第9話 “魔”が“堕”ちる時

今回のひと騒動の“裏”で『亜神族』の暗躍を嗅ぎ付けたオレは、恐らくはその策略の延長線上で巻き込まれたものと思われた“一人”、元はカーマインの軍の“総司令官”にして鬼“姫”とあざなされたサツキさんに事の次第を聞く事にした。

「んーーーと、最初に言っておくけど本来オレは“こうした事”をオレ自身から聞くつもりはない、けれど…今回の一件が単なるヒューマンによる侵略行為じゃなかったら別の話しになる。」

「(!!)オプシダン様は―――その事を判ってて……」

「いや、オレも今しがたこいつらから聞き出して知ったばかりだからね、そう―――君達カーマイン候領はただ単にヒューマンから侵略されたわけじゃない、その裏で糸(意図)をして操ってた輩がいたって事だ。 それに……あのカーマインのヤツご自慢の“姫”と“剣”が、こうも容易く折られるなんて―――思ってもいなかっただけの話しさ。」


嗚呼―――この方は……この方こそは、なにもかもを存じていらっしゃる……だからこそカーマイン候は私達2人を戦場から落ち延びさせる際に…


『窮状を頼るならオプシダンの処へ行け―――なに、ヤツなら詳しく事情を話さなくともその内知り……そしてヤツ自ら動く事になるだろうて。』


全く―――その通りでした……その通りになりました、そして頼るべきは誰なのか―――誤ってはいませんでした。 だからこそ言おうと思います―――この先は恥も外聞もありませんものね…

「そこまで存知上げていると言うのならお話しいたしましょう……私やキサラギが敗れてしまった経緯を。」


        * * * * * * * * * *


あの日私達は、またいつものようにブリガンティアが戦争を仕掛けてきたものと思い込み、またいつものように迎撃態勢を整えて出陣いたしました。 それにさきに放っていた斥候からの報告により、またいつものような陣容に陣形―――そこに捉われ、私は迎撃する為の陣形で対処することにしたのです。

ただ一つ―――今回の防衛戦がと違っていた点が……それが、ヒューマンの国ブリガンティアが侵攻して来る僅か3日前、私達の集落が襲われ私と同年代の者が攫われたと言う事くらいでしょうか。

しかし、そこで―――『くらい』と収めさせてはいけなかったのです、それというのも……


それはそうと、防衛戦の方は実に順調そのもので、あと半刻もあれば敵軍は損耗率の激しさにより撤退を余儀なくされる処でした―――なのに……

「敵陣からたった一騎で私達が詰める本営に乗り込んで来た『勇者』に、私達は驚きを禁じ得ませんでした。 そう……その防衛戦が始まる3日前に、私達の集落から攫われた“ヤヨイ”が、私達の敵として立ちはだかったのです!!」

「ん?何だって?サツキさんやキサラギと同郷……って事はオーガだよね?けれど、どうして―――ブリガンティアって言やあ『ヒューマン第一主義』にして多種属に対しては排他的を貫いていたと思ったんだけど…」

「さすがはオプシダン様―――そう、その通りです、ですから私もキサラギも、どうしてヤヨイがブリガンティア軍に混ざって……いえ、ブリガンティアの『勇者』の一人として!私達の前にはだかったのか……それが判らなくて―――」


そういう事か……この事情を聴くに恐らくその子とは仲が好かったんだろうなぁ。 その事で親友に対して刃を向け難くなった、そんな混乱している最中でもこの子は撤退の判断をした―――優秀だ……確かに優秀なんだが、戦争ってものはそんなに生易しいモノじゃない、その事が教訓になってくれたと思えば、でかい拾いモンをしたと思って―――

しかし妙と言えば妙だ、サツキさんも言っていたようにブリガンティアはヒューマン第一でほかは……と言うより魔族に対しては排他的で有名だ、それが―――オーガの集落から攫ってきたとて『勇者』……

「(ん?)なあサツキさん、一つ聞くけどそのヤヨイって子の頭に角はあったか。」

「(―――!)そう言えば……無かったような!? えっ…でもどうして―――」


なるほどなあ―――ちょっとずつだか視えて来たぜ……

「サツキさんやキサラギには悪いが、ブリガンティア独自の技術でオーガの角を取り除いて隷属させる―――ってのを聞いた事があってな。」

「そ、そんな?!!で……ではヤヨイの角は――――」

ああ……十中八九だが、もうない―――そして角を失ったのを機に敵の認識をすり替えた可能性も出てきた、全くエゲつない事をしやがる―――けれどもう一つ判らないのはブリガンティアはそうまでしてカーマインの領土の一部を欲しがったんだ?

