倒そうだからな。

 今のうち、対策を……


「でも、アタシはバレてもいいかも……。だって困るのは透矢だけだし」

「お前は一体どっちの味方なんだよ……」






「お前、その傷どうしたんだ?」

「あ?」


 次の授業は体育だ。体育に着替えるべく、更衣室でシャツを脱いだのだが、友達の1人がそう指摘してきた。


「後ろの首下に2本くらい赤い線がついてるぞ」

「引っ掻き傷じゃね?」


 ぞろぞろと俺の背中に集まってきた。


 背中に傷? 覚えがない……あっ。

 一つだけ覚えがするなら……


『痛いなら背中とかにしがみついとけよ……』

『っ……ふっ……』


 多分、あの時。いれた時……。


「ね、猫とかがかいたんじゃね?」

「いや、お前んち猫いねーじゃん」


 チッ、こういう時だけ鋭い奴め……。


「実は昨日、うちに従姉妹が来てさ。その時に飼ってる猫も連れてきたかわけよ」

「あーなるほど。ペットと一時でも離れたくないとかあるもんな」

「あと、家にお留守番させるのとか可哀想〜とか」


 ここは納得してくれるんだな。鋭いのか、鈍いのが紛らわしい奴らめっ。


「てっきり俺はヤッたのかと思ったわ、ナッハッハッ!!」

 

 朝、俺に「いい事あった?」と言った友達がまた、そんな事を言う。


「ないない。だって透矢彼女作らないんだぜ?」

「もしヤってたのなら……透矢にセフレ

がいるって事じゃん」

「透矢はそんな事しないよなー」


 だから鋭いのか鈍いのかどっちだよ!!


「……はは、んなことしねぇよ! ほら、さっさと行くぞ!」


 友達を急かし、話題を逸らす。


 背中に依子がつけた引っ掻き傷……かぁ。

 別に嫌な気持ちがするわけではない。

 ある意味、男の勲章のようなものだ。


「……早く答えを出さないと、待ってる側はしんどいよな……」

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