第17話 伝説の存在
オレは今、オレの(似合っていない)豪邸に住んでいる同居人の中で『一番年下の女の子』が発した事に疑問を感じ、彼女……リルーファの主上であるグラナティスに直接聞いてみる事にした。
確かにリルーファとその姉アリーシャはエルフだ、その事は既知の事実として捉えてもらいたい、それにエルフと言う種属の特性―――エルフと言えば数千年単位を生き永らえる“長命種”として世間一般的に認識されている、(ちなみにオレは560歳でグラナティスは570歳だ)なのでリルーファはその
「実はな、先日お前のところの“プレイアデス”の一人であるリルーファから言われたんだよ。 『私って“若い”様に見えるけれど、私言うほど“若く”ないよ?』って…そこで気になってお前にこうして聞きに来ているワケなんだがなあ。」
「なるほど……それはつまり彼女の方からそう言ったのだね。」
「ああそうだけど?」
「そうか……ならば仕方ないかな。」
やはり、こいつは知っていた、彼女達に関わる秘密を…しかしその秘密は到底オレには受け入れられないものだった。
では―――なにが彼女達に関わる秘密なのか、それは……
「その前に―――今更だが復習と行こうか。 なあオプシダン、この世界に存在する“エルフ種”の総てを言ってみろ。」
「はあ?そんなん―――『ダーク・エルフ』に『森エルフ』、珍しい処では『ハーフ・エルフ』……って言った処か?」
「それで―――君は総てだと?」
「ああ……そう―――じゃないのか?」
この世界で認知されている“エルフ種”とは先程オレが言ったモノで合っている―――そう思っていた、しかし正確にはそれは違っていたのだ。 とは言えその3種が最もポピュラーだったため、“レア”モノの事は知らなかったのだ。
結論から言うとグラナティスは“総て”のエルフ種を知っていた、それはまあエルフ種ばかりを集めた自分の親衛隊を作るほどだからなあ……とは言え“レア”モノは相当貴重だったのだ。
「ああ違うよ、とは言ってもその種は大変珍しくてね、私でさえ現存するものだとは思わなかった。」
「“現存”?だ、と??それはつまり―――」
「そう言う事だ。 君も伝承の古書や創作物などでその名称くらいは聞いた事はあるだろう、そう……『ノーブル・エルフ』の事を。」
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『ノーブル・エルフ』とは、伝説によって語り継がれている『精霊』の血の流れを汲む者達だ、その伝説によれば彼らは永遠に近い寿命を持っているとされている―――その真偽の程は定かではないが、彼女達が私の下を訪れた際、彼女達の来歴を聞いて耳を疑ったものだ。
「初めまして―――私がこの地域一帯を治めるグラナティス公爵だ。 君達は?」
「私は、アリーシャ…1500歳になる。」
「私は……リルーファ1200歳。」
……ん?私の聞き間違いだったかな? いやいやその
「はは……は、お、大人を
「別に
そこで私は1500年前の出来事とかを聞いてみた。 すると…………
当たっていたんだよ、これが……それも
* * * * * * * * * * *
「え゛っ?と言う事は何か??お前と彼女達が会った時でさえその年齢差……って事は―――」
「そうだ、あれから300年は経っている。 まあ私が『プレイアデス』を新設しようとしたのも、言ったら彼女達をカムフラージュする為でもあったんだ。」
「(300……って事は―――)軽く見積もっても1800歳と1500歳……オレ達より年上じゃねえかあ!!」
「そう言う事だ…それに彼女達も言ったら“女性”だからな、年齢に関しては難しい年頃なのだろうな。」
それでかあぁ~~~それであの時、リルーファは実年齢に対して“若く”見られてることに嬉しそうな表情を……スマン!若造が偉そうなことを言ってしまって!!
