第16話 同居人のお悩み相談聞いています。(もしかすると甘いですか? いいえ大甘です)

現在の処『まさに今そこにある危機』の状態は継続している―――それに大体今回の事は疲れたオレの心身を癒す為に『風呂に入る』との事だったのだが……そこを目聡いリルーファに見つかってしまい、まあこの娘はあの4人の中でも一番若いから―――と油断していた嫌いはあったのだ。 そんなこんなで“特例”として一緒にお風呂に入るのを許可したものだったが、なんとこの娘『筋肉』に対して大変造詣が深く、男女分け隔てなく“理想的な筋肉”を追い求めていただけ―――だったのだったが……


オレとリルーファが一緒に風呂に入っている―――そうした事実をどこで嗅ぎ付けてきたのやら、その肉体の発育に関してはオレも認めざるをないグラナティスと、これからの発育が非常に楽しみな発展途上のサツキさん―――この2人がよりにもよって“全裸”で対峙してしまっている。


ああ勿論オレの弁解の為に、まだ両目の布は覆ったままですよ?確かに両目は塞がっているのでどう言う状況かは肉眼では見えていない……見えてはいない―――がしかし!なぜかオレの脳内では補完されてしまっているのだ!!

ううむ……これも最近手を出し始めた、想像を掻き立たせ易い読み物の所為だろうか、いやあ~~~それにしてもイロイロ限界だあぁぁ~~~~


       * * * * * * * * * * *


そんな話しとは打って変わって―――現在私は同居人であるキサラギの悩みを聞いている。 場所は少し小洒落た喫茶店―――内装や客に供出する『カップ』や『スプーン』『フォーク』等は言うに及ばず、その店の“メイン”と言っても差し支えの無い『コーヒー』や『ティー』『ケーキ』等バツグンのセンスを感じさせるこの都市のトレンドの最先端を行っていると過言ではない店舗だ。


だが―――客である私達のココロは……“曇天”だった。


まず私はこうなるまでにずっと妹のリルーファに付きっきりだった、妹の方も私を頼りにしてくれていた、だからこそ可愛いと思うようになり、それは周りから見たら妹を甘やかす姉だと、そう捉えられてもおかしくなかった―――のは否めなくない。 斯く言う私もそれに満足していたし、なによりリルーファも満更ではなかった―――そう思っていたのに……何故か最近リルーファの対応が冷たく感じる……時には傍らにいるのにまるで“いない”かのように接されているのだ、まあ……その要因の1人が目の前にいるわけなのだが―――


「貴重な時間を割いて貰って申し訳ない、実は…お前の妹であるリルーファの事なのだが。」


私の妹のリルーファは重度の『(筋)肉フェチ』娘だ、まあ私とリルーファとは300年も年が離れているのだが、妹が生まれてこの方ずっと私が面倒を見てきた事もあり、いつも私に付かず離れず……要は私のしてきた事をずっとその眼に焼き付けさせてきたのだ。 それに私はエルフ種としては珍しく身体を鍛えるのが好きだったため、筋肉質だったことは否めない、それにリルーファも私の事を慕っていた……つまり、リルーファが筋肉好きなのは私の所為でもあるのだ。


だが―――だ・が、である


つい半年以上前にオーガ達と知り合ってからと言うものは、なぜかリルーファの目は私ではなく目の前の“剣”鬼に釘付けに゛い゛っ!! たっ……確かに悔しいが、認めざるを得ないと言った処か…だってオーガだもんなあ~~~素地というか素材が違うよなあ~~~~しかもリルーファの好みは『腹筋』……私も割れているのは割れているのだが―――なんなんだ、キサラギのは……まるで『板チョコ』ではないか??“8つ”に割れているなんて……


しかし、異常な事態は静かに訪れているのだった―――


今回は、私の妹のリルーファに関する苦情を相談する為にと、キサラギの提案に乗っかったわけなのだが…気を落ち着かせるために頼んでおいた『ティー』がキサラギの下に運ばれた時、私は“常識”と言うものを一瞬でも疑ってしまったのだ。


なぜなら


「あの風呂場での一件がどうにも頭から離れなくてなあぁ~~~実は今でも背後の物陰から私の事を伺っているのではないか―――と思ってしまっている。」


言いたい事は、言っている事は、判る。 判る……にしても―――「あのーーーキサラギ?さすがにそれは入れ過ぎなのでは……」

「うん?そうか??」

何故自分の常識を疑っているのか―――と言う表情をしてくれているが……それは絶対入れ過ぎだろう!!

