第2話 もしかして付き合ってます? いいえ冗談でもいいからそう言うの止めて下さい

はーーーーようやくついたかあ。 それにしてももここまで熱入れなくてもなあ……。

今オレはアマルガムと言う処に来ている。 この街は―――というか都市は、オレがまだ在任中に交流のあったと協定を交わし作った“街”……だったのだが、このオレの意図がどう伝わったのか判らないんだが今やここアマルガムはこの地域一帯の“中心”になってしまっている。 つまりだ、ここがなければ大陸各地に繋がっていく“経路みち”もなくなり、やがては“物流もののながれ”も滞ってしまい、やがて流通は完全に死に絶えてしまう―――事になってしまうのだ。 その事をあいつから言われたオレは、あいつに言われるがまま『そう言う事ならそうしよう』とか言ってしまい、ここにこうして一つの街を建造つくったんだが―――あのねえ、オレがこの街を作ろうとした目的の一つが、(魔王)引退した後の余生(ニートでスロウなライフ)過ごす為~~~だったんだけど……なんだかさあオレが思っちゃってる以上に栄えてなくない?ここ……

それにさ、あいつのこと前々から苦手だったんよなあーーーまあ気が合うって部分は否定はせんよ?大体気が合ってなかったらこんな街一緒に作ろうなんて言わないし……しかしなあ、何か一言オレに相談あっても良くない?


「ま、それとこれとは関係ねえ。 早速湖畔の別荘に行ってみようかあーーー」(ハハ…ハ)


まあ言ってみちゃなんだが、このオレにも≪先見≫のスキルは備わっている……そいつを駆使してここに街を作ろうと言う段階でオレはあいつに“ある条件”を提示して協力をする事にしてやったのだ。


        * * * * * * * * * * *


「ああ、そんな事ならお安いご用さ。 その代り―――と言っては何だがね……」 「ふふふ、まあそのくらいなら良かろう。 そう言う訳で契約は成ったな。」


この時のオレは、もう既に引退後の隠れ家的な別荘に想いを馳せさせていた―――て言うか…あれ?そう言えばあいつ何か言ってたような……

しかしそんな事は気にすらせず、着々と着工は進み―――そして完成したのがついこの前……そう、そう言う事だ、このオレの引退と合わせるかのように完成した……(と言うより完成に合わせるかのように引退したのが本音だけれどな)

フッフッフ―――総てはこの為……日々政務に追われ疲れた脳内と精神を癒す為、総ての意味に於いて安らげる場所を……場所を? 場所ぉおおおををを!!!?


「えっっ……なにこれ、どーなってるの?」


なぜこの湖畔の別荘の持ち主であるオレが、間の抜けた事を仰っているのかと言いますと―――ここはさ、引退したオレが、ココロから安らぎを求められると言う設定のもとに設計した住居スゥイート・ホームが、あるはずなのにいい?


「なんで豪邸になっとるんじゃああーーーい!」


オレが求めていたのはこんなんじゃなぁぁぁい(メソメソ) 第一豪邸なんて『魔王城』でお腹一杯なんですぅぅぅ(サメザメ) だから……だから、ここにはのんびりとくつろげる―――それこそ隠れ家的なデザイン目指してたんだけどぉぉ~~~(シクシク)

どぉあれがこんなデザイン(豪邸)にしろと言ったああ! 施工業者に文句言ってやる!!


『はいヴィオタイト工務店ですが。』

「あのねえ、グラナティス公領にある湖畔に別荘建てるように契約したもんなんだけど―――どゆこと?契約内容と全く違うんだけど。」

『ああその事でしたら担当の者と代わります。 少々お待ちください。』  『はい、代わりました。』

「ああ、オレとの契約の時担当した人ね。 あのね、これどうなってんの?オレと契約交わした時にした話しとは随分とまた違うじゃない!」

『えっ…そうですか?』

「『そうですか』―――じゃないでしょう?オレはこんな豪邸みたいなデザインにしろって一言も…」

『ですけれど―――あなた様と契約交わした後に、と名乗る方がいらっしゃいまして……』


えっ―――なにそれ、オレの代理人?いやそんなん元からいませんけどーーー

けれどオレには、この時あるモーレツに嫌な予感がしてならなかった。 オレは、オレが希望するモノが手に入れられたことで警戒が相当薄くなってしまっていたようだ。

そうだ、なぜこの時までの……グラナティスの存在を――――


「すいません、あとでまた掛け直します。」


そう言って担当の者との念話を切ったのだが―――


「おや、もう来ていたようだね。 どうだい?中々素晴らしい見映えだろう。」 「ちょっと待って?なんーーーでお前がこんな処にいるの?」

「そんな事は決まっているじゃないか。 君と私の初の共同作業によってこの大陸を掌握―――いずれはヒューマン達も私達の下に平伏ひれふせさせるためだよ。」 「(……)あのーーー何言ってるのかワケ分かんない。 オレお前に言ったよねえ?ここへ移り住む目的を。」

