第五話
「部活後のラーメンって何でこんなに美味いんだろうな」
「僕もラーメンは好きだけどさ。でも」
「ニンニクの効いた濃厚スープが疲れた身体に染み渡って、ほんと福徳円満って感じするよな。味玉も美味いし」
「正吾はこってり派だもんな。でも」
「ラーメンに合う最強のお供ってなんだろ。やっぱ餃子? 幸一は何だと思う?」
「でももう三杯目だよ?」
正吾が自己ベスト更新によって監督を宥めた部活帰り。行きつけのラーメン屋で、さも一口目かのような笑顔で麺を啜る彼に言う。
「いっぱい食べなきゃ速くなれねえぞ。強者の常識だ」
「強者への道、険しすぎるんですけど」
「そりゃ簡単にはなれねえだろ」
彼の呆れたような声を聞いて、ふと僕は気になった。
「正吾はどうやって速くなったんだ?」
僕の質問に彼は箸を止めて、少し考えてから口を開く。
「――走った」
その簡潔な答えに、僕は一瞬言葉を失った。
「いやなにそれ」
「走って、走って、走った」
「参考にならない」
「だろうな」
そう言って正吾はまた箸を動かす。香しい湯気がふわりと漂ってくる。
「じゃあこれは知ってるか?」
三杯目を食べ終えた彼はさすがに満足した様子で僕のほうを向いた。
「足跡ってのはさ、歩くより走るほうが深く残るんだ」
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