突然の来客


 一人は1ヶ月前の戦闘で足を捻挫した騎士。もう一人はその父親のようだ。



「私が…」

「リュード・ヴァンホーク防衛隊長に何か御用ですか?」



 目を丸くしながらも応えようとしたリュードよりも先にエミリオが応じた。

 リュードを背中に隠すように父親の前に立ちはだかる。



「あんたは…?」


「僕は防衛隊隊長補佐、エミリオ・ザルクです。リュード隊長にご用事でしたら、僕が承ります。」



 騎士団に隊長補佐なんていう役職はない。リュードと一緒にいるのにそちらの方が都合がいいので、エミリオが勝手に名乗っているだけである。今は本当に補佐のようなこともしているので、あながち間違いではないのだが。



「そうですかい、そうですかい!いやあ、これは失礼しやした!」


「え?」



 エミリオがそう名乗った途端、笑顔になって非礼を詫びる父親。

 想像と違う反応にエミリオは戸惑った。

 エミリオはこの父親がリュードに石でも投げに来たのかと思ったのだ。だから自分がリュードの補佐だと名乗れば自分に矛先が向くとも思っての行動だった。



「あっしはこの子の父親でして。実はリュード隊長って方に会ってお礼がしてぇんです。隊長さんはやっぱりお忙しいんですかね?」


「え?隊長にお礼?」


「へえ。何でもうちのせがれを助けて下さったとか。」


「家で療養させていただいてたときに父に話してしまって!今日から騎士団に復帰するって言ったら、こんな感じで止めても聞かず…。リュード隊長もエミリオさんもお忙しいのに本当にすみません!!」



 追い付いた騎士が申し訳なさそうに補足する。



「なんだ、そういうことか。じゃあ大丈夫ですね、リュード隊長?」



 エミリオが茶目っ気たっぷりにリュードを振り返った。



「ああ、あんたがリュード隊長さんか!いやあ、ほんとにありがとうございました!なんかせがれを助けたせいで怪我までさせてしまったみたいで。昔からすばしこいやつで、人の話も聞かないで…。」


「いえ。防衛隊の騎士を守るのは防衛隊長として当然のことです。それに、戦闘になる前に私が声をかけるべきでした。私にも非があります。大事な息子さんに怪我をさせてしまって申し訳ありませんでした。」



 そう言って深々と頭を下げるリュード。



「いえいえ!滅相もごぜえません!顔を上げてくだせえ!せがれの話じゃ、隊長さんの方がひどい怪我をなされたとか。」


「お恥ずかしい話ですが、軽く斬られただけです。ご心配には及びません。」



 余計なことを言いそうなエミリオを睨んで制しながら、リュードは応えた。



「そうなんですかい!そりゃあ良かったです。あ、これ。お礼になるかどうか分かりませんがうちの芋です。騎士団の皆さんでどうぞ。」



 そうして差し出された大きな袋には、袋いっぱいの芋が入っていた。

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