切り裂かれたスカート
『もう一つの兆候が、災いの時を予見する』
金髪の天使の呟きが、マリアを探して藤が丘の通りを彷徨う夏子の後ろ姿に投げかけられ、教会付近の街並みを撮影する藤倉秀太が夏子へカメラを向ける。
ファインダーに揺れる動くブルーのロング・スカートが映し出され、藤倉がセクシーなヒップラインを覗き込み、クスッと笑みを噛み殺してカメラを下げ、歩み寄りながら声をかけた。
「ちょっとすみません。教会をバックに写真を撮らせていただけませんか?」
夏子はチラッと振り返り、無言でカメラを持つ男から早足に離れて行く。しかしその時、教会の鐘が鳴り響き、立ち止まって見上げた瞬間にシャッターを切られ、再度振り返って男に近寄る。
「失礼ね。勝手に写真を撮って、許されると思ってるの?すぐにデータを消去しなさい」
夏子が睨み付けて抗議するが、藤倉はヤンキースのキャップを目深に被り、「無視の方が失礼だ」と微笑み、カメラを構えて正面のショットも撮影した。
「怒った表情もいいけど、笑顔もくれる?ハイ、ピース」
「な、何よ。やめなさい」
夏子は両足を広げてブルーのロングスカートを突っ張らせ、声を荒げてカメラを向ける男を静止したが、グレーのパーカーにリュックを背負った男は連写して迫り、恐怖を感じた夏子は後退りして、くるっと踵を返して教会の方へ逃げ出す。
藤倉は門の前でカメラを下げて見送り、隠し持ったナイフをポケットに仕舞って、何事もなかったように歩き去る。
「気付いてねーのかよ」
夏子が背を向けた瞬間、神技的なスピードでナイフを振り、ブルーのロングスカートに切れ目を入れ、足を踏み出す事にお尻に沿って裂け目が広がり、教会の扉を開けて中に入った時には、完全に裾まで切れてブルーの波間に白いパンツが露わになった。
「酷い。最悪だわ。こんな惨めな思いをするなんて……」
夏子はスカートを両手で押さえて聖堂の後部席に座り込んで嘆き、近くにいた神父が心配して歩み寄って話しかけた。
「どうしたのです?」
「スカートが切れて、外へ出れません。少し休ませてください」
「それは困りましたね。娘ので良ければ、お貸ししましょうか?」
「神父さま。お嬢さまがいらっしゃるのですね?」
「ええ、家はすぐ近くにあります」
この瞬間、夏子はマリアが十字架のペンダントをしていたのを思い出し、神父の顔を観察して微笑み、少し気分が高揚したのである。
3-days love story. 『天使に与えられた三日間限定の復活』 田丸哲二 @tama-ru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。3-days love story. 『天使に与えられた三日間限定の復活』の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます