不和の種
リュードが駐屯所に帰ろうとテクテクと宮殿内を歩いていると、それを後ろから呼び止める者があった。
「リュード!!」
「ルペル。」
「団長がお前のことを呼び出したって聞いてな。何か言われたか?」
「私を試作品の実験台にと提案してきた。」
「やっぱりな。」
「やっぱり?」
「最近団長がことあるごとにお前の名前を出すんだよ。あ、アイガスもか。その話も聞いてる。手紙を出すのが間に合わなくてすまなかったな。」
「いや、大丈夫だ。きちんと断った。」
「よく躱せたじゃないか。それにジェイド団長は話が上手い。危険性などを話されなければ、お前のことだから受けかねないと思ったんだが。」
「危険性については詳しい方からよく聞いていたし、それを引き受けないように頼まれたんだ。」
「詳しい方…?あーー……。待て待て、何となく分かったぞ。エレーナ様だな?」
ルペルは眉間に皺を寄せながら答えた。
「ああ。」
「エレーナ様が言うなら本当に危険なんだろうな。それにしても聡明なお方だ。」
「学校を主席で卒業されたとエミリオから聞いた。」
「その話は有名だな。まあそうやってすぐ噂されてしまうのはヨハネ家のご令嬢だからだろうが…。何だかな。というかエレーナ様と文通でもしてるのか?」
「いや、昨日偶然お会いした。」
「それはそれは。はあー、エレーナ様に助けられたな。俺も気になることがあったらすぐに手紙を出すようにする。すまなかったなリュード。」
「いや、ルペルは悪くない。それに今この状態で防衛隊を抜けるわけにもいかないし、伝書鳩で来たから…。」
「は?緊急用の伝書鳩で呼び出されたのか?俺が手紙を出せても間に合わなかったということか。」
ルペルはそこまで言うと少し考える素振りをした。リュードもリュードで何故そこまでジェイドが試作品に執着するのか考えていた。
「どう思う。リュード。」
ルペルが沈黙を破ってリュードに問いかける。
「…今のところはまだ何も。」
「確かに。情報が少なすぎるな。」
リュードの答えにルペルも同調する。
結論を出すには得られている情報が少なすぎる。この状態で結論を急いてもメリットはない。
「リュード、お互い気を付けよう。何かあったらすぐに連絡する。」
「ああ。」
ルペルもここに長居はできないのだろう。そう言って会話を切り上げると、来た方に戻っていった。
リュードもリュードで急いで防衛隊の駐屯所に戻って行った。
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