実はこの時、キサラギは『ティー』の“甘さ”を調整する為に『角砂糖』を入れていた、まあ私も“甘さ”を調整する為に幾つか(とは言っても普通は1個か2個だよな?)入れる事はある、そこはまあ否定するわけではないが……それと参考に―――なのだが、『シュガーポッド』には当然のように『角砂糖』が入っている、つまり―――だな、私が何を言いたいのかと言うと……


『シュガーポッド』に入っている『角砂糖』全部(30個)を、入れたぁああ?

「なんだか……虫歯になりそうだな。」

「うん?そんな心配は無用だ、私は朝起きた時と夜寝る前に必ず磨く性分なのでな、それに……この“甘さ”落ち着く―――お前もそうは思わないか、アリーシャ。」


“甘いものは別腹”という考え方があったように思ったが……流石にその考えには賛同できないな、寧ろ甘過ぎて胸焼けしてこないか?しかしそんな私の心配をよそにキサラギはその喫茶店のスイーツメニューを全制覇してしまった。


「いやあ~~悩みが出来た時は誰かに話すのと、甘味を腹一杯に召す事が至福の瞬間と言えるな!」

「しかし~~~あんなに糖分を摂取しても太らないものなのか?」

「うん?なるわけがないだろう。 何しろ体を動かすには糖分は必要!特に激しい運動や戦闘行為を終わらせた後での摂取は幸福の極みと言った処か~」


なるほど―――理解が追い付かん! しかしそれにしても、オーガだけに私達エルフと身体の構造が違うのだろうな、脂肪に糖分の燃焼効率が良さそうだ。

しかしこれではキサラギのお悩み解決にはなっていない、と言うよりそのままでいたらリルーファの纏わりつきの頻度は高くなってしまう事に気付かない……のかな?


「時に、なあーーーキサラギ……私は思うのだがお前のそうした生活を改善してるのも一つの手……」

「よし次はあそこへ行こう!!」


まぁだ喰う気だったんかあ~~~―――い!


        * * * * * * * * * * *


「依然こちらの現場は両雄共々睨み合っている状況です―――現場のリルーファです。」


なにをやっているんだ―――等と言う野暮な事は言うまい、そう、まだグラナティスとサツキさんの睨みあいは続いていた、しかもその様子を面白おかしくリルーファが実況しようと…「て言うかナニコレ!大体リルーファはそんな事実況してどうしようって言うの??!」

「しかし絶景ですなあ~~~私もイイモン持ってるって思ってたんですけどーーーさすがに領主様には敵わないしぃ~~~と思っていたら思わぬ伏兵が! こうしてみるとサツキも負けずも劣らじというかあ~~~」(ニュフフフ)

「絶っっ対面白がってるだろ、お前―――」

「おおーーーっとそう言ってる間に戦局が動いたああ!なんと両雄互いに“押し付け”あっています!しかしこれではサツキ選手に分が悪いかあ?領主様を見ていると逆に余裕の表情を浮かべています!!」

オ、オオオオオレの話しを聞けえ~~~! オレの両目が塞がっている事をいい事に、この『小悪魔』なエルフっ娘は実に好き放題やりたい放題なことを述べてオレの“暴発”を誘発してきやがるしぃぃぃ!

ただ一つ“良心”があると言うならば、このオレの両目を塞いでいる“薄っぺらい布”だ、この布が外れればあぁぁ……パァァラダァァイスは目の前に―――いやいや待て待て、冷静になれオレ!ここは耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍びの精神で逝かねばぁぁぁっ!


