妙な違和感


 袋いっぱいの芋はこの駐屯所で一食分の作るのに充分な量だ。



「こんなにたくさん。よろしいんですか?」


「ええ!リュードさんは命の恩人ですから!」


「では、ありがたく頂戴いたします。」


「あ、僕がお持ちします!」



 父親から袋を受け取るエミリオ。リュードに重たいものを持たせたくないのだろう。



「じゃあ、あっしはこれで。これからもせがれをよろしくお願いします。」


「はい、もちろんです。」



 芋を渡すと即座に帰ろうとする父親。

 リュードとエミリオが見送ろうと慌てて歩き出すと、父親が急にくるりと振り返った。



「あ。あのリュードさん。」


「はい、何でしょう?」


「最近うちの地域の墓で墓荒らしが出るんでさあ。」


「墓荒らし、ですか?」


「ちょっと父さん、その話はリュード隊長にすることじゃないでしょ?警備隊の騎士に相談しても何もなかったんでしょ?すみません、リュード隊長。」


「だからリュードさんに相談してんじゃねえか!何人も見たって奴がいるんだよ!それにあれはぜってえ掘り返されてる。墓荒らしの奴ら、農家の目を舐めんじゃねえぞ。」


「リュード隊長、エミリオさん本当にすみません!目的は果たしたでしょう?お二人ともお忙しいんだから、ほら帰るよ父さん!」


「おう!」


「あ、お二人ともお見送りは結構です!騒がしくして本当にすみませんでした!」



 父親を抱えながら執務室を出ていく騎士。怪我で心を病んでいるのでは、と思ったがあれなら心配なさそうだ。



「元気そうで何より、ですね。隊長?」


「ん?ああ、そうだな。」



 遠くを見つめて、何かを考えているようなリュード。



「墓荒らしの件気になりますか?」


「ああ、少しな。」


「僕もちょっと気になります。あの子の出身地の村、国境が近いんですよね。あと、僕の気のせいだったら申し訳ないんですけど………。」


「大丈夫だ。言ってみてくれ。」


「あの子を村に送り届けたとき、妙な違和感があったんですよ。」


「妙な違和感?」


「原因はわからないんですけど、何かが不思議だったというか。具体的な話じゃなくてすみません。」


「いや、大丈夫だ。今回のことと関係ないといいが。」


「そうですね。うーーん、考えたくないけど。僕達の警備を掻い潜った山賊とか?」


「墓を荒らしても左程の金品は出ない。折角国の中に入れたのなら、商店を襲った方がよほど金になる。」


「確かに!うーーん、じゃあ分からないなあ。」



 考え込んでしまうエミリオ。



「エミリオ。確かに私も気になるが、今我々がやることは国境の警備だ。アイガスの方にも一応連絡しておくから、我々は為すべきことを為そう。」


「そうですね!よーし、明日からも頑張るぞ!」



 リュードが声を掛けるとエミリオはぶんぶんと腕を回しながら意気込んだ。

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