第6話 放課後と草道


それから遅刻届を職員室に渡し、学校は難なく終えた。カエデからは幾度と遅刻いじりをされるもアイツなりの励ましだと捉えることにした。

放課後。夕日が空全体に差し掛かり茜色へと移り替わる。学校では部活生が目覚めたかのようにはしゃぎだし、帰宅部は一向に帰りだすのだが……

「家に帰りたくねー」

最近は流行りのVtuberでも見るためにウキウキで家に帰るのだが、今日は違う。

あの血まみれの服を見るのが怖く、草道を食いながら遠回りをしているのだ。

道草ついでに昨晩徘徊していた経路にも向かった。だが、そこには事故現場もましてや血痕もなかった。

やはりあの交通事故はリアルな夢なのだろう。あの服についたものも鼻血とかだろう。

いち早く安心するために、そう適当に理由づけていた。


「へぇー、一日で成熟したんだー」


耳にすんなり入るかのように、誰かの声がすぐ真後ろから聞こえた。

凌は驚き、とっさに後ろを振り向く。

しかし、そこには誰もいない。いや、確かに誰かいたはず。

「誰だよ!」

近隣住民に迷惑を承知で、大声で虚空に叫ぶ。しかし視界内には、その呼びかけに反応するものは誰もいない……

「どこ見てるのよ?」

声は凌の頭上から聞こえてきた。ふと空を見上げるとそこには重力という法則を無視した格好で、浮遊しながら一人の少女がこちらを見下ろしていた。

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