遅効性の毒

骨皮ガリオ

遅効性の毒

遅効性の毒


思い返せば恥と後悔が多い人生でした。

身を粉にして働く両親の溢れんばかりの愛を浴びながら、それに甘え、何処までも堕落した日々を暮らしてました。

我慢強い姉に家事を押し付けては、自分は部屋に篭もり友人とゲームをする日々を暮らしてました。

家族や友人には口だけの将来の夢を語って応援されるだけされて満足する嘘を吐くような日々を暮らしてました。

何時だって自分が楽しければいい、という短絡的な考えで日々を暮らしては貴重な時間を浪費してました。

何もせず、ただただ流されるだけの人生を送り、現状に対しての不満を周囲にぶつけながら自分は頑張っているのに、と盲目的な人生を送っていました。

寝る前に自分の現状や親の会話を聞いては、なんて自分は愚か者なんだろう。と自己嫌悪をしながら目を瞑る日々を暮らしてました。

寝る前に、何も親孝行を出来ない木偶の坊の自分に嫌気を覚えながら心の中でずっと両親に対する謝罪をするだけの日々を暮らしてました。

自分の現状を客観的に見て将来への不安や怯えを押し殺す様に麻薬の様な液晶画面を見て感覚を鈍らせる日々を暮らしてました。

そんな日々を暮らしていてジワジワと襲い来る希死念慮に必死に目を背け、蹲りそうになった時もありました。

死にたいと願う度、親が泣く顔を思い浮かべてしまい、贅沢にも死にたくないと思ってしまう時もありました。

高齢者である父が咳をする度に何故自分は働いていないのだ、何をやっている。と呵責に苦しむ日々を暮らしてました。

一度、くも膜下出血で倒れた母が何も言わず、自分の夢を応援してくれる度に、何もやっていない自分を責めてくれ、と願う日々を暮らしてました。

そんな日々を暮らしていくうちにジワジワと、ドス黒い毒が日々を犯していき、いつ、致死量になるのか不安に思う日々を暮らしてました。

だけど、もう今日で最後です。

遺書も書きました。やり残した事やしたかった事に目を背けて、何処までも逃げてばかりだった人生を終わらせる準備も終わりました。

あとは1歩踏み出すだけです。

あぁ、何処までも、恥と後悔が多い人生でした。

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