口移しでもらう水

恋人ではない人と性交渉を持つことに対して何も思わなくなった頃から同じミスを繰り返している。異性で、会ってすぐ会話のリズムがカチリと嵌り、何時間でも電話できて、どんな話題でも「わかる」「それな」になって、笑い転げられるような人とは寝てはいけない、寝ない方が圧倒的に自分の人生のためになるのに、欲に負けて寝てしまう。性欲ではなくて行き止まりに手をついてみたいとか弱みを握りたいとか、好奇心や探究心に負けて結局土足で上がり込む。

セックスしたい、という感情は、肉体的欲求というよりも、領土を奪って居座りたい、とか、知らしめ合いたいみたいな、暴力に近い。肉体を肯定するふりをした精神的暴力。

だから、「あなたと深い仲になりたい」「あなたのものになって抱かれたい」みたいな湿っぽい感情とは程遠く、むりやり身体を使って相手の陣地に割り込む感覚に近いのかもしれない。自分が横柄に寝そべるだけの場所を押し広げて強引に得るがために。

君とするのめちゃくちゃ楽しいけどどんな相手でも結局ここが行き止まりなんだね、と腑に落ちてしまう寒々しさ。好きな人とつながる方法ってセックスと結婚以外にないんですか。

余白が欲しい。想像力を使うだけの。

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