「おおぉぉ……す、凄い!今更ながら私、驚嘆しております!サツキよりは年上とは言え領主様のが弾む弾む!一方のサツキは領主様の弾力に攻めあぐねているようです!!」


っく!リルーファめ……何故そんな具体的に実況出来るんだあっ!いやまあ判っていますよ?実際観てるのはリルーファだけだし……いやしかしなあ、なにも具体的ではなくてもいいのではないのか?なにも具体的では……


「ああっとここで、思わずサツキの方から手が出てしまったあーーー!しかし思っていたほど領主様にはダメージを与えられていない模様~~~!まあそりゃ当然ですよね~~~ーーー領主様のって遍く衝撃を吸収してしまいますからね~~~」


な、何をしてくれてるんだサツキさん!!オレには2人の攻防戦は見れていないが、脳内での補完―――“妄想”と言うヤツで『見れていないのに見れてしまっている』という不可思議な現象が起こってしまっている。 そう、そこでは2人の美女が、全裸でせめぎ合っているのだぁぁぁ!オレももう少し若けりゃ理性の崩壊の准ずるままに“偽善”と言う名の薄っぺらい布を払い除けていた事だろう。 だがもう、オレは若くはない……そうしたエロい行為を直視するのは身が持たないのだ、ただ――――…



ただ―――我慢のし過ぎは良くなかった。 風呂場の熱気と、妄想の暴走による熱によってのぼせてしまったのだ。 そして気が付いてみた時には―――オレは……


「あれぇ~~~リルーファ?」


「ダンさんて我慢強いんですね~~~普通の男子だったら理性弾けちゃって薄っぺらい布を取っちゃうもんなんですけど。」

「(……)オレ、そうした事を平気で言ってのけれるリルーファの将来が怖いわ…。」

「(…)へえ~~~私の事をそんなにまで心配してくれてるなんて―――少しは私の事を“女性”として意識してきました?」

「またそう言う事を言ってーーー大人を揶揄からかうもんじゃないよ。」


リルーファに『膝枕』をされていました。 それにしてもいいよなあ~~~いいもんだ、若い娘の太腿は。 “若さ”ゆえの特性と言うべきか、弾力があるんだよなあ~~~以前グラナティスのヤツに膝枕してもらった事があったが、あの時とは全然違うもんなあ~~~ーーー


しかし、である


「あの……さ、ダンさん。 ダンさんから見た私って“若い”様に見えるけれど、私言うほど“若く”ないよ?」

「ん?けどそれってリルフィがエルフだから―――って事じゃないのか?それにオレもエルフの種属的な特徴くらい知っているからな、けど…リルーファがそう言うからには……違うのか?」

「うん、“ちょっと”―――ね…」


以前からも言っているように、リルーファはあの豪邸の同居人の中では一番の年下だ、しかしそれはリルーファ達の種属エルフ種の事も勘案しての事だったのだが、どうやらそれも彼女にしてみれば違うらしい、しかもリルーファからの説明はそれ以上なかったのだ。


        * * * * * * * * * *


それにああいう事を言われてしまっては気になって来ると言うモノで、ある折に暇を見つけてグラナティスに事の次第を含めて聞いてみる事にしたのだ。


「忙しいのに呼びつけたりしてすまんな。」

「別に構わないよ、私としては。 しかし君からの急な呼び出しに私は優越感を感じざるを得ない!!この事を知ったらサツキやヴィリロスなどはさぞや悔しがることだろう~~」

「そういうとこだぞ、お前に悪い虫でさえ寄り付かなくなったのは。」

「いやしかしだなあ~~~ヴィリロスのヤツはともかくとして、サツキは中々の強敵なのだぞ、そこを言ってしまえば君からの受けが非常にいい、だから私も本気を出さないと……」

「まあ、サツキさんには正直助かっているし頼りにしている処もある。 オレがまだ現職だった時には政務の繁忙はんぼうかまけて“家事”などはお座成ざなりだったからなあ~そこへ行くとサツキさんは“家事”の達人と言うべきか―――」

「くううっ!そこへ行くと逆に私の至らなさが恨めしいっ!自慢ではないが私も政務や発明・開発をする事に手一杯で実際の処“家事”は使用人に任せっきりな処があるのだ。」


なるほどなあーーーこいつもこいつでオレと似たような悩み……「って、違あーーーう!オレが今日お前を呼びつけたのは、そんな事を話し合う為じゃなーーーい!」

「おお、そうだったな……それで、本題はどう言った事なのだ?」


そしてこの後オレは、衝撃の事実を知ってしまうのだった。




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