第2話 衝突的な出会い

時刻は深夜四時を回り、街の外観は少しずつ明かりを消していった。静かに数台ほどが道路を走っている。誰もいないようで誰かがいる、そんな夜街特有の雰囲気を好むものもいるだろう。

少女は何事もなかったような表情で、そのまま帰路を進む。その時だった。

響くブレーキ音の後に、ゴンッと衝突音が鈍く鳴る。その光景は、まぎれもなく交通事故だった。

トラックの不注意で横断歩道を渡る人をはねてしまったらしい。

パニック状態だった運転手は轢いた者をあとにしてそこから走り去っていった。

明らかな轢き逃げだ。

その周りに人気は全くなく、トラックが逃げた後、少女と轢かれた者だけがその空間に取り残されていた。

死んだような静けさに、少女はなんのリアクションもなく再び帰路に歩み始めた。

「ん?」

鼻孔がくすぐられ、少女は足を止める。

クンクンと空中から漂うある臭いを嗅ぎ分けて、冷たいアスファルトの上に倒れている者のもとへ向かう。

暗闇なうえ遠くからで判断がつかなかったが、近くで見るとそれが男だとわかった。顔つきや服装から青年というべきだろう。

トラックとの衝撃で青年の関節は曲がらない方向へ折れており、口からは大量の血が流れている。ソレだ。

血の匂い。それが無関心だった少女の気を向かせた。

「へー、稀血ねぇ」

少女は口ずさみながら、舌で真っ赤な唇を湿らす。

稀血とは、名前の通り稀に見られる血中成分が黄金比の血液のこと。約百万人に一人の確率で生まれる。

それは少女らにとって極上の食糧だった。

死体の血は鮮度が落ちる、だが死にたてならばそれほど劣化していないだろう。

先ほど男二名を食した少女だったが、すぐさま食欲が湧き地面に横たわる青年の首元に、顔を、唇を、その牙を近づけ、気づく。

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