異世界行ったら水を自在に操れて、俺カッコいい件について
光合成をするミトコンドリア
第1話 ポセイドンって知ってる?
気がつくと、あたり一面の真っ白な空間にいた。
「ここはどこだ?」
訳も分からず、辺りをキョロキョロとする。…が、ただ白いだけで何も情報を得られない。
そこで、自分の身体へと視線を移す。そこにはスウェット姿の一般的な男子高校生の姿がある。いつも通りだ。
「すみませーん。誰かいませんかー」
と、期待はしていないが一応叫んでみる。もちろん返事はない。
そうやって何も情報は得られなかったが意外にも焦っていない。
理由は単純だ。このシチュエーションは、よくある異世界転生モノのお決まりの流れなのだ。
焦るどころか、むしろこれから始まる異世界チート無双を夢想し、不安よりも興奮しているくらいだ。
「暇だ。」
ここにて数分が経ち、何も起こらないまま数時間が経ったはず。…というのも、たぶんこの白い空間に時間という概念はない。
ボーーっとする時間が増えた。
暇でやることがないので、家族のことなんか思い出してみる。
すると不思議なことに、この空間にくる直前の記憶が曖昧なことに気づく。
「俺は、どうやって死んだんだ?」
名前はハッキリと思い出せる。水神 海斗だ。
年齢は16歳。
部活は帰宅部。
彼女は…まぁ、人には人のペースがあるよね?
それと忌々しくて忘れ去りたい、いじめられていた記憶もハッキリと思い出せる。
いじめの記憶が不鮮明になればよかったのにと不愉快な気持ちになった。
そこからさらに、数時間待つ。
一抹の不安と飽きが芽生え始めた頃。
『すまん、待たせたかのう』
不意に頭上から声が聞こえた。
遂に声がかかった。
そんな興奮を必死に押し殺し、あえて無表情で声の主を見上げる。
『わしがお主を呼んだ神じゃ』
「…変態っ⁉︎」
『いや、それが最初の感想かいっ』
そこに居たのは、アロハなズボンを着て三叉の槍を持った上裸のおっさんだった。
あまりの予想外な出来事に、動揺してしまいつい本音が出てしまった。
気を取り直し、アロハなおっさんに疑問を言ってみる。
「アロハな変態おっさんは神様なんですか?」
『いや、わし神じゃよ。もっとこう…あるじゃろ?言い方が』
「はぁ…じゃあ、アロハなおっさんで」
『変わっとらん⁉︎ほぼ変わっとらん』
…と、こんなやり取りを10分ほど続けた。
単純に飽きたのと神様の威厳もクソもヘッタクレもないし飽きたので、お待ちかねの質問へと移る。
「俺は異世界転生するんですか?異世界転移ですか?」
『むむ、最近の若者は物分かりが良くて助かるのう。厳密には少し違うが異世界転移になるの』
どうやらアロハなおっさんによると、転移先の世界に合わせて身体を造り直すが見た目や年齢などは変わらないらしい。
ふむ、だから異世界転移なのか。
つまり、赤ちゃんの時から魔力トレーニングして無双する選択肢は無くなったわけだな。
となると…残る選択肢は…。
「あ、あの…!なにかギフト的なチート能力は貰えるんでしょうか!」
期待の眼差しで、テンプレの質問を投げかけると…
『はぁ…聞き飽きたぞ、その質問は』
『そもそも、そんなに世界へと介入できるのであれば、わざわざお主たちを送り込んだりせんわい』
途端に、アロハなおっさんから僅かな怒気が発せられる。
僅かな怒気でさえ膝が震え、呼吸が苦しくなり、冷や汗が止まらなくなった。
全身の血管が収縮し、穴という穴から汁が吹き出し、心臓が鼓動を早め、全身が心臓になったと錯覚するかの様に心臓の音が鳴り響く。
やばい、やばい、やばい。
このアロハなおっさんは本当に本物の神様なんだ。
…と、強制的に理解させられた。
『ふぅ・・・』
とアロハなおっさんが息を吐くのと同時に怒気が霧散した。
すると、身体の異変が急速に治まっていくのを感じる。と共に膝から崩れ落ちる。
「はぁ…はぁ…はぁ……。」
崩れ落ち、四つん這いになった瞬間、肺へと大量の酸素が流れ込んでくる。
どうやら俺は呼吸をするのを忘れていたようだ。
この恐怖や絶望感は、昔テレビで観たカ◯ジと利根川とのEカード勝負で流れるざわ、ざわ、の5,000倍だと想像してもらえれば伝わるだろう。
それ程までに、神という者の威圧は凄まじいものであった。
「はぁ…はぁ、なあアロハのおっさん…チート能力も貰えないで…俺にいったい何をやれって言うんだ…?」
『ほう、今の威圧を受けてなおアロハのおっさんときたか。お主なかなか見込みがあるのう』
アロハのおっさんが言うには、今から行く世界では悪神がいて、そいつらが悪さしてるから戦ってくれよって話らしい。
普通に嫌だ。
「あの、嫌です。痛いの嫌いだし。平和ボケした日本人を舐めないでくれませんか?」
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