忘れていた報連相

「ただいま戻った。」


「ああ、隊長!おかえりなさいーーー!!!心配したんですよ、もう!」


「すまなかった。」



 執務室の扉を開けると、勢いよくエミリオが出迎えた。



「それでなんで呼び出されたんですか?」


「ああ、私を試験薬の被験体にするつもりだったらしい。」


「え゛。というか試作品って何ですか。僕知らないんですけど?!」



 エミリオの想定内の反応に安心しながら、リュードは試作品についても全て説明した。



「大丈夫だ。きちんと断ってきたから。」


「あああああああ、もう本当に良かったです。」



 断ったというリュードの言葉に安心して大きく息を吐いたエミリオは、少し考えて口を開いた。



「でもジェイド団長は何で隊長にそれを頼もうとしたんでしょう。今の騎士団から隊長がいなくなることの方が騎士団にとって不利益なはずなのに。」



 確かにそうだ。今、防衛隊からリュードがいなくなったところで誰が防衛隊長になるというのだろうか。エミリオにも十分その実力はあるが、実戦経験がリュードに比べて乏しい。ルペル以上に新人の育成に向いている者はいないし、その他に防衛隊長を務められそうな者はいない。

 考えづらいが、本当にリュードなら耐えらると思ったのか。それとも結果を急ぎすぎただけなのか。



「あ!そうだ、隊長宛にエレーナ様からお手紙届いてたんでした!」



「どうぞ」とエミリオから手渡された便箋にはまごうことなきヨハネ家の封がされていた。

 封を破って読みはじめると、エミリオが後ろからひょこっと覗き込んだ。



「なんて書いてあります?」


「先日のことのお礼と…。上着のことが書いてあるな。字が綺麗で読みやすい。」


「うわあ、本当にお手本みたいな字ですね。」


「明日上着を送ってくださるそうだ。」


「良かったですね!隊長!」


「ああ。」



 そう言うとエミリオもリュードも仕事に戻った。

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