曖昧なるドキドキ感
賢士は表情を変えずに怜奈に質問し、天使が出現した意味合いを探る。朝起きて日付を見た時の違和感と、新しいページを捲る高揚感に何か意味合いがある気がした。
「レイナ、僕を見て気が変わった?」
「うん。声をかけずに、ジョギングしている姿を見て帰るつもりだった。後で嫌味のメールをして、復活祭に茨の冠を贈ったら面白いかなって思った。やだケンジ、ネタバレさせないでよね」
賢士は早口で喋る怜奈に接近して顔を覗き込み、心を読み取るような眼差しを向け、怜奈はその距離の近さにキスをされるのかと目を閉じたが、ぎりぎりの位置で止まった唇は核心を突く。
「それと春だから、好きな人ができたか聞きに来た?帰ろうと踵を返したが、その興味が一瞬過り、つい声をかけてしまった」
「うわっ、ジーケンの予言かよ〜」
怜奈の呆れたような嘆きに、キスを期待した乙女心を踏みにじられた痛みと恥ずかしさが込められ、駅へ向かう通行人が頬を赤くして頭を抱えた怜奈を振り返って行く。
「それって、当たってるけど。こんな時にそんな神的発言する?」
「ごめん。突然思い浮かんだ。曖昧なるドキドキ感のせいかもしれない」
「いや、こっちの方がドキドキしたよ」
怜奈はキスを諦めずにジリジリと迫り、賢士は一定の距離を保ちながら後退し、天使は『何やってんだ?』と呆れて見下ろしているが、このシーンで怜奈が重要な役割をする事を知っていた。
『早坂怜奈はマリアと賢士を結びつける』
「それでどうなの?もう素敵な恋人、手に入れたのかな〜?最近、『恋のリベンジ』サイトでケンジの理想の恋人について話題になって、ずっとレイナが気になっている人を……思い出したんだよ」
賢士は首を振って「いない」と答え、犬がご褒美を待つ愛くるしい表情で怜奈の話の続きを待った。
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