けれどまあ、これでサツキさん達がオレの領内にいたってことの説明がついた、とは言え……参ったなあーーー第一そんな事情を知ったからとてこの子の無念を晴らしてやるわけにも行かないし……だって今のオレ、もう魔王じゃないしい?心情としてはなんとかしてやりたいけれどもーーーヒューマン達と事を構える(要は戦争する)って、意外に面倒臭いんだよね。

とは言えまあ、初対面からずっとこの方抑えていたモノを吐露できたからか、少しばかりサツキさんの表情が晴れやかになったのはいい事だ―――


「ところであのぉぅ~~~私の方からも少しばかり聞いていいですか?」

「うん?なんだい―――」

「先程からオプシダン様は、私の事を“さん”づけで呼んでいますよね?曲がりなりにもオプシダン様と私との関係は、“主”と“従”との関係だと思ったのですが……そんな私に対しての不釣合いな敬称を使うのはどうしてなのでしょう?」

そこ、来ましたかあーーー来ちゃいましたかあーーーーいや、でもどうしよう?ある折に迫力満点の雰囲気直視させられて、『怖かったからです』って言っちゃったら……今のこの好い雰囲気ぶち壊しだろうしなあーーーなので、この後のオレの“弁解”のスキルが爆上がりしたのは言うまでもない。


        ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


オレ達が暮らしている大陸―――その殆どは快適な温度と湿度に保たれているが、“暑い”時は暑いし、“寒い”時は寒い…これは魔王族であろうが亜神族であろうが、我慢できないものは我慢できないのだ。 特にここ最近“寒暖”差の激しさと言ったらないもので、“暑い”時の対処法としては自力(人力)であおいだり、少し標高の高い山間の冷たぁいせせらぎを求めたり、果ては海へと駆け出して大海原を背景に泳いだり―――波に乗ったりと様々あるのだが…“寒い”時の対処法と言うヤツが見つからない―――思いつかない、そう壊滅的なまでに…まあ敢えて言うなら“焚き火”をしたりだとか―――けれどこれは屋内では危険なので屋外でする必要がある、それに誰が好き好んで寒風吹き荒ぶ中、おおんもへと出なきゃならんのだ。 それを言うならもう一つ、寒い時と言えば“雪”なのだが……オレにはどうにもその“雪”や“氷”を求めてまで遊びたい―――と主張するヤツ等の気が知れない。


「ねえオプシダン様、お一つ私からのお願いを聞いて頂きたいのですが。」

「んーーーどしたの、サツキさん。」

「あのですね、“寒波将軍”が到来した事によってこの一帯の山や池、更には湖などが一面の銀世界となっているのです、ですから一緒に“滑ったり”など致しません?」

「…………ウン、絶対ヤダ―――」

いましたよ……ここに、いやしかしそれを言い出したりすんのがなんでサツキさんなんだよぉーーー彼女ってば普段日頃から大人しいし、セットになっている“剣”鬼のキサラギみたいにアグレッシヴじゃないから、そんな事言ったりするなんて思ってもみなかったのにぃぃ~~~

しかも―――で、ある。


「え~~~~どしてですかあ?行きましょうよう一緒に。(上目遣い) そこで手とり足とり……あらっ、つい本音が。」(ぽ♡)


この子ーーー行く末が恐ろしくなるほどに優秀だわ。(皮肉) オレみたいな男でも籠絡おとし方―――ってのを心得てらっさると言うか……て言うかあの野郎ーーーカーマインのヤツめ、一番教えたらいかん子になんちゅうものを習得させとんのんじゃ。