とまあ一応オレの中で疑問としていた事は晴れたのだが……この先彼女達になんて声を掛ければいいのかオレは判らない。
今まで通り呼び捨てはいけないだろうし、かと言って急に“さん”や“様”を付けだしたら周りに怪しまれるだろうしなあ~~~それに“ちゃん”などは
「ダーンさん。」
「(うひゃあ?!)ああっ……こ、これはリルーファしゃま!?ナ、ナニ用でごじゃいましょう……」(手モミ)
「(…)その反応ーーーそっか、領主様に聞いて知っちゃったんだね。」
「い、いやまあーーーその~~~しっかし、なんだね?全然年齢感じさせないって言うか……」
「キャハハ!けど驚いたでしょ? いいかぁ~い?エルフは見かけによらないんだぞ~う?」
とてもオレの倍以上生きてきたとは思えない、張りや色艶のある“若い”声…うーーーんなんだか560歳で老け込むオレがバカみたいだ、それにそれだけ生きてきたからだろうか、知識も経験も豊富にあるんだろうなあ~~~まあ中にはロクでもないのも(『小悪魔的』なモノとか)あるみたいだが……
「そこがまた新たなる悩みというか……これからオレ、リルーファ様?さん??達にどう接していいか判らん。」
「いいよ、そんなこと気にしなくたって、これまで通り呼び捨てでいいじゃん。 そこは姉ちゃんも変わらないと思うよ。 それにさ、急に格式ばった呼び方されて姉ちゃんならビックリするだろね。」
「そうか……そう言う事なら―――」
「あっ、それからさ、私と姉ちゃんが『ノーブル・エルフ』だって事、他の皆に話しちゃダメだからね?」
「ん?それってやっぱり―――」
「そ……長年伝説でしか語り継がれていなかった存在が、ある日突然実際にいたのでした―――ってなったらさ、その内ここも大騒ぎになって来ると思うよ?特にダンさんはゆったりのんびりしたいんでしょ?だったら尚更だと思うけどなあーーー」
痛い処を衝いてくるなあーーーこう言うのって長年蓄積されてきた経験がモノを言うのか……それともグラナティスのヤツの悪影響を受けたからなのか……その辺もまたミステリアスな一件だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しかし―――とは言え……いくら秘密にしていようが、
ここはオプシダンやグラナティス―――魔王達と対立しているヒューマン達の領域。 そしてヒューマン達を統括しているのは亜神族……
「(ふうーーーむ、オプ様の気を惹く為に計画したのが悉く失敗するとはあ~~~)この世は妾の思い通りにいかぬものよ……」
「どうしたんだい、エメトセルク。」
「(…)ファムフリートか―――いやちょっと…な。」
「もしかすると前の戦勝で獲得したモノが不満だとでも?」
「不満―――ではないが~~~あんなみみっちぃモノを貰ってもなあ?」
「贅沢をいうものだねえ?君にとっては“みみっちぃ”モノかもしれないが、それまで領有していたカーマイン候にしてみれば痛手だったと思うよ?」
「それがみみっちぃのだ! 妾の目的は魔王達の領地に隣接する総ての国家に侵攻命令を出し、やがて休戦協定なりを提案して来る際にオプシダンを交渉の場に出させる!それでしか休戦の約定は結ばぬし聞く耳も持たん。 そしてあやつの前でこう言ってやるのだ…『今回は妾の勝ちだな。 そして認めよ、そちより妾の方が優れているのだ。 それが判ったのなら潔く妾の“伴侶”となるがいい!』と、な。♡」
うーーーん…判っちゃいたけど、不器用だなあ―――不器用すぎるよ、ボクらの事実上のトップの人。 しかも戦争を起こした理由もこんなにも下らないモノだっただなんて―――現場である戦場で傷つき、或いは逝ってしまった者達にはなんとも申し訳ないと言うべきか……
とまあ、今回の侵攻騒ぎは概ね彼女―――エメトセルクの慾望によって引き起こされたのだと言っていい。 ああ因みにボクの名は『ファムフリート』―――エメトセルクを補佐する者の1人だ、そうした事もあるからエメトセルクの相談(政略面・軍略面)にも乗るし、エメトセルクが出来ない事を“肩代わり”してやっている―――そうした役どころだ。
