女友達と3回もシてしまったのなら

「そ、そりゃのキスすればですね……」


 その部分を手で隠す。


 間違いなく今の俺は、依子を異性として見てしまっている。

 

 下半身に力が入るのがすぐに分かってしまった。勃起がばれたら軽蔑されるかもしれない。


 さりげなく距離を取ろうとする。


 だが、依子の顔は艶かしいものになり、色っぽい声で、


「ねぇ透矢……しよ?」

「っ!?」


 さらにのしかかってきた。

 何をするかと思えば、俺のズボンのベルトを外し、ビリっとゴムの袋を破く。 

 

 止められない。


 知らない親友の顔に、行動に動転してしまって、魅力されて……目が離せない。


「じゃあ……シちゃおっか?」


 そして俺は——シてしまった。




 

「私たち、本当にこれからどうする……?」

「それは……」


 頭を悩ませる。


 親友のままでといえば、シて終わりのセフレ状態。かと言って、シったから好きです、付き合おうと流されて言うのも違うし……。


 お風呂に入ったから、少しは冷静な答えが出せると思ったが……全然ダメだった。


 あああああ、わかんねえよぉぉぉ!!


 

「透矢?」

「待って! もうすぐ答えを出す! あと30秒……いや、1分! …… 86400秒」

「最後だと1日終わるし」

「うぅ……」

 

 本当にどうすりゃあいいんだ、俺たちの関係……。


「ふーん、アタシとの関係、そんなに真剣に悩んでくれてるんだ」

「当たり前だろっ。女友達と3回もシてしまったのだから。それに依子が俺の事、好きって言ってくれて……嬉しかったし……」

「……ふーん」


 俺は頭の中がいっぱいいっぱいになり、ガシガシと頭をかく。


 尻目に映る依子がちょっと笑ったのは気のせいだろうか。


「ねぇ、透矢」

「……な、なんだ依子。今、頭が過去一痛いのだが」

「アタシたちってこのままだと親友のままだよね」

「ま、まぁ……このままだと……」

「でも、その親友もとい、女友達と3回もシてしまった」

「そ、そうですね……3回……」

「いつも隣にいる友達、ズっ友、未来永劫親友同士……このままだとそうだった道から今、外れようとしている」

「ま、まぁそうだな……」


 親友のままでいても、シたという事実は変わらないし……いずれにしても、変わらぬ親友ではいられない。


 少しの間があく。

 そして……依子が言う。


「じゃあ……そのままアタシで悩んでよ、鈍感」

「っ!?」


 依子は今まで見たことない感じの強気の笑みを浮かべた。

 

「これも透矢が鈍感で、アタシを焦らして焦らしまくったせいだから。透矢がお風呂に入っている間、ちょっと考えたの。で、無理矢理今日、答えを出さなくてもいいかなーって考えに至った。だって今の透矢はアタシの事で頭がいっぱい。……それって、アタシとしては凄く嬉しいから。好きな人の頭の中独占できるの、嬉しい」


 いい終わり、次は小悪魔のような笑み。

 俺はまた目を奪われ、黙ることしかできなかった。


「だから今日の話はこれで終わりにしよう。これからもよろしくね、親友くん♪」

 




 ミーン、ミーン。


 セミの鳴き声が鳴り響く。山道の中を下校のバスが通っていく。


 日差しが降りそそぐ道路上。依子と歩いていた。昨日のことは何もなかったように、驚くほどいつも通りに。


「今日も暑いね」

「そうだな。いつまでこんな状態が続くんだか」


 夏手前のなり、制服も夏服に衣替え。


 依子も半そでの白いセーラー服からのぞく腕に、うっすら汗をかいていた。


「もうすぐで夏休み……夏といえばプール。水着買わないと」

「いつものじゃダメなのか?」

「せっかくの夏だし、もっと良いのが着たい」

「良いのね……」


 そうなると、もっと上品なの……黒ビキニとかかな? 


 ふと、依子のビキニ姿が鮮明に、脳内に出てしまった。


 依子の巨乳がビキニによって露出する。ただでさえセーラーの上からでも、主張してるのに。……ビキニになったらもっと凄いんだろうな。


『ふぁ、ちょっ……胸ばかり触んなし。全く……男ってほんとおっぱい好きだよね……』


 そしてその胸を俺は、背後から揉んで――


「透矢?」

「は、はい!」


 浮かんだ妄想をなんとか振り払った。

 これじゃ年中性欲魔じゃねぇか。


「新しいの買うんだけど、来週あたりついてきてくれる?」


 一瞬いいよと言いかけるが、変な妄想が頭をかすめる。


「いや、その……」

「なに、用事でもあんの?」

「ないけどさ……」


 依子の新しい水着選び。もしかして、俺の意見とか取り入れて、試着したり……。


「アタシの水着選ぶの嫌……? それとも……また裸の方が見たい?」

「ばっ!?」


 驚き、距離を取ると依子は揶揄うようにクスクスと手を当てて笑う。


「いやだなぁ、透矢は。プールで全裸とかただの痴女じゃないか」

「誰もプールで全裸になれとは言ってないだろっ! たく、揶揄いやがって……。いいぜ、水着買うの付き合う」

「お、ありがとう〜」

「依子が他の男に痴女扱いされないといけらないから、ちゃんとしたのを選ばないとなぁ」

「そうだねー、よろしく頼むよー」


 答えが出せないままではいるが、俺たちの距離はやはり、前よりも近くなったのかもしれない。

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