「ああ、最初は耳を疑ったものだよ。 私の領内ではない程でも、程なく栄えさせているというのに中途退場(要は引退)するなんて言う君の意志に。 そこで私は考察を巡らせたものだ、もしかすると君の真の意図は別にあるのではないか……とね。 だから、君との契約を結ぶ際に聞いただろう?『今後は私の事業に参画してくれるのだね』って。」


あれ?確かにーーーそう言う事……………………………………言ってたかもしんない!! ああ~~~っ、なんて事だ!オレは目先の(愉しい)事ばかりに気を取られ過ぎて、一番信用しちゃならないヤツとの契約に踏み切ってしまったのだ!!


しかも―――で、ある……


「ごめんくださぁ~い……」


         * * * * * * * * * *


私達オーガは目的地であるアマルガムに着いていた。 そこでサツキの“イザナミ”の術により、恩のある魔王族の彼の足取りを辿って行くと、間もなくして湖畔にある豪邸に辿り着いたというわけだ。 いや―――しかし……この街アマルガムも聞いていた以上に大都市で戸惑っているというのに、ある意味での“止め”がこんな豪邸だとはあ~?


「ま……まさかあの殿方、結構なご身分のある方だったんでは―――」 「い、いやそれにしては~~~あんな恰好はないだろうに…」


だが、しかし相手は魔王族である、そう言う想定をしなかった私達にも非はあると言うものか。 それに普段は滅多な事では動じないサツキが狼狽の色を隠せないでいる…とは言え当初の目的を見失ってはならないため、緊張した面持ちと声でその豪邸の門戸を叩いたものだった。


「ごめんくださぁ~い……」


おおっ!じ、実にナイスなタイミングだ来客!!おかげでこいつとの気まずい雰囲気くうきは少しばかり減退、緩和出来た。 しかし、妙と言えば妙だった…と言うのも、この住居はオレが引退した後にのーーーんびりと暮らす為にと建てた、言葉通りの『隠れ家(的)』な存在だった……ハズなのだ。 だが、オレが苦手とする最も交流があるいぢわるなヤツが豪邸に代えてくれたお蔭で、この大都市でも最も目立つ建造物になってしまっているのだ。 しかも最悪な事にこいつはオレよりも弁がつ、つまり何が言いたいのかと言うと―――


「おぉおーーーようこそ!私と彼の“ハレ”の日を祝う為に駆け付けてくれたと言うのだね。 よいともよいとも、今日と言うこの日は互いの想いが通じ合わせている者同士がその手を取り合い新たなる出立をするという門出の日だ、例え招待をしていなくとも歓迎はしようじゃないか。」

「えっ?あの……何を言っていらっしゃるんですか?あなたとこの殿方とはどう言ったご関係……」

「先程も言ったように、『互いの想いを通じ合わせている者同士』―――だけれども?」(ニヤソ)

「な゛っ……まさか、この男とそなたとは、もう既につきあっ……」

「ちょぉっと待てえ~~~い!えっ、なに?どう言ったらそう言う風に見えるのォ?」

「えっ……だって、『互いの想いを通じ合わせている者同士』―――って、そう言う意味では……」(オロオロ)


エ゛ーーーなんて言うか……このオーガのお嬢さん、発想が豊か……て言うか、飛躍しすぎてない?それに、このヤロウ……敢えてワザとややこしい解釈が出来るような説明をしてくれおって。 まあ確かに?理念が通じ合っているって言う意味では『互いの想いを通じ合わせている』って受け取られなくもないけれど、このオレとこいつとの間柄をよく知らない他人(オーガの2人)からしてみたらそう映ってしまったのか??


しかし―――で、ある。 このトラブルはこれだけに留まらず……


「お邪魔しまぁ~~~す……」


         * * * * * * * * * * *


私に備わる≪追跡≫のスキルで、怪しんでいた魔王族の男性の足跡そくせきを辿って行ったところ、私達はアマルガムにある湖畔の豪邸に辿り着いた。 ―――て言うか……この場所、私達が出国するまでは更地さらちだったはずだよねえ?それが……私達がいない間に豪邸が建っちゃっているなんて―――どうして?