“その内”の一つ―――カーマイン候領で召し抱えている鬼“姫”の始末を主導したのもボクだ。 金銭によって動く者を使い、どうにか鬼“姫”の唯一の泣き所と言っていいある存在の事を知り、鬼“姫”の郷里を襲わせてその存在を
これで準備場万全―――万が一にも失敗する様な事はない……そう思っていたのに、この結果もご存知の通り、ボクの肝入りだった計略は失敗に終わり、その事によって足が着かないように例のオーガの始末をお願いしておいた。
それにしても……魔王への認識を改めないといけないかな、それもオプシダンとやらの……
このボクが知っている彼の事と言えば、300年務めた魔王職を自ら辞任し、その後は楽隠居するのだと言う。 そこまでは、まあ割りと『よくある話し』としてもだ……なにより気に入らないのは、彼がエメトセルクの意中の人物だと言う事だ。 エメトセルクからの話しによれば、彼は『学校』の同期生で、片や『亜神族クラス』の常に首席……片や『魔王族クラス』の、初回の考査でまぐれの首席を取ったもののその後は鳴かず飛ばず―――だったような者が、なぜか卒業の折には全クラスを含めた上での総合首席を取ったのだと言う。
まあエメトセルクは『自分より優秀な者はいない』と思っていた節もあったみたいだし、その事実を思い知った時非常にショックだった事だったろう。 しかし―――『自分より優秀な者はいない』と思い込んでいた節もあり、次第に自分より優秀だったオプシダンに恋心を寄せてしまうなんてえぇえ~~~!
まあとは言えエメトセルク自身が恋していると言う事実を認識できていない―――と言う事がこの件を一層ややこしくしているのだ。 突き詰めて言ってしまえば“優性遺伝”を考えている節もある為、彼との子を成してしまえば一過性のモノで済んでしまうものだと、そう願っているのだ。
そうしたボクの懊悩としている時に、更なる一報が舞い込んで来た……
「(……)ふうんーーーなるほど、なら今度はこれで行くか……。」(ニヤリ)
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くううぅっ……正直言って私は悔しいですっ―――オプシダン様と一緒にお風呂に入ったリルーファもそうですが、やはり私の
ご自分の配下プレイアデスの一人の不祥事と言う事に
正直に申し上げるとカーマイン候やオプシダン様が言っていた事と寸分違っていなかったから悔しいのですよう!! 同じ女性の私であったとしても、思わず息を呑み込まざるを得なくなるような肌の張りにその色艶、何より特筆すべきはあの怪しからんモノ(2つ)です!! 私もオーガの中では結構ある方だと思ったのですが、それが何なんですかあの方のは! “脂肪の暴力”とでも言えばいいのでしょうか?それとも“要塞”とでも言ってしまってもいいのでしょうか…思わず対抗心を燃やして“押し付け”あったりしましたが、驚異の弾力性のお蔭で跳ね飛ばされてしまうのですよねえぇ~~~それでつい頭にキちゃって“ペチペチ”と叩いたり“ポコポコ”殴ったりしましたけど、所詮は徒労と言うもの……最終的には揉みしだいてやろうと思いましたがその内オプシダン様がのぼせてしまって―――あのあとは安静を理由にリルーファからやんわりと看護を断られたものでしたが、どう見ても私の負け―――ですよねえ~~~…。
それにあの一件があってからと言うものは、それはもう私とグラナティス公との間は険悪……喩え通り“犬猿の仲”と言っても差し支えありませんでした。
けれどそれも……思えばあの出来事が無ければ、私だけがそう思えてしまっていたのです。
* * * * * * * * * * *
それはある日の出来事―――珍しく私とリルーファが季節の旬の食材を採取していた時の出来事でした。
“その時”を狙っていたのです―――狙われていたのです、それもこの世界の古来から存在している“ある集団”……そしてこの時の
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