#08 陰謀の匂い

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アマスーメはなんとしてもキファーフと結婚したいと思い、隣国の王の甥は、政治的な理由でダナを狙っていた。キファーフとダナの結婚の行方は……。


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 王宮の離れで長老会議がおこなわれているころ、ラフィーブ内務省官僚ターヒル・アブドゥーンの邸宅――。

「アマスーメはきょう病院に行って、そのアメリカから来た娘というのを見てきたんだろう?」

ターヒルが自分の一人娘に尋ねる。

「ええ。キファーフがパリーサのところに連れてきていたわ。キファーフにエスコートさせたのは、シャーキルでしょうけど」

「あのリリアナとかいう娘をキファーフの花嫁候補として、シャーキルが呼んだというもっぱらの噂だからな」

「彼女自身は何も知らされていないようよ」

「そうか。まだ具体的な話は出ていないわけだ。だが早いうちに芽は摘んでおいたほうがいい。もしキファーフがアメリカ人などと結婚したら、もう後戻りができなくなる」

「ああ、さらに近代化、資本主義化が進み、観光客が一気に増加する。伝統文化や信仰心などが危機にさらされる」

 同席していた若い男が同調した。

「ハルーシュにとっても厄介なことになるわね。言ってみればアメリカが後ろ盾になるようなものですもの。そうなったらダナと結婚してラフィーブの援助を得るという、あなたの計画も水の泡よ、アムル。さっさとダナをハルーシュに連れて行って、王宮にでも閉じ込めておいたらどう?」

 アマスーメはテーブルをはさんで向かいに座っている若い男をけしかけるように言う。

「私だってそうしたいさ。ラフィーブの王女でまだ結婚していないのはダナだけだ。なんとしても手に入れたい。私もハルーシュ国王もそう思っている」

アムルと呼ばれた男が言う。

「ラフィーブの経済力は、ハルーシュ国にとっても魅力ですものね」

「それは否定しない。私がダナと結婚したら、わが国に援助しないわけにはいかないだろう。たとえ政策が正反対だとしても」

「ラフィーブは近代化をもう少し抑えるべきだ。そう考えている役人は少なくない。経済力をつけるのはけっこうだが、最近はあまりにも自由になりすぎている。今回のアメリカのTV局の取材もそうだ。シャーキル殿下の学友か知らんが優遇しすぎている」

「ああ、だから何としてもキファーフにはアマスーメと結婚してもらいたい。われわれの利害は一致している。だからこそこうして手を組もうとしているんだ」

「アムル、私たちもそれはよくわかっている。ラフィーブ王室とアメリカとのつながりをつくらせてはならない。多少、強引なことをしてもだ」

 男たちが話すのを聞きながら、アマスーメはほくそえんだ。そう、多少、強引なことをしても……。私はキファーフを子供のころからずっと見てきたのよ。どこの馬の骨ともわからないアメリカ女なんかに渡すものですか。

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