しかし全くそう言うのに耐性を持っていなかったオレは、サツキさんの言うがまま為すがまま、“滑り”を愉しむ場へと連れてこらされたのである。


「お、サツキがオプシダン殿を連れてきたようだぞ。」

「な、っ―――ほ、本当に連れてきてしまうとは……それにしても一体どんな手口を使ったのだ?」

「だあーから言ったじゃない、分の悪い賭けをするもんじゃないって。」


「(ん~?)皆してどうしてこんな処に? いやそれよりもリルーファ、今お前なんて言ったの?“賭け”??」

「はい―――サツキちゃんがオプシダンさん連れて“来るか”“来れないか”を対象としたもので、賭けに勝った者はその日一日オプシダンさんを自由に出来るって代物です、ああ因みに“勝者”はサツキちゃんで、“敗者”はアリーシャさん、私とキサラギさんはオブザーバーですね。」

えーーーと、何なんだろうこの子……淡泊に説明してくれているけど、何でオレが不健全な賭けの対象―――つうより景品なの?? いや、しかし……それより問題なのは…

「あのぉーーーさ、割と何もないように進行しちゃってるみたいだけど、なんでオレの意志がそこに入ってないのぉ?オレはねえ、寒いの苦手なの!それをなんでわざわざ寒い処に出てまで動き回らなきゃいけない訳ぇ?なんかさあ……もうちょっと暖かくなる方法考えようよ、例えばほらあーーー“温泉”とか?」

「まああ、そちらの方が建設的でしたよね?!そんな事にも気が回らないなんてーーー私のバカバカバカ!それに、一緒にお背中の流し合いをすると言うのもロマン……ですよねえ~~」(ぽ♡♡)

「ちょおっと待ったあーーー!その件に関しては物言いを!! ならば私は賭けのやり直しを要求する!!!」

「望むところですよ、アリーシャさん……何度でも賭けをしようが、勝つのはこの私なのですから!!」(ギラギラ)

ええーーーっと…コレって一体何が始まっちゃったと言うの? サツキさんもアリーシャも互いの闘気を“バチバチ”言わせちゃってるしーーーけれど……だね、オレとしては、どちらかといえば……事の推移を見つめる二つの冷たい視線(キサラギとリルーファですね)の方が―――痛えぇぇ~~~…

しかしまあ来ちゃったものは仕様がない、満喫するしかないか―――ところがこれが悪かった、先程宣言した事もありオレは“寒がり”なのだ、鼻の頭が赤くなったり、耳の先が痛くなったり―――指先をかじかませるほどに冷たぁ~い雪や氷を素手で触るなんてふざけているとしか言いようがない、そこへ行くと―――言い出しっぺのサツキさんや他の3人娘の、なんとまあーーー元気だ事、皆からして“キャッキャウフフ”とはしゃいじゃってまあ~~~……いいよねえーーー若いって、けれどね、オレは若かった頃でもそんな事はせんよ、だって寒いの苦手だもん、でもいいのさ―――嬉しそうに、元気に“庭駆けまわる”わんこみたいな子達を視てるだけで…


「キャッハハハ!ダンさんスキありぃ~~」

「やりおったなあ~~~リルーファ!物思いに耽っている老人に、いきなり雪爆弾ぶつけて何が楽しいか!!危うく心臓発作起こすとこだったんだぞおぅ!?」

「何言ってるんだか、オプシさんて言うほど老けちゃいないでしょうに、でも折角―――身体動かせる機会出来たんだから……さっ!思いっ切り動かさないと本当に老けちゃうよっ。」


この4人娘の中では最年少のリルーファにそんな事を言われてしまった、この子はいつもは他の3人より(オレとは)距離を取っていて“静観”を決め込んでいるものだと思ってたのに―――結構“グイグイ”くるよなぁ。

―――とまあ、思わなかった処で思う存分雪と氷と戯れてしまったオレ達は(精一杯の皮肉のつもりか?)寒さに震え凍える身体を寄せ合って不釣合いな豪邸いえへと戻ってきた。(精一杯の皮肉のつもりの様である)

今回の言い出しっぺであるサツキさんや、オレを揶揄からかうのにはしゃいでいたリルーファ、更にはサツキさんに負けじと張り合っていたアリーシャ、寒い時こそ鍛錬の機会などと訳の分からない事を言っていたキサラギ―――皆して歯を“ガチガチ”鳴らし、鼻水を“ズルズル”と啜り、身体を“ガタガタ”“ブルブル”と震わせている、ホレ見た事か、寒い時にはおおんもへ出て遊びまわるもんじゃないっての!


だが、しかし―――で、ある。


オレ達がおおんもへと出掛けて不釣合いな豪邸いえへと戻ってきた時、出掛ける前にはなかったものがリビングにはあったのだ。 その外見みかけは机―――どうやら『団欒机』のようだ……しかもおあつらえ向きに布団がかけられている?

なんんんーーーーーだこれ、すごおぉぉぉーーーーく、イヤあぁ~~~~な予感しかしないのはオレだけであろうか。 しかも、この4人娘の中では割と慎重派と見られていた―――


「へっへへ~~~私一番乗りぃーーーほわぁぁ……冷えた身体に堪えるぅぅ~~~」

「なるほどぉーーーこれが“例”の……」

「(ん?)どう言う事かな?君達……コレの事何だか知ってるって感じだよね??」

エルフの姉妹が何の警戒心もなくその“団欒机”の中へと入り、“暖”を取り始めたのである、しかもこの時さもタイミングを見計らったかのように―――

「おや、皆戻ってきたみたいだね。」

「(ん?ん??)グラナティス―――どうしてお前がここにいる?!」

「ご挨拶じゃないか、オプシダン。 何故私が君の豪邸いえにいるのか―――それはもう既に君も判っている事だろう。」

「なんだか、凄く悪い予感しかしないんだが……」

「はっはっは、そう褒めてくれなくてもいいのだよ。 何しろ君の最大の弱点を克服させる世紀の大発明が完成したのだからね!今回はそのお披露目をする為に彼女達に協力を申し出た次第なのだ。」

「(褒めてなんかないわい―――)て言うよりかちょっと待て?オレの“最大の弱点”?それを“克服させる”??その為にこの子達に協力を依頼したと言うのか??? なんでまた…」

「この私とて君と伊達に300年付き合ってきたわけじゃないのだよ、君の“最大の弱点”―――それは“寒さ”だ、それを克服させるために開発を急がせたのが……この世紀の大発明とも言える“暖房器具”―――その名も『コ・ターツ』!! 君も学生の時分に私のレポートを読んで賛同をしてくれた『魔力転用理論』……それを応用したものでね、それに私達には全員『魔力』というものが備わっている…それはそのままにしておいたら外部に放出してしまっていて無駄になっているものだと私は常々思っていた、それらを解消する為に考え出したのが『魔力転用理論』なのだ。」


「りょおしゅさまのいってること、よくわかんないんですがぁぁ…このなか、わたしのまりょくをりゅうようして、すごくあたたかいんれすよぉぉ~~~ふにゃあ」


あ……リルーファが、だらけきっている……???! し、しかも言語もふにゃけてきている???! な、何が一体どうなっているんだ!!

しかし、貴重な体験を話し、あまつさえ体現までしてしまっているリルーファを皮切りに、他の3人も“我も我も”と先駆けて『コ・ターツ』なるものを求め出した……


「ほぉぉわぁぁぁーーーなんというあたたかさぁぁーーーなんだか、もぉぉぉ……ここからでたくありませぇぇぇーーーん」(ぽわぽわ)


サツキさん?あんたまでもが?? こ……これは愈々以いよいよもってまずい―――まずい気が!!


「さ……さすがだぁぁーーーりょうしゅさまぁぁ……もお、わたしは、だれがなんといおうと、ここでいっしょうをおえるのだはぁぁぁ~~~~」(ほわわん)


アリーシャ?お前それを言ったらいかんぞ?それを言ったらおしまいだぞ??それにそんな事で死んだとしてもお前の骨なんか拾ってやらんからな?!


「“むじょう”ーーーこのよのむじょうなるはあざなえるなわのごとしか……すまん、おぷしだんどのわたしはみかんとおちゃをしょもうするぅぅーーー」(ほわほわほわぁぁ~)


キサラギぃぃ~~~お前と言うヤツは今わの際の言葉さえもワケ分からんことを言ってえーーーそれになんだと?ミカンにお茶?むむう―――なんだか妙に絵になる絵面だな、まさか……キサラギ―――お前『コ・ターツ』の達人なのか??(色々混乱してて正常な判断が出来なくなったようである)

何と言う……何と言う代物だ、にも恐ろしきは鬼“姫”や“剣”鬼、更には“プレイアデス”の2人までも堕落だらけさせられる程の魔なる魅力と言った処か……ここでオレはどうするべきなのだ、このコ・ターツにまだ入っていないのはグラナティスとオレだけだ、ただ……オレが思うのにオーガやエルフの娘達が揃いも揃って堕落だらけ切っている処に、魔王族であるオレ達までもが倣ってしまうなんてぇぇ~~~


「オプシダン、では私達も遠慮しないで入るとしようではないか。」


お前が先に屈してどうするんじゃあーーーい!し、しかも四辺に一人づつの構成を、無理くり一辺二人にさせて……一辺そこをオレとお前ぇ??

「ふふふ、もっと褒めてくれてもいいのだぞ?君の弱点は学生の頃より知っている―――寒さ厳しい中、当時はこんな暖房の設備なんて整っていなかったものなあ?そんな中、寒さに弱い君は寒さの前に屈してしまい寮に立て篭もってしまった次第だ、あの時は大変だったよ~~~嫌がる君を無理くり寮から連れ出すのに苦労したものだよねえ。」

「う…うう~~~仕方がないじゃないか、だってオレ寒いの苦手なんだもん―――」

「だから、私がひとつ骨を折ってやったのだ、もう少し感謝してくれてもよかろうではないのか。」

「(……)それはそうとだな、しかしなんでこの日なんだ。」

「なに、簡単な事さこれの完成の目途が立ったのでね、そこで……気は引けていたのだがサツキにご協力頂いたまでなのさ。」

「な、なんだと?サツキさん??―――が、またなんで……どうして?」

「ここの処寒い日が続きましたでしょう?その所為なのかオプシダン様は自分の部屋に引き篭もり全く動かないご様子……これではオプシダン様の健康を害するものだろうと思っていた処に―――本当に不本意でしたけれどもグラナティス公からこの話しを頂きまして……」

ええ~~~っとぉ……結局さ、この2人仲が好いの?悪いの?“好い”割にはお互いに『気は引けてる』だの『不本意』だのと仰ってるようですけどね、“悪い”割には協力して事に当たる―――って…

「まあ、言うなれば私達の利害関係は完全に一致した、だからお互いに気に喰わないのはこの際祭壇に祀り上げる事にしておいて―――」

「これで晴れて寒さが苦手であるオプシダン様も外に出ないで済む―――そして行く行くは~~~」


「「私ともっと関係を温め合おう―――ではないかぁ~♡/ではありませんかぁ~♡」」


それはまさしく恐るべき発明品だった――― 一見すると一辺が60cm四方の団欒机に6人が寄り添い合って集っている、一辺が60cm四方しかないものだからそりゃあもう中は“ぎゅうぎゅう”詰めだ、どれが誰の足やら判ったものではない、しかしそれでも皆誰もが不平不満を漏らさず、誰が誰の足に触れ合った処で怒る者なんて誰一人としていない。

おかしい……おかしいぞ?こんな雰囲気になるとは、魔王を辞めたオレは当初としてはこんな事になるなんて思いもよらなかった!!

いや……しかし…………そんな気さえも払拭してしまえるコ・ターツの魔なる魅力……“プレイアデス”の一人アリーシャが言っていたように『ここでいっしょうをおえて』しまうのも悪くはないと、彼女達以上に堕落だらけ切ったオレがいたものだった。



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