第4話 痛覚

過去最悪な目覚めだった。

全身の筋肉が引きちぎれたほどの苦痛、脳を絞られているような頭痛、それらからなる嗚咽と眩暈、青年は声を荒げながら布団から転げ落ちる。

一体、自分の身に何が起きたのか?

その答えを探すために、圧迫されている脳で眠る前の記憶を辿る。そして、気づく。

「俺、死んでね?」

昨晩は寝付けなく、生活必需品の買い出しと称して深夜だがコンビニに出向いていた。

深夜の雰囲気が好きな青年にとってそれはよくあることだ。

そして、記憶に刻まれたトラックとの交通事故、その瞬間的な痛み、走馬灯と自分の不運さへの怨念、そして死への恐怖。

そこまでは覚えているのだが、何故かそのあとどうなったのかが思い出せない。

「……夢?」

その言葉で無理やりにでも解決しようとしたが、今身体中に響き渡る痛みは消えない。

とりあえず、今の時刻を確認するために視線を壁掛けの時計に向ける。

時刻は十一時丁度。遅刻である。

「マジかいな……」

青年の名前は成瀬 凌(なるせ りょう)。現在17歳、高校二年生。この日初めて学校を遅刻した。


それから数分経ち、身体の痺れが引き、登校の支度をする。

異常に空かした腹を抑えて、着替えた覚えのない寝間着を脱ぐ。部屋の隅に置いてある鏡が映す姿がいつもよりがっしりとしているのは気のせいだろう。

そして、制服の掛けてあるクローゼットを開き、唖然とした。

そこには、何故か血だらけな自分の服が捨てられたように置いてあった。

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