「ね、姉ちゃん―――世の中には常識で計り知れないことが起こるもんなんだね…。」 「あ、ああ―――わ、私も少々驚いている。 しかしリルーファ、お前の≪追跡≫ではあの魔王族の男はここにいるんだよな?」

「そのはず―――なんだけど……姉ちゃん、私なんだか悪い予感しかしないよ。」

「偶然だな……私もだ。 しかしここで躊躇ちゅうちょしている時間も惜しい、こうなれば後は野となれ山となれだ、行くぞッ!!」


リルーファの≪追跡≫によってによって辿り着いた湖畔の豪邸―――ここは確かにリルーファも言っていたように、湖がある以外は何もない土地だったのだが、それが私達が舞い戻ってみれば、いつの間にか目を疑うかのような豪邸が建っていたのだ。 しかもリルーファが感じていた悪い予感―――元々この湖一帯はグラナティス公の直轄領でもあり、そうおいそれとこう言った物件を建てる許可も得られないと言うのに……だとすると、予測出来る事はグラナティス公が静養する施設と考えた方がいいのか?ならば新築祝いを述べるべき……ん?ちょっと待てよ??確かこの豪邸で魔王族の男の足跡そくせきが途絶えている…………?


「お邪魔しまぁ~~~す……」 「―――あっ??グラナティス公??」

「おや君達か、戻ってくるのが早かったね。」

「そ…それより?あの時の魔王族の男性―――」


え゛っ、なに、このエルフの姉妹もオレのあと尾行つけてきたっての? やったあ~~オレって意外と人気者……「って、誰がそんな事言うか~~~! て言うか何なの?このオレの自由な行動に制限掛けて何が楽しいの?!これからオレは悠々自適なニートでスロゥライフ過ごそうと思ってたのにぃ~~~」(ギリギリ)

「そ、そんな目的が??いや、と言うよりちょっと待ってくれ、そこのエルフのお前……今何て言った?グラナティス公??グラナティス公と言えば名実ともにこの大陸における『領内の領民幸福度No,1』と知られている……??」

「え??ちょ、ちょっとお待ちになって?そんな方と『互いの想いを通じ合わせている者同士』―――ってえぇぇ~~~」(オロオロオロ)

「な、なんだと?それは聞き捨てならん―――私達の領主様がこんなどこの馬の骨とも判らない男と、“付き合っている”だとおお!!」

「フフフフ……発覚バレてしまっては仕方がないな。 私と彼とは『互いの想い』――つまりは互いが見つめる先が同じだと言う事で彼の“引退”と合わせて私と彼―――オプシダン公と手を結ぶ契約を交わしたのだよ~♡」

「をいちょっと待てや、聞き捨てならんのはオレの方だ、つまり何か?グラナティス……お前まさかオレの引退を狙って!!」

「フッフッフ―――この私を差し置いて“引退”等と……どう言った気の迷いかと思っていたが君の私に対しての好意だと気付いた時、私はこれは機会だと思ったのだ。 それに機会が二度同じ扉を叩くものとは思わなかったのでね、君から“別荘”の話しを持ち掛けられた時に―――」

「こ……ここまでの策略をすでに。 けど今―――“別荘”って仰いましたよね?それにしてはこの物件……それにこの都市の立地条件―――」

「さすがはリルーファ君、読みが鋭いものだね。 まあそう言う事だ、ここが世界の中心となる―――その為の主要中継都市ハブなのだよ。 つまり言ってしまえばここが総ての起点となる―――ならばここを管理する責任者を建てないといけないよねえ~?オプシダン。」

「(ぐ…ッ)くうぅぅ~~~ッ!だからこの隠れ家が豪邸になってたんかあーーーーい!」

「(ほ。)なんだかそれを聞いて少し安心を致しました。 で、あればあなた様はこの殿方とそう言うご関係(とどのつまり“男女”)にはない―――であると言う事なのですよね。」

「(……)面白いことを言うものだね、オーガの巫女殿は。 ならば君はとどう言ったご関係をお望みであられるのかな?」

「おほほほ…どう言ったご関係―――と言うよりも、私はただオプシダン様から頂いた恩を返すのみでございますので。」


えっ、なにこの―――“修羅場”!? オレはただ、引退した後の悠々自適な『ニートでスロゥなライフ』を満喫エンジョイしたいだけなのに、なのにこの女―――グラナティスの皆を勘違いさせるような言動の所為で、オレなんでこんなにも立場を危うくしなきゃなんない訳ぇ~~?



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