第2話 最初のモンスターはスライムじゃないの?

 いじめられていた時は常日頃妄想していた異世界転生。

 よくよく考えてみると、知らぬ土地で意味もわからない理由でギルドへと登録し冒険者になるってこのテンプレおかしくね?


 痛くね?怖くね?寂しくね?


 無理じゃん。やる理由皆無すぎない?


『ふむ、この空間で冷静に断ってくるのも珍しいのう』

「いや、だってチートないし。殴り合いの喧嘩すらしたことないんですよ??殴られ続ける経験はありますけど…。」


 うーむと困った顔をして考えるアロハのおっさん。どうにかして説得したいのだろう。


 今回はご縁が無かったということで断らせてもらおう…と口を開きかけた瞬間。


『お主、彼女は欲しくないかね?』


…っ⁉︎このアロハのおっさん今なんと言った⁉︎

彼女だと…。


『お主は童◯だと聞いたが、そのまま死んでもよいのか?』

「……………。」


 アロハのおっさんの野郎、痛い所をついてきやがる。

 確かにこのまま死ぬのは悔しすぎる。


 アロハのおっさん曰く、断った場合は普通に記憶がなくなって生まれ変わるらしい。

 つまり、俺は童◯のまま死ぬということ。


「………嫌です」


 なんとも言えない恥ずかしさもあり、蚊ほどの声でボソッと言ってみる。


『ん?なんじゃて?聞こえんかったわい』


 このアロハめ…仮にも神様なんだ、聞こえないわけが無い。なんなら心の声すら聴こえてると感じる節すらあるのに。


「童◯で死ぬなんて嫌です!」


 腹の底から大声で叫んでやった。


「やります、やりますよ。異世界転移して悪神を倒せばいいんでしょ」


 半ば拗ねるように了承した。


『がっはっはっはっ』

『おぉ、やってくれるか!お主ならそう言ってくれると信じておったぞ』


 このアロハのおっさん、快活な笑い声と共に白々しいこと言いやがって。

 絶対に強くなって英雄としてモテて彼女作ってやる。

 見てろよこのアロハめ。


『よーし、では早速行ってもらおうか』

『お主の未来に幸多からんことを願っておるぞ』


その言葉を最後に視界が真っ白になった。




 足の裏に地面の感覚が伝わってくるのを感じ、ゆっくりと目を開ける。


 眼前には木がある。

 

 どうやら俺は森の中に転移したらしい。

 町は何処だろう。


「やっほーーー」

「どなたかいませんかー」


 一応叫んでみる。

 

 叫んでみて自分の愚かさを痛感した。

 ここは日本ではなく異世界なのだ。

 どんな怪物がいるかわからない森で大声を出すなど、ここに美味しいご飯があるので食べてくださいと言っているようなものだ。


 ガサガサッ


「ひぃっ」


ブゴォォォォ


 そして、フラグを回収するかの如く異世界初の怪物に出会う。


 しかも相手は…まさかのオーク。


 2m50cmを超える体躯に立派な豚鼻を携え、手には棍棒を持っている。


 ハッキリ言って最初に出会う怪物では無い。

 凄まじく気持ち悪いオーラを放ち、熊のような圧迫感を感じる。なお、熊は見たことない。

 勝手な想像だ。 


「最初はスライムかゴブリンだろぉぉ」


 と泣き叫びながら振り向き、走る。

…が直後、石につまずき転ぶ。


 不幸中の幸いとでも言うべきか。

 強運の持ち主とでも言うべきか。

 ほんの数秒前まで頭があった位置に物凄い風切り音と共に棍棒が通過する。

 物凄い速さだった為、理解が一瞬遅れたが、運良く転んだその頭上を棍棒が通り過ぎたらしい。


 さらに幸運なことは続き、振り切った棍棒は岩へと衝突し粉々に砕け散った。

 自分の棍棒が砕け散ったことを理解できず、立ち尽くすオーク。


 その充分すぎる隙を使って、立ち上がり走る。

 いじめで鍛えた逃げ足と異世界転移に伴う肉体の強化により猛ダッシュをする。


 そんな訳で、異世界初の怪物との戦闘は逃げ切り勝ち。


…とはならなかった。


 棍棒が砕け困惑していたオークだが、獲物が逃げれば追いかける。単純な動物の本能である。


 走って、走って逃げる。


 オークは棍棒を無くしたことで、短い腕をどうにかして振り回している。

 しかし、森の木々をちょこまかと動く小さい獲物には届かない。その身長差や体格差が逆に仇となっているのだ。


「ぶぎぃ!」


 うまく獲物を屠れない苛立ちからオークは不細工に泣き叫ぶ。


「はぁ、はぁ、はぁ…。」


 必死に走ること5分。


 いくら異世界にあわせて肉体を作り直したといっても、元帰宅部である。帰宅部の持久力の無さを舐めないでもらいたい。

 もう死にそうである。シャトルランの最後の方になる肺がスースーする感じだ。


 異世界転移して10分。夢の異世界モテ男生活を諦めかけたその瞬間。

 目の前に大きな湖が出現した。



-------筆者からの伝言--------

 初めましてミトコンドリアです。

私からのお願いです。

私は非常に意志が弱いです。


目に見える成果がないとサボったり挫けそうになってしまいます。

なので、少しでも面白いな続きが気になるなって思ったら★とフォローをお願いします。


あと、感想とか誤字脱字の指摘があればドシドシ下さい。

今後ともミトコンドリアと愉快な作品をお楽しみ